[岩下壮一] カトリックの信仰

先日、書店で岩下壮一著「カトリックの信仰」(ちくま学芸文庫、2015年7月9日発売)を購入しました。
昔、講談社から出ていた同名書は、長らく絶版のままで入手困難な状況でしたが、今回、出版社を替えての復刊ということで、相変わらず900ページ超という文庫としては大部のものではありますが、こうして手元に置いて読めるというのは、個人的には大変ありがたく思っています。
また現在の深刻な出版不況の中で、決してベストセラー路線とは言えない、本書の復刊を引き受けた筑摩書房の英断にも、一読者として感謝したいと思います。
一人の新米カトリック信徒としても、カトリックについての理解を深めていくにあたって、本書のような優れたカテキズム(公教要理)手引書が手軽に参照できることは大いに助けになることです。
もちろん現代のカテキズムとして、第二バチカン公会議後に作成された「カトリック教会のカテキズム」(日本カトリック司教協議会)はありますが、傑出した哲学者でもあった著者が日本人向けに明晰な日本語でカトリック信仰の本質を伝え残してくれたお陰で、後世の私達はそれをいわば鍵として、現代カテキズム、現代カトリックをもまた読み解いていくことができるのではないかと思われます。
とはいえ、私自身の態度としては、岩下壮一の言説を絶対化・権威化するつもりも、また現代カテキズムの言説も絶対化・権威化するつもりはなく、常に学びの状態でありたいと思っておりますし、また他者の尊厳を侵害しない範囲での、できるだけ自由な思想、多様な思想というものも大事にしたいと考えております。
そのような意味で、これから先、本書を少しづつ読み進めるとしても、著者との共感、著者との対話だけではなく、あるいは著者との対決という側面も出てくることと思っていますが、それもまた古典的といわれる書物が与えてくれる喜びの一つには違いありません。
 

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