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三方向のふへん


 普遍って無いものだと思う 唯一通時的に無いものだと思う 死も全然普遍じゃないし、生も全然普遍じゃない 物理法則だけは普遍じゃないの?って思ってた時もあったけど、法則は普遍であって、法則は時間と観測者に左右されないって前提に始まってて、狭い話でおわった n=1の話を全体に敷衍するのは絶対しない だから普遍は無いものだけど、無いって話し始めたらここで終わりだから、やっぱあるって言っとく
 各宇宙によるけど、普遍はあってもおかしくないと思う 格率なら普遍でいい その宇宙に連なる格率は連なるどころか宇宙を貫いているので普遍と呼べる みんなもっと格率を自由に使えばいいのにと思うよ 感情と意思の下に格率が存する構図になってるから、私の体は私が全て自由だ 全て統治してる

 非不変であることが不変だ 私の宇宙は絶対に変わり続けているし、時間は可逆的だし目盛りがない 時間も不変だから私は不老不死だ 絶対に変化しなきゃ私の宇宙じゃないって決めたから私の全ては変化し続けている 変化であって進化じゃないし、あなたが好き!私はあなたが嫌い!を往復したって変化だ 好き嫌いに優劣ないし、進化の基準は何? どこを前と定めるのか、前進は進化か、進化は求められているのか、とか永遠に疑問が出てくる 私に疑問を持たせる余地があるなんてめちゃくちゃ甘いと思う
 そんな甘々の進化の話なんて別に良くて、非不変であることが不変ってそれ結局不変が私の1部じゃんっていうのがある それは居心地が悪いので、変化と不変を交互に行ったり来たりしようと思う 私はずっとあなたのこと好き!永遠にあなたのこと好き!っていうのと、私あなたのこと好き!あなたのこと嫌い!を交互に繰り返せば絶対に不変がないことになる それすらも破棄したいと思った時に破棄すればもっと非不変になれる すごいこと発見した
 定型もふへんと似たようなものだと思ってて、感覚的に嫌い 破片を見ただけで分かってしまうし、1を聞いて100位はわかるから、際限ない変化が好き 流動体の人が好き でも私のこと特別に好きじゃないといや そこは関係なくいこうよ 私は不老不死なのが不変なのは諦めてるから、あなたも私のこと特別に好きなことは諦めて欲しい 絶対定型的に通時的に恒常的に私のこと好きでいてよ!

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燈炸

火に頭から突っ込まない程度の作法をわきまえた動物たちが生き延びていて今日も地上は生煮えだ。

火って致命的な変質を招くというか、化学式がついて回る行為を燃焼と呼んでいるというか。その界隈の定義とか何かそういった小難しいことは覚えていないけれど、太陽も大きな火だよという話にひょーんと乗っかるとすれば、窓際の布片はどんどん色褪せるし、ベランダのプラスティックはぼろぼろ崩れる。そのせいで今まで数多の洗濯ばさみが砕けていったという言い伝えは古代より各地で脈々と受け継がれおり、ついには今世紀、わたくしの蝸牛に注ぎ込まれた。その砕けたプラスティック片だって更に脆くなる。散り散りとなっては空気に溶け、ゆっくりと万人の肺にきらきら降り積もり、やがて死をもたらす。全部火のせい。火を中心に変化が起こる、不変でいるのは火だけ。その純度だけを暴力的にトーチに掲げてみせた自由の女神にだって補強は施されている。右手から伝って劣化してゆく。

火には神が宿ると聞いたことがある。
人智を超えて世界中のコンロを同時にチチチと鳴らしたら、こちらの方には神様の左の耳たぶが、あちらの方には神様の喉仏が、そちらの君には神様の足の中指が。それとも神様ははなからひとのかたちをしていなくって、もっと特殊なかたちだと思う? 「それとも」? まるでひとのかたちが普遍であるみたいな口をきく。対義語は足元をひょいひょいうろつく影みたい。こうやって踏んだら勝手に対比が立ちのぼって意味の海でぐしゃっと溺れる。

