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CAT'S FOREHEADアートワークストアがオープンしました!

皆さん、はじめまして!
グラフィックアーティストのコーディネートエージェンシー『BUILDING』代表の森と申します。

この度、私達が運営する『CAT'S FOREHEAD』がアートワークをオンラインで販売するストアがオープンしました。
(ちょっと見慣れないスペルですが「キャッツフォーヘッド」と読みます)

https://cf-media.com/

販売しているのは主に作家の手作りによるアートワークです

猪瀬市子さんの作品(筆者私物)

このストアは

作家の手からうまれたアートワークをギャラリーでじっくり眺める。
時にはそこで作家と話をする。
やがて作家や作品が好きになる。
そんな体験がオンラインでもできないか?

と考えたことで始めたストアです。

冒頭で「オープンしました!」と朗らかに宣言しているのですが、実は昨年の10月には、(当ストアで作品を販売している)陶芸家の田中礼さんの個展に合わせて、色んな仕組みを試行錯誤する状態でβ公開していました。

我々も過去にはオンラインストアを運営したことがあったのですが

  • 1点モノの

  • アートワークを

  • 映像コンテンツを駆使して

  • 海外のECプラットフォームを利用して

販売する経験などなかったものですから。

その後、作家と作品を少しずつ増やしながら作品の撮影方法や配送のシステムを考え、販売を経験しながら送料の検討と見直しを行いまして、「そろそろ本格オープンと言っても良いんじゃない?」と思えるところまでようやく来たので・・・noteのアカウントを新たにつくりまして・・・自己紹介を兼ねて開店のご挨拶でございます。

これからこのアカウントで投稿する記事は主に森が書いて参ります。

CAT'S FOREHEADって?

『CAT'S FOREHEAD(キャッツ フォーヘッド)』は直訳すると『猫の額(ひたい)』。同じ意味を英語では『There is not enough room to swing a cat in here』というそうです。

CAT'S FOREHEADを通じて世界中のユーザーが、日本のグラフィックカルチャーの存在をまるでみんなが猫の額ぐらいの小さな世界にいるかのように、身近に感じられるようにしたい。できれば『猫の額』を英語に直訳した時に感じる、ちょっとした違和感のようなものを楽しみながら。

CAT'S FOREHEADは2010年に、グラフィックアーティストのコーディネートエージェンシー『BUILDING』が上記のスローガンを掲げて、日本のグラフィックカルチャーを日英のバイリンガルの記事で紹介するWEBメディアとしてスタートしました。

こんなWEBサイトでした

まだオウンドメディアも珍しかった時代に、他では取り上げることの少ないグラフィックアーティストのインタビューやカルチャーの動向を日英バイリンガルで配信していたことから、WEBサイトの画像がApple社のiPad miniが新登場する際の広告に採用されるなど、特定の界隈にちょっとだけ注目されていました。
ビジネス的には全く収益を上げられませんでしたが、クパチーノの社内弁護士からメールが届いた時に、文字通り飛び上がって喜んだのが良い思い出です。それからモバイルデバイスは全てApple製品を使っていますよ。

2015年からは、クリエイターのキャリアにフォーカスした動画コンテンツの配信、電子書籍レーベルなど、形態を変えながら運営を続けています。

オンラインでアートワークストアを始めた理由

個展に行きたくても行けない

理由はいろいろとありますが、一番大きな理由はこれです。
私は日常的に個展に行きますし、作品を画面越しではなく実物を見ること、そして個展会場で作家さんにお話を聞くことが大好きです。
作品だけを観て自分なりの解釈を積み上げていくことも作品鑑賞の大きな楽しみだとは思いますが、作家から展示のテーマや制作手法のほか、「なぜ作品を創るのか」「何を目指しているのか」といった話を聞くうちに、作品がより魅力的に見えてきたり、作家のファンになることが多いのです。

でも、場所(会場)と時間(会期)とその他モロモロ(天気や体調など)の要因が全てうまく合わないと、個展に足を運ぶことができません
だからたとえ知人の個展でも、全てを見て回ることができないのです。

現実的には「ギャラリーの集客力」というファクターもあるでしょう。魅了ある作品が並んでいても、人に知られないまま終了する個展がかなり多いと思います。

鎌倉の大仏やエッフェル塔はいつもそこで待ってくれていますが、一週間しか会期のない個展だと行けないことの方が多いんですよね。

だから「個展が終了した後でも作品をじっくり観たり、作家さんの話を聞いたり、作品を購入することができないものだろうか」と考えておりました。
実際に個展へ足を運んだ後に、じわじわと作品が気になって買いたくなることもありますしね。

そこで「オンラインストアで長期間販売していればこの問題を解決できるのではないか?」と考えました。

多田玲子さんの作品(筆者私物)

