米国の法の世界の男女平等について ~映画“Balancing the Scales”の感想~自分の選びたい選択肢を選べる世界に
昨年10月と今年1月の2回、アメリカ領事館が主催した
映画:Balancing the Scales(法の世界の男女平等)上映とローエン監督とのトークセッションweb企画に参加したので、その際の概要と感想を挙げておこうと思います。
(参加から時間が経過していること等、記載には、メモミス等があるかもしれないことご容赦ください。)
1.映画の概要と感想
映画は、57分,日本語字幕。内容は次のとおり。
Trailer: https://www.youtube.com/watch?v=DPhwyZtih7Y
映画:Balancing the Scales (法の世界の男女平等)
Balancing the Scales (法の世界の男女平等) は、アメリカの女性弁護士たちの歴史をひも解いたドキュメンタリーフィルムです。自らも弁護士として人権問題に取り組むシャロン・ローエン監督が過去20年以上にわたり、今年9月に亡くなった米最高裁判所史上2番目の女性判事ルース・ベイダ―・ギンズバーグ(RBG)やその娘でコロンビア大学法学教授のジェーン・ギンズバーグ、公民権専門弁護士グロリア・オルレッド、そのほか多様な人種の女性弁護士たちをインタビューしています。
女性であるがゆえに受けてきた職場や大学での差別、壊すことのできない「ガラスの天井」、ワーク・