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犠牲の先のストーリー~高校野球ハイライト延長戦13日目・近江

3回戦を終えノーヒット。打撃で苦しむ近江の主将・春山陽生は、帽子の裏に大きく『犠牲』と書いた。「結果を出したい気持ちを捨ててチームに尽くす」。準々決勝では安打こそ出なかったが、言葉通りチャンスを広げる死球でガッツポーズを見せた。

「自分たちの代で負けて…1年のほとんどが大変な時期だった」。去年の秋は決勝で敗れ、県内連勝は34で止まった。今年の春は3回戦で敗退し、シード権も失った。全ての優勝旗が学校から姿を消す中で、多賀章仁監督が「重石を取ってやりたい」と話すほどに春山は追い込まれていた。

ただ、立て直したのも春山自身だ。開幕前にはOBの林優樹から喝を入れられ、「先輩の応援があるから頑張れる」と前を向くこともできた。スローガンに「闘争心」を掲げてチームを鼓舞し続けた姿勢と、準決勝の初ヒットでベンチが大きく沸いたことは決して無関係ではない。

「彼が主将だからこそ、『敗戦が夏につながった』と言えるストーリーにしてくれるのではないか」。開幕前の監督の期待も、いよいよ現実味を帯びてきた。「甲子園のことは考えない。目の前の試合に集中する」。夏4連覇の瞬間まで気を緩めるつもりはない。

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