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     漢字は

 漢字は物の形からできたというが、見かたによっては、小さな絵に見えるという文があった。
 川柳に「膝だけば 哀という字に 似てしまう」という矢本大雪という人の句があるそうだが、言われてみると本当にそんな感じがする。広島市の小田優子さんの歌に
  「かなしい顔している字」だと言いながら 幼は半紙に<谷>と書けり
というのがあるそうだ。下がった眉の下に横開きの口、べそをかいているように見える。するとこの漢字を姓に持つ谷チイ子さんから
  書きようで 笑顔にもなる<谷>の字を 嫁ぎ来てより 親しみて書く
と寄せられたそうだ。また石谷茉莉さんは
     幾度も書いているけど<谷>の字は 大口あけて笑っているよ
と詠んでいるそうだ。同じ<谷>の字でも、見る人書く人によって違うというのがおもしろい。考えてみると漢字は表意文字というが、字を見ただけで意味が分かるようなものが多い。林、森、山、川、火などはその形から漢字になったものだが、寂しい、嬉しい、悲しい、暗い、明るいなど形から作られたものではないはずなのに、「淋しい」という字は明るい楽しい気分のものではないことが分かるし、「嬉しい」は辛い苦しい感情とは結びつかない。何気なく使っているが、考えてみるとおもしろいものだ。
                                                                        (H24.1.11)


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