貧しいやもめ
ルカによる福音
そのとき、イエスは目を上げて、金持ちたちが賽銭箱(さいせんばこ)に献金を入れるのを見ておられた。
そして、ある貧しいやもめがレプトン銅貨二枚を入れるのを見て、言われた。
「確かに言っておくが、この貧しいやもめは、だれよりもたくさん入れた。
あの金持ちたちは皆、有り余る中から献金したが、この人は、乏しい中から持っている生活費を全部入れたからである。」
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レプトン銅貨2枚は、その日一日を食べつないで行けるかどうかというほどの少額。
格差社会の現代日本、今や4割という非正規雇用、低賃金、長時間労働。パワハラ、セクハラ、モラハラ等等。いわゆるブラック企業と呼ばれる企業群。
一億総中流と言われたのはいつのことか、今ではその日の食べ物にも困る若者が少なくない。
あるいは過酷な競争社会の人間関係の歪みに、心を病んでしまう者も多い。
『はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る』(石川啄木)
神殿に献金しようとする一人のやもめ。
彼女のその祈りが、神の子のハートを撃(う)った。