【細胞】”コドン”ってご存じですか?#6
【挨拶】
こんにちは、catです。今回の記事では、#5で挙げた二つの重要な問題のうち ➀DNAの暗号が表すものは? に関する話をしていこうと思います。どうぞよろしくお願いします……!
【暗号の解読】
1950年代の終わりごろ、DNAに蓄えられた情報がRNAに写され、そのRNAからタンパク質がつくられること(セントラルドグマ)は判明し、受け入れられていました。ヌクレオチドの塩基によってタンパク質の構成単位であるアミノ酸が誘導されているとわかったのです。議論の的だったのは”暗号の解読”でした。
【コドンの発見と解読】
繰り返しになりますが、DNAとRNAはよく似た物質であり、情報をDNAからRNAに変換することは簡単です。しかし、アミノ酸とRNAは性質がまったくの別物です。しかも、アミノ酸は二十種類もあるのに対し、ヌクレオチドは四種類しかありません。つまり、ヌクレオチドとアミノ酸の対応が一対一では説明がつかないのです。
1961年、ヌクレオチド配列によるアミノ酸の指定が、一対一ではなく、三対一であることが発見されます。塩基三つで一つのアミノ酸を指定していたのです。この、ある一つのアミノ酸を指定する三つのヌクレオチドの組み合わせを、コドンと呼びます。たとえばーAAAーというコドンがあると、リシンというアミノ酸が指定されることが分かっています。同時に、四種類のヌクレオチドが三つで一つのコドンとなるので、4×4×4=64通りのコドンが存在することが分かります。
しかし、アミノ酸は二十種類しかないため、使われないコドンがあるのか、重複するコドンがあるのか、という疑問がありました。また、どういうコドンがどのアミノ酸を指定するのか、までは、まだ解明できませんでした。そこで科学者は、人為的に適当なヌクレオチドの配列をつくり、そこから何のアミノ酸が検出されるのか確かめ、コドンによる遺伝暗号を全て解明しようと実験に励みました。
最初に行われたのは、ニーレンバーグの実験でした。彼はマテイと協力し、RNAにおいてチミンの代わりに使われる(#7で後述)塩基ウラシル(U)だけが連なったRNA(ポリ-U)を合成しました。すると、二十回の実験を通し、ある結論が導かれました。ポリ-Uという情報では、フェニルアラニンというアミノ酸しか持たないポリペプチド(アミノ酸がペプチド結合で連なったもの)だけが得られたのです。
その後、ポリ-Aからはリシン、ポリ-Cからはプロリンを得られることが判明しました。しばらくすると、難しいと思われてきた異なる種類の塩基をもつポリヌクレオチドの合成技術も誕生し、研究は加速。-GUA-のような、さまざまなコドンが指定するアミノ酸を知ることも出来るようになり、翌年にはすべて(64種)の暗号が解読できたのです。
研究の結果、もう一つ分かったことがある。アミノ酸の連結(タンパク質の合成)には開始信号と終止信号がある、ということです。
64種類のコドンのうちーAUGーというものがあります。これはメチオニンといアミノ酸を指定するものですが、同時に、タンパク質合成の開始を合図するコドンでもあったのです。したがってーAUGーはとくに開始コドンと呼ばれます。開始コドンによって指定されたメチオニンは後に、アミノ酸の配列から除去されます。
逆に、合成の終わりを知らせるコドンも存在します。-UAA--UAGー ーUGAーの三つは、どのアミノ酸も指定しません。指定しない、という事は、それ以上アミノ酸が連結できなくなる(#7で後述)ため、そこで合成は終了であるという信号になります。この三つのコドンはとくに終止コドンと呼ばれます。
【おわり】
はい。今回は、DNAの暗号が表すものは?という問題に対し、暗号は三つの文字によって「何のアミノ酸をタンパク質に用いるのか」の指示を表す、という回答をする記事でした。次回はDNAの暗号はどのように使われる?という問題について簡単に説明していこうと思います。
では今回は以上になります。
ここまでご覧いただき、誠にありがとうございます。
このシリーズで参考にしている書籍は「Essential細胞生物学 第四版」というものです。大学の講義で教科書に使われることもあります。文章は海外の物の翻訳なので、読みにくさを感じることもありますが、見やすい図や写真が載っているので、ぜひご覧になることをお勧めします。
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Twitter:@Catkamome
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