オールドイズニュー
仕事の昼休憩。アラフィフはたんぱく質が足りなくて疲れやすいとか。張り切って中華屋さんの油淋鶏定食を頼む。唐揚げが美味しい。だがその後胃もたれした。お昼は油っこいのはやっぱりダメだな。
その中華屋さんで、4人組の全員パンツ姿の制服っぽいおばさま達が居た。私から見て背中しか見えない2人と、こちらを向いて座ってる顔が見える2人。顔が見える2人の片方のおばさま、きつめのパンチパーマ的なショートカットに真っ黒の髪。何よりメイクが80年代のような、目の隈取りもアイシャドウも濃くて、眉毛の描き方も古い。当時の新しさ、最先端のメイクをそのまま維持し続けて今、という感じなので、下手くそではないがオールド感が漂いすぎて、そこだけタイムスリップしてるよう。
あまりにもキマッているので、思わず何度もチラ見してしまう。おい、本気か?そのメイク。本当にそれでオッケイと思ってますか?舞台メイクか何か理由があってですか?と胸の内で語りかける。
4人とも同じような白シャツ、黒っぽいカーディガンかベスト、同じく黒っぽいパンツ姿なので、おそらくどこかで仕事をしていて、舞台俳優が途中抜け出して、というのでも無さそう。私から見える側のもう一人は普通ににこやかな、同じくショートカットのメイクもあまりしてない感じのおばさま。
ここ最近ずっと、YouTubeでアラフィフのメイクアップの仕事をされている方が、ノーメイクのご自身の顔から色んな大人女子(笑)向けのメイクをしてみせるの見ている。ネットって賢いんだか恐ろしいんだか、同じくアラフィフらしきメイクのプロの方達の動画が関連して上がってくる。
ついつい見ていて、ある時ふと気づいた。あ、自分のメイクも相当古い。アップデートしてないとは、まさ今の私の顔じゃん!と。これがベスト、だって長年してきたんだもの、と思い込んでたけど、細かな調整をしてないから、アイメイクなんか実は痛々しかったりしてるのよね。
より客観的に自覚したのは、通勤電車で間近に観察した同世代か少し上のおばさま達のメイク。YouTubeで紹介されていた、余計におばさんに見える、ダメなメイクの事例そのものが、リアルに目の前にある。いや、ほんとだ。私も少し前までそうしてた。動画の指摘通りの痛々しいメイクだわ…。
でもYouTubeの情報のおかげで、メイクは楽しくなったかも。漫然とするんじゃなくて、ここは角度を変えようとか、位置を変えようとか、ちゃんと弛みやシワを分かって工夫するのは、自分にポジティブな向き合い方な気がして。
中華屋さんのキマッてる80年代風メイクのおばさま。シュッとしてて、それはそれでハマってるかも知れない。ちょっとギョッとしたけど、本人がそのメイクが大好きなら、いいか。
勝手に自分の中で納得しかけたとき、背中を向いてるおばさま一人の髪型が気になった。長い髪をきっちり撫で上げ、ポニーテールにしている。前髪もオールバックで、おい、ちょっと待て。もしかしてそれは、懐かしのポンパドールではないか。
時代劇の町娘の前髪ですかというくらい、一糸乱れぬ前髪の小さな丘、盛り上がり。わぁぁぁ~今時、今時、そんな前髪の上げ方する人いないって!
会計をしようと4人組がそぞろ立ち上がる。きっちりポンパドールおばさまの横顔が見える。な、なんと!ヘアスタイルに違わぬ、細い眉にグラデーションのこれまた80年代?、当時のスーパーモデル山口小夜子のような、気だるいアイシャドウ!般若のようで怖いぞ!
やはりただ者ではなかった、このおばさま達。特にお二人。もうお二人は普通のおばさまだのに。やはり、何かの劇団員??
たまたま入った中華屋さんで、思わぬ珍しいものを興奮でちょっと面白かった。でもこれが彼女達のスタンダードのメイクやヘアスタイルなのであれば、とても個性的で素敵かも知れない。ただ、見る人を驚かせてしまうかも知れないけどさ。