誰もいない名前

ルカによる福音

さて、月が満ちて、エリサベトは男の子を産んだ。

近所の人々や親類は、主がエリサベトを大いに慈しまれたと聞いて喜び合った。

八日目に、その子に割礼を施すために来た人々は、父の名を取ってザカリアと名付けようとした。

ところが、母は、「いいえ、名はヨハネとしなければなりません」と言った。

しかし人々は、「あなたの親類には、そういう名の付いた人はだれもいない」と言い、父親に、「この子に何と名を付けたいか」と手振りで尋ねた。

父親は字を書く板を出させて、「この子の名はヨハネ」と書いたので、人々は皆驚いた。

すると、たちまちザカリアは口が開き、舌がほどけ、神を賛美し始めた。

近所の人々は皆恐れを感じた。そして、このことすべてが、ユダヤの山里中で話題になった。

聞いた人々は皆これを心に留め、「いったい、この子はどんな人になるのだろうか」と言った。

この子には主の力が及んでいたのである。
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洗礼者ヨハネ。

誕生の時から既に主の力が及んでいたという。

「あなたの親類にはそういう名のついた人は誰もいない」

この世の血縁によらず、人によらず、主によって分かたれた存在。

モーセの十戒の石版よろしく、父は字を書く板を出させて、「この子の名はヨハネ」と書いた。

「ヨハネ」という名による割礼。

ここにもう一人の幼子は、主によって聖別された。



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