溺れるという言葉が誘発した、火に対比される存在である水について。
火の中でしか生きられない動物をわたしは知らないが、水を廃することのできる動物は少ない気がする。でもたぶん、水は火よりも遥かに多く命のとどめに立ち会っている。
肺に堆積した洗濯ばさみが肺胞をつまむ夢を見ているうちに、水は肺の隙間をひたりと埋めて呼吸を止めて、世界には洗濯ばさみの夢ばかりが残る。この世界にある訃報の数よりも多い数の洗濯ばさみ。自分が生涯で使う洗濯ばさみの数をわたしは知らない。知らないまま、この肺は洗濯ばさみの墓になっている。そのことだってこれを書き終えたら忘れてしまう。

対比された水という言葉が誘発した、ヒミズという言葉について。
ひみず、火水、かみ。暖めて潤して生かして殺す。おそらくここで言うカミは遠くにいる主だの父だの呼ばれるものではなく、世界中にまんべんなく不偏にうっすらと存在しているものだろう。唯一神だののあれみたいに遠く仰いで誓いを立てる対象とはちがって、ぐるりとその辺に。晴れた日に暖かいということ、雨が降ったら濡れるということ。つい数日前にも雨が降っていたらしい。降りそうだと思いながら建物に入って、出たときには辺り一面がびっしりと濡れたまま晴れ空。濃い灰色のアスファルト全部が鏡みたいで眩しかった。とても綺麗で思わず写真を撮ったけれど、目を細めたあの感覚はちっとも写っていなかった。

「ふへん」という3文字が誘発したイメージについて。
瞬時に脳内のスペースキーをかちゃかちゃと回して、エンターキーを打ち込まずに過ごしていた。くるくると漢字が入れ替わるのを眺めているうちに、[feu]という単語が浮上して膨らんでいった。フランス語で火。それで、自分が何を書き始めるのかもわからないまま、いちばん上に「燈炸」と書いた。こちらの方には爆が、あちらの方には煽が、そちらの君は炉が。あなたに貴様にお前らに焼炒灼炬燵。炬燵? ざあっと雨が降ったら週末には冬が来るって聞いた。厚手の服を備えておいてね。

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一日の始まりから頭痛がしんどいのは私にとって普遍的で
ただ一日前の夜に酒を入れ倒しておったのも私だから「頭が痛い」と文句を言う権利は一般的にないとされている
「飲むから痛いんだろ」
「痛くしよ思て飲んどらんわ」
よそで発言したらいらん喧嘩に発展してしまうのでここだけに記すとする。私は頭が痛い。ところで鮭用のビニール袋って売ってるんですね。鮭て優遇されてますね
私が持ちうる短い時間軸における普遍はこのくらいにしておいて、視点を横に拡げてみよう
しかし隣で焼きそばパン食ってる田中の血の色がもうブルーチタニウムかもしれないって妄想がやまない以上、2人以上の人間にとって言えそうな共通項ってもうなさそう
よう見たら田中の左手の指も私と同じ5本あるような気もするけど私の目が追いついてないだけかもしれない
これはたぶん私が田中の事をよく知らないだけで、よく知っている人、たとえば私が今恋をしていてめちゃくちゃ好きな人を西武新宿のアクアシティまで呼びつけて2人で酒入れて、こっからここまでが世界な?そう線を引いて探り合えば何がしかの真実が掴めそうはあるかもしれない。さっそく電話してみよう!
「真実を掴むために」「真実?」「そう、真実をさ」
ただ私には人見知り強めの星が煌々としているらしくこの行為の結果報告までにはもうちょっと時間がかかりそう。今日は間に合わなさそう
とにかく私は誰一人として他人の宇宙を知らんので、あまねくすべてに宿るものの見当はつかんし
変わらんものについても過去を知らん私には比較できなくて判断もできない、もう死にたい。
でも本当にみんな死ぬのかな。私だけ死なない可能性を誰か否定してる?私だけ神様の可能性とかない??
あと「本は残る、変わらない」って好きな人か誰かが言ってたけど私の網膜だの神経だのの変質で本の形も手触りも変わっていく
各々の宇宙でそういう変化を意識的あるいは無意識的に受け取りながら他の宇宙と重なったり剥がれたりしてるんかなあなんて想像し始めたらもう体液ダダ冷えで気絶の園が見えてくる
考えれば考えただけ、私とあの人を結びつけられそうな共通項のなさをアテに飲みたくなる
「飲みたいだけじゃんお前」
「お願い、飲ませて。もう一杯だけ。それで、本当にやめるから」
そんなんでやめられた試しなんて私の一生を全スキャンしたってHITしない。HUBならディタオレンジです。

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これは合作です。お疲れ様でした!

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