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嘆きのクリームソーダ

クリームソーダっていいですよね。
しゅわしゅわと細かい泡が浮かぶ鮮やかな緑色の上に、真っ白なアイスが乗っている。
子供心にそれは宝石の様に輝いて見えていた。

こんにちは、わたしです。

11/4まで開催中の #純喫茶ハンシン で、 #喫茶二十世紀  さんが出展されているということで行ってきました。
あちこちで「本格的」「まじ美味い」と聞いていて行きたい行きたいとずっと思っていたのですがトーキョートオイ、中々行く機会にも恵まれず行けていなかったのですが、まさかの大阪出展、どうしても行きたい!なんとしても行きたい!10/30-11/4の開催期間で絶対10/30の初日は混むでしょ。11/1は結成記念日だからきっと混むでしょ。11/2-4は連休だからもっと混むでしょ。

(じゃあ、この日しかないやん)

というわけで行ってきたのですよ。

先頭ではありませんよもちろん。

列形成の時に前後になったお姉さんたちととりとめのないことを喋りながら何食べようと期待を膨らませながら待つこと約4時間半(※列形成に加わってから一品目が出てくるまでのおおよその時間)。

イベントなのであちこちで自慢のお品が振舞われているわけで、ふわんと漂ってくるカレーのスパイスの利いた濃厚な香りとか、もう、もう、辛かった。もう列を外れていっそのことカレーを貪り食いたかった。

ついについにご対面なのです。

メロンクリームソーダとさばマヨサンド(ハーフ)

まさに修行僧の気持ちでカレーの誘惑と立ちっぱなしによる腰の痛み(※筋力低下)に耐えに耐えた後、ご対面したメロンソーダは、きれいだった。

きらきらして、しゅわしゅわしていた。

語彙力ー、と言われてもきらきらでしゅわしゅわなんだからしゃあない。

クリームソーダは無条件にテンションが上がるけれども、それと同時に胸がきゅっとなる。あの、好きできゅっとなるアレとは別の。

なんとなく覚えているのは、父と行った車屋さん。
車を買い替えるという父が、私を連れて何件か販売店をめぐっていた記憶だ。
そのうちの一件、父がセールスの人と何やら話し込んでいる間、ちょこんと座っていた私の目の前にことんと置かれたのが緑色が眩い大きなクリームソーダ(※当時の私目線)だった。
「どうぞ」と笑顔を見せてくれたお姉さんはとても美人だった(※当時の私目線)。

小さなお子様(私)にとって、それは何よりものご褒美で。
ただ、父についてきただけの私が、こんな、豪華なのを、果たして、食べても、良いのだろうか……?
いつもなら「半分こ」する妹も、今日は、居ない。

ということは必然的に、「これ」は私が独り占めしていい、って、コトっ?

輝く宝石を前にしてぐるぐると想いを巡らせていると、話を終えた父が戻ってきて私にこう言った。

「ここでは買わないことにしたから、それ、食べたらあかんで。」

小さな声で囁いたあと、父はセールスに呼ばれてまた戻って行ってしまった。

父の言葉は直ぐには理解したつもりだった。
しかしながら、目の前の、滅多に食べられない、しかも、魅惑的なキラキラを、(タダで)、独り占めできる、その絶好の、チャンスを、みすみす、逃せと……?

「食べていいのよ?どうぞ。」

当時の私は、親の言いつけを守る「とても良い子」であった。
美人なお姉さんが何度も食べていいよと優しく促してくれたが、私は透き通った緑色に解けたアイスクリームの白が混じって濁っていく様をじっと見ているしかなかった。

結局、父はその店で車は買わなかった。
確か一番最初に見た店で買ったような記憶がある。知らんけど。

私の目の前のクリームソーダはあの時と変わらず、透き通ったとてもきれいな緑色をしていた。まるでエメラルドの宝石のような。

記憶の中の「飲めなかったメロンクリームソーダ」そっくりだった。

緑色がクリームで濁る前にと、一息に飲んでしまい。
もう少し味わうべきだったと、ちょっと後悔の念が残った。

わたしだけの、クリームソーダ。

ごちそうさまでした。




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