【今日の一枚】Novi Fosili - Dijete Sreće
今日見つけて買ってきたユーゴスラヴィアのレコードを早速紹介。
とあるゲームのせいで地理の知見があるので、ćを見た瞬間これはポーランド語かセルビア・クロアチア語だと察し、即購入。綴りからして題名の時点で後者なのですが、私はポーランドのものだと思いつつ、裏面の歌詞を読んでやっとユーゴスラヴィアの作品だと気づいたものです。
Focusに混じって「ヨーロッパ・プログレ」のコーナーに置いてあったからてっきりプログレッシヴなのかと思っていたら全くそんなことはなく、日本でも大衆ウケしそうなポップロックだったので紹介してあげることに。
ちなみにNovi Fosiliはクロアチアの出身で、歌詞はクロアチア語(セルビア語とあまり変わらないけど)で書かれているようです。
ポーランドのNovi Singersとは関係ないみたいです、たぶん。
で、このグループ、どうやら旧ユーゴでは最も人気のあるグループのひとつらしく、60年代末から70~80年代を通して活躍したまさにクロアチアを代表するバンドということで、有名どころではABBAに近いような立ち位置のグループですが、このアルバムはまさに東欧版ABBAとでもいうような感じ。
どの曲も驚くほどポップで、メロディーも分かりやすくてクロアチア語の読み方さえなんとなく分かっていれば口ずさめるくらいです。
クロアチア語はjはイェー、変なcはチェー、普通のcはツェー、変なdはジェーくらいまで覚えておけばそれっぽく聞こえるので、案外歌いやすい。
個人的なおすすめはB-5、Dobre Djevojkeという曲で、東欧っぽいグルーヴ感のある良曲です。他の曲もABBA好きな人には騙されたと思って聴いてほしいくらいいい曲ばかりだし、サブスクで手軽に聴けるのも嬉しい。
ここからはちょっとした解説です。
冷戦時代の東欧ロックというと身構えそうになりますが、少なくともこのアルバムに関しては使われている言語がクロアチア語なだけで、特段の素養がなくてもじゅうぶん楽しめるポップな作品です。
ユーゴスラヴィアは民族対立や内戦のイメージで東側諸国の中でもとっつきにくいと思われがちですが、ソ連との緊密な関係を断ち、ティトーのもとで独自路線を歩んだこの国では実は西欧的なポピュラー音楽がとても発展していたのだそうです。
ポーランドが冷戦下でもヨーロッパ屈指のジャズ大国であったように、ユーゴスラヴィアは東欧随一のロック大国だったのかもしれません。
共産圏だからといってポピュラー文化が育たなかったということはまったくないのです。この辺りの文化史的な部分はこれからさらに研究され知られていくのでしょうが、アメリカやイギリスといった「本場」から外れた国々の音楽を知る機会が少ないというのは残念なことです。
ポーリッシュ・ジャズ、ユーゴスラヴィアン・ポップを始めとして、ビロード革命の原動力になったチェコスロヴァキアのロックなど、いろいろなまだ見ぬジャンルがあると知ると、中古レコードやCDを漁るときの目線がちょっとだけ変わるかもしれませんね。
わたし自身も継続的に見かけたら集めてみようかと思った次第です。