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     朝のひかりに

 いつものことながら朝カーテンを開けると、東の方のいろいろな形の屋根に区切られた空の下の方が、かすかにオレンジ色に染まっている。ああ今日もお天気がいい、と思うとなんとなくほっとする。雨も嫌いではない。勝手な言い分だが、適当にしとしとと雨が降る日は、気持ちが落ち着く。そんな日は雨を見ながらぼんやりしているのも好きだ。だがそんなささやかな希望さえも、長い間叶えられなかった。ただただ仕事に追われていた。背負いこまなければすむのに、自分で仕事を作って自分を追い込んで苦しむような日は多かった。馬鹿のひとつ覚えのように「高い給料を受け取っている分、できるだけの仕事をしなければならない」と思いこんでいた。夜の1時2時まで仕事をするのは当たり前のことだった。仕事を家に持ち帰るのも、当たり前のことだった。それが家族に負担をかけることになってはいけないと思い、仕事のかたわら家族のためにも手落ちなく、と働いた。今思えば、よくあんなことが続けられたと思う。朝のおだやかな空を見ると、今の平和な静かな生活が、長い間の苦労に与えられたご褒美なのだと思える。

                                                 (H 24.1.14)


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