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映画鑑賞 タルコフスキー〈ストーカー〉

今のところ、ただ、素人が見たよ、というだけなんですけどね
没後35周年で無料配信、と情報が来たので初めて見ました
名高い難解作品だけに、謎解きや見たタイミングで変わるだろう印象を書いておこうかなと

※普通にネタバレしますので、知りたくない方はご遠慮ください


まあとにかく映像が美しい


おっさん3人が雨と泥にまみれながら、歩くか座ってるか喋ってるかだけなのに美しい映像
異世界の様な浮遊感、なのに鬱々と淡々と、なのに願い事の叶う場所に近付いて行く高揚感

なんの仕掛けもCGもなくても、SFは撮れる、しかもないからこそ怖い、なのに最後にさらっとやっちゃう、いややらないのか?


見終わってぐぬぬと考えて、また見なくては…と謎の敗北感を味わうタイプの典型だった



一回目の謎解き

まずはゾーンと部屋が本物かどうか

各シーンを仕分けると、

〈1〉本物とするシーン

〈2〉フェイクとするシーン

〈3〉どちらにも取れるシーン

この3つに分けられる

そして、これがほとんど〈2〉か〈3〉に出来てしまうところが上手いところ…



原作も読まなくては、他の作品も見なくては、と思いつつ、今は原作と映画は別物、この作品だけを初見で受け止めるとすると

部屋は実は本物で、3人とも願いが叶ったのかな、と言う気もしている

3人とも願いを叶えるために来たのではなかった
願いはあったが、他人の幸せを願うものだったから、辿り着けて叶って、そのまま帰れたのかもしれないなぁと


作家は自分勝手に見えてズルい事はしないし、許さないと言いながら茨の冠をかぶる、それはめちゃくちゃ赦しちゃう人の象徴じゃないかとか
部屋を目の前にストーカーの妄想と断じ、願いに押されて諦めきれずに入ってみたりしない
教授とストーカーの間に入り、きちんと話を聞いたりもする

教授は部屋の悪用を恐れて、命を懸けて壊そうと覚悟を決めて来た割に、ストーカーの妄想と言う話をすんなり受け入れ、念のため壊そうとかしない
ストーカーの言葉を聞いても、騙されたとなじったりしない
電話の内容から言うとかなりヤバい立場になるにも関わらず

ストーカーは、ゾーンの外ではモノクロの世界を生きていて、家族や町から離れて初めて生き生きしたように見えたけど、落ち込んで疲れ果て、ゾーンに引っ越そうかなと言った時、一人ではなく妻と娘とと言った

最終的に、なんか全員本質的に良い人なんですけど?と思うと、本物説もあるのかもと思ったり

宇宙人の無機質な仕掛けではなく、精霊の気紛れや神の救いのようでもある



そうすると見直して、〈1〉~〈3〉の視点で見直さないといけない訳で

そして誰の願いがなんだったのかも、考えなきゃいけない訳で

途中の不思議現象やら伏線やらも考察しなくてはいけない訳で


そもそもなんの意味もない説もある訳で

久々にめんどくさいのに絡んじゃったな、と言う気持ちである(笑)

さすが難解難解言われるだけあるけれど、映像が美しいからそれだけでも見る気になれる


最初の車で移動するシーン、どう考えてもあんな煩かったら目視以前にバレるはずだからおかしいとか

あの線路歩いて帰ったのかとか

わんこはブラックドッグ、ヘカテの使いか悪魔の化身かグリムか、誰かの化身か、兄か弟かとか

鳥も象徴的、鳩かな、猛禽だったかな、何羽だったかなとか

眠るシーンはうつ伏せなのか、仰向けなのかとか

もしかして二周してるのか、視点が違うのかとか

当然、ラストはなんなんだとか

それはそれは確認点がてんこ盛り、ストーカーよりこちらの妄想が爆発する



原作も読むよ、ソラリスも見ますよ、でも分かんないんだろうなぁ…



最初にちょっとお金のかかる大がかりなシーンで、国や組織的な関与を見せつつ、あとは3人の語りだけでスケール感を見せつつ、逆にストーカーの妄想説にも信憑性を出す
省略した余白には何でも描ける仕掛け

不思議な音や音楽で現実味を消し、SF感を出すと同時に、疲れたおっさんに重ねる事で何の意味も無いかもしれないと最初から疑わせる仕掛け

スチールや一枚物の風景写真の様な美しい静止画(の様な動画)を多用することで、いつ急に襲いかかられるかという不安を誘いつつ、美術館に居るような静謐な穏やかさも感じ、そのまま3人の、特にストーカーの心に重ねて行くような仕掛けも

他にもたくさんの仕掛けが多発的に重なる


総括して、見て良かった作品だった
さすがのさすが

訳が分からないのに満足感があり敗北感があり、そこにまた満足感がある

分からないままに名作だ

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