[岩下壮一] 堅固な土台

新刊・岩下壮一著「カトリックの信仰」を手に取って1カ月になる。

少しづつ読み進め、ようやく500ページにたどり着いたが、これでもまだ道のりは半分であって、まだまだ先は長いという感が強い。

何より、ここまで来てはじめて、有名な「イエス・キリストの生涯」がテーマに取り上げられるのであるから、それまでの数百ページという長い講義も、全てその為の準備に過ぎなかったとも言える。

科学的真理や論理的推論に基づいて、そして同時に、健全な社会常識から逸することもなく、縦横無尽に駆使された知性の産物ほど、人を説得するに堅固な土台はない。

岩下壮一の論法が、現代の読者にとって、どこまでそれに近づいたものであるかは、人により印象は異なるであろうが、専門家向けの専門書・学術書は別として、一般向けには今もなお、本書の前半部の持つ、ある種の濃密な堅固さは失われていないと思われる。

それは何より、第一級の哲学者であった氏の強靭な思索の跡(あと)が、文体から感じられるからである。

恩師ケーベルの忠実な学徒として、真理を運ぶ言葉の重みを十二分に知悉(ちしつ)していた氏ならではの、堅固な日本語の土台が、我らさまよう読者を安全にイエスとの出会いに導かんとするかのごとくである。























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