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      表現の仕方

  日本語の「わんわん」と「にゃあ」は、海を渡ると「バウバウ」「ミュウ」になるそうだ。
言われてみれば日本語を聞きなれた耳でも、犬の鳴き声はいつも「わんわん」ではないし、どの犬もどんなときでも「わんわん」ではない。猫にしてもいつも「にゃあ」ではなく、自分の気持ちをいろいろな鳴き声で表現する。飼い主は、その鳴き方で何を要求しているのかを判断できる。そういえば高校生の頃、英語の教科書にイソップ物語が出てきた。その中のうさぎが逃げる様子を、日本なら「ピョンピョン」と表現するのだが、「ティップタップ、ティップタップ」と表現しているのに新鮮な驚きを感じたものだ。
適切な表現にたどりつくには、意味と語感の二つの道があるという。「意味には字引きという案内人がいるが、語感には道しるべもなかった。」と『日本語感の辞典』の著者中村明さんは、出版を思い立った理由を言っているそうだ。「言葉を選ぶときに、多くの表現が思い浮かぶのは、ものの見方が細やかということです。ものの見方を磨かないと、表現はふえません。」とも。
私はものを書くことを仕事にしているわけではないので、多くの表現は知らない。本を読んでいても、初めて出会う言葉が結構ある。その都度、まだまだ未熟だったと思う。知らない言葉はどうすることもできないが、メールや手紙には知っている言葉の中の最もよい表現を選んで使いたいと心がけている。それが日本語に対する私なりの礼儀だと思って。
                     (H22.12.12)


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