『授業で使える!論理的思考力・表現力を育てる三角ロジック 根拠・理由・主張の3点セット』鶴田清司(2017)図書文化社
トゥルミンの論証モデル(p14)
・主張(Claim)…結論
・事実(Data)…ある主張の根拠となる事実・データ
・理由づけ(Warrant)…なぜその理由によって,ある主張ができるかという説明
・裏づけ(Backing)…理由づけが正当であることの証明
・限定(Qualifiers)…理由づけの確かさの程度
・反証(Rebuttal)…「〜でない限りは」という条件
上記を単純化したもの=三角ロジックと定義し,
三角ロジック(根拠・理由・主張の3点セット)(p16)
・根拠…客観的な事実・データ
・理由…事実・データに基づく推論・解釈
・主張…結論
とまとめています。
筆者はその理由を,
英語と違って,日本語では同義的に使われている「根拠(evidence)」と理由づけ(reasoning)」,トゥルミン・モデルの「事実(data)」と「理由づけ(warrant)」を区別することが重要だと考えるからである。(p17)
また,根拠のことを「誰が見ても明らかな証拠資料」,理由を「その根拠がなぜ主張を支えることになるのか,どうしてその証拠資料からその主張ができるのかを説明する」と述べ,主張と根拠をリンクさせるのが「理由」とまとめています。(p17)
この三角ロジックの重要性は理解できますし,有効性についても異論はありません。がしかし,なぜか釈然としないのは,この本自体が,三角ロジックによって納得のいく理由づけがなされていないからではないでしょうか。
以下,私なりの三角ロジックを用いて述べると,
まず,102ページしかないのに1800円という値段(根拠)は,高過ぎるためそれ相応の情報の質の高さが求められるにもかかわらず,理論編が薄く事例も説得力に欠けている(理由)こと。
次に,トゥルミンモデルを理論の仮説として説明しているが(根拠),なぜ単純化しているのか,なぜ小中学校段階では三角ロジックで十分という論理になるか(理由),明確に示していないこと。
さらに,国語科として事例で取り上げた「大造じいさんとガン」「お手紙」の学習課題に対する子どもの意見が(根拠),三角ロジック以前に教師の教材研究不足である(大造じいさんの捉えについて・主人公という学習用語について)こと(理由)から,説得力に欠けること。
さらにさらに,とまだまだ列挙したい項目がありますが,この批判的な理由を書き連ねる中で,三角ロジックを使わせることを筆者がねらっていたのだとしたら…と類推することで筆を置きたいと思います。