冬の樹の美しさ
今日の日の 空を支える 冬木立 作 星野立子
春の木には 花がある
夏の木には 葉がある
秋の木には 果がある
冬の木には 癒しがある 作 内村鑑三
冬の樹に心を止めている人がいる。曇っていても、雨が降っていても、晴れていても、空に向かって枝を一杯に広げている冬の樹は美しい。
山奥の職場に勤務していたころ、二階の部屋の外に大きな樹があった。名前を調べようと思っているうちに3年間の勤務期限が終わってしまい、分からないままになってしまった。冬も春も夏も秋も樹はそこにあり、花は咲かなかった。緑の葉も枯れた葉もあったはずだが、覚えているのは、冬の裸木だけだ。空に向かってのびのびと枝の端から端までを広げているその樹が好きだった。雪が降ると、その枝にふんわりと雪が積もった。風のある日は幹の片側にだけ雪が張り付いているもきれいだった。
その当時の私は、お世辞を言うことも、機嫌取りをすることも、嘘でごまかすこともできない学生時代そのままだったから、孤立することもあった。頼る人も、相談する人もなく、すべて自分と向き合い、自分で解決するしかなかった。行き詰まった時、私はよくその樹を見上げた。その枝のすっきりと伸びている妥協のない姿を見ていると、心の中のいろいろな重いものが消えていくように思えた。あの樹は今もあるのだろうか。勤務していた建物も新しくなったそうだ。改築の時あの樹は切られたのだろうか。いつか逢いに行ってみたいものだ。
(H21・2・2)
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