1点モノのオンライン販売が超大変

個展で販売をした本やグッズはオンラインで買えることが多いのですが、展示した作品となるとオンラインでは観ることも買うこともほとんどできないんですよね。

その理由は、「1点モノの作品を売るのがとても面倒くさい」からだと思います。極端な話、個展会場では作品を壁やテーブルにポンと展示するだけで売る準備はできます。作品タイトルと価格は別紙のプライスリストにまとめておけば良いですから。

しかし通販をするとなると、まず撮影をしなければなりません。
作家ですから作品の画像のクオリティがすごく気になるでしょう。
絵画などの平面作品では、そもそも色と光量を均等に当てるライティングが難しいし、少し影を出したい場合はそうしたライティングを組まなくてはなりません。額にアクリル板がはまっていれば、カメラが写り込まないようにする工夫も必要です。
立体作品だと陰の作り方で印象もがらりと変わります。

静止画像はこんな風に撮っています

作業場が狭くてカメラや照明を用意できない作家には負担が大きすぎるんですよね。そりゃそうです。作品撮影というカテゴリのプロが存在するくらいですから。

きれいに撮影ができたとしても、オンラインストアで販売するためにはサイズや重量を計り、PRのためのテキストを練り、ようやく公開して売れたとしても、その努力は作品1点限りで終了です。

そうした理由から作品を個人で販売することができず、個展をするたびに売れ残った作品が手元に増えていく作家が多かったのではないでしょうか

でも弊社は撮影から編集まで一人で行うスタイルで映像制作をしているため、8Kまで撮影できる業務用のカメラと相応のレンズ、超重い動画データをサクサク編集できるスペックのPCとカラーマネジメントされたモニター、そして色と明るさを数値でコントロールできる照明が手元にありました。

撮影だけではなく、原稿を書いてWEBサイトをゼロイチでつくることが私の本業だったりします。

「1点モノのアートワークを販売するオンラインストア、スキル的には社内でできるんとちゃう?
ということで、アートワークをオンラインで販売するプロジェクトをスタートさせたのです。

ロケ直前で渋滞する機材

住所バレ問題

オンラインストアの仕組みを検討するために、様々なジャンルの作家にヒアリングを行いました。

やはり

  • 個展のために制作した作品のストックを抱えている

  • 販売するために撮影をするのもECプラットフォームの構築をするのも面倒(できない)

と考えている作家が多かったのは予想通りでした。

その一方で「なるほど」と思わされたのが
「個人で通販をする際に自宅の住所を公開したくない」
という悩みでした。

この声は特に女性作家から多く寄せられたのですが、昨今話題の「ギャラリーストーカー」問題とまではいかなくとも、一定のファンがいる作家が自宅住所を公開するのはリスクがあります。

かつては個人事業主でも特定商取引法の定めで住所を公開する必要がありましたが、プライバシー問題を踏まえて一部のECプラットフォームでは個人事業主が自宅住所を公開する必要はなくなりました。
でも作品が売れて発送をする際には、配送伝票に自宅住所を記入する必要があるんですよね。
メルカリの匿名配送のような仕組みもありますが、返品が発生したら結局は住所を伝えることになりますから。

他に「作品は販売したいが個展をするほどではない」という声もありました。

  • 作品が仕上がったら少しずつ売りたい

  • 個展をしたいギャラリーの空き枠が1年以上先まで埋まっている

  • 遠方に住んでいるので個展の設営と撤去の負担が大きい

などなど。

もちろんその逆の「個展をしないと作品制作の意欲が湧かない」という作家もいますが、個展に向けて制作をしても「個展終了後に販売機会がない」問題が発生します。

この辺りから、自分たちでアートワークのオンラインストアを「やれるかも」から「やるべきだな」という気持ちになっていました

そうした意見を聞いて、ストアだけど各作家のオフィシャルページとして機能しつつ、各個展でもカテゴリ分けできるサイト構成にすることを決めたところで、だんだんとストアの全体像が私達にも見えてきました。

ICHASUさんの作品(筆者私物)

ストアだけど映像を充実させたい

「ギャラリーでの体験をオンラインでも」というテーマでストアを設計するにあたり、当初から動画コンテンツが重要だと考えていました

もちろん立体作品は観る角度で印象ががらりと変わりますし、平面作品でも(印刷ではなく)原画では画材の種類や凹凸が「表情」となり、それが作品の味わいをリッチにするものなので。

一般的なオンラインストアでは角度違いで写真を複数枚撮影するのが常套手段ですが、角度を変えながら「無段階で」表情が移り変わる様子を伝えるには動画しかありません。(現実的にはYoutubeの制限で秒間60コマの「段階」がありますが)
作品を制作する作家もギャラリーの来場者も、「無段階」で移ろう情報を頼りに作品を判断/鑑賞をしているので、オンラインでも「ギャラリーで鑑賞するような体験を目指す」のであれば動画撮影は譲れないポイントでした

そのために、室内に簡易的なスタジオを作り、電動のジブとパンヘッドを購入しました。

秘密兵器です

撮影や機材の詳細は別の記事で投稿するかもしれません。

ポートレートムービーもつくりたい

作家のクリエイティブに対する思い入れを聞くのが好きな私は、YouTubeチャンネルで「ポートレートムービー」「CF Gallery Tour」という動画シリーズをライフワーク的に制作してきました。

特にポートレートムービーシリーズは、制作した作家の仕事が増えたり、海外のコンペのプレゼン素材として使用してコンペに通過するなどの結果が出ていたので、作家の想いを表明する動画を制作する効果については自信がありました。

オンラインストアでもこうした動画コンテンツも各作家や個展ごとにトークを収録して掲載することで、「作家とのコミュニケーション」という意味ではギャラリーに訪問する以上の体験を得られるのではないかと思います。

もちろん情報量としては直接話す方が断然多いのですが、個展に必ず作家が在廊してじっくり話ができるわけではないですし、作家に話しかける勇気がない人も多いですから。

作品を1点ずつ動画で撮影をするのはもの凄く大変なのですが・・・
このストアは作家のオフィシャルオンラインストアです
となると掲載する作品群がポートフォリオ的な役割も果たすことになるので、しっかりと撮影をして続けていきたいと考えています。

アートワークって?

冒頭から「アートワーク」と連呼しておりますが・・・「私達が取り扱おうとしている1点モノの作品をどう呼ぶか?」についてはかなり悩みました。
作品をどう表現するかによっては「ここでは販売したくない」と感じる作家もいますから。

世間的には「アート」と呼ぶのがわかりやすいのだと思いますが、個人的には少なからず抵抗がありました。

歌を歌えば「アーティスト」なのでそこまで気を使う必要がないのかもしれませんが、やはり現在「アート」という言葉は、流通形態と作品の制作意図がコンテンポラリーアートの要件を満たしている場合に使用されるのではないか、と感じておりましたので。
もしかしたら普段からイラストレーションを中心とした商業グラフィックアートを取り扱う傍ら、スポットの企画ではコンテンポラリーアート界隈の方々とご一緒することもあるので、「アート」という用語の使い方について職業病的に敏感になっているせいかもしれません。

作家や作品が「アートの歴史(系譜)のどの位置からどのように境界を広げようとしているのか」というコンテクスト(文脈)の表明とその解釈が、知的好奇心をかき立てられるエキサイティングな世界であることは承知しつつも、CAT'S FOREHEADではもっと自由に「作家が作りたい作品」「私達が観て触れて単純に『いいな』と感じる作品」を扱いたかったのです。

さらに作品の制作プロセスにおいても、デジタルデータや機械で生産されたものではなく、「手からうまれた作品」を中心に扱うことにしました

「今ここにしかない1点モノ」という存在に対する愛おしさもありますし、何より「作家が人生を掛けて技術を高めてきたプロセス」に対してリスペクトしたいという気持ちがあったからです。

そこでCAT'S FOREHEADで取り扱う作品を「アートワーク」と呼ぶことにしました。(この投稿ではファインアートまで含めた創作物全体を「作品」と記述しています)

とはいえまだ作家が5名しかいないのに、コンテンポラリーギャラリーで作品を販売している作家もいますし、陶芸も最終工程では窯という装置に委ねられているので、すでに色んな前提条件にゆるやかなグラデーションが生じているんですけどね。。

そこはあまり難しく考えずに(今まで長々と宣言してきたのに!)、これからも絵画のみならず、木工やアクセサリーなど様々な作家の作品を取り扱っていこうと思います。

最後に

これまで「ギャラリーでの体験をオンラインで」と長々と書いてきましたが、決して「もうギャラリーで個展をする必要なんてなくなった」と言いたいわけではありません
作品の実物を観る意味の大きさは今までもこれからも普遍でしょう。
わざわざ海外の美術館まで足を運ぶ価値のあるほどの体験なのです。
実際に私が作品を購入したのは全て実物を観て、手に取ったことがあるモノばかりです。
でもこの体験がオンラインでもできたら、もっと良いよね

ということで、これから腰を据えて作家やアートワークの魅力を伝えて行きたいと思いますが、まずは自己紹介まで。(なのに長っっ!)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします!!

ストアに掲載している画像と映像は全て太陽光の自家発電によって制作しています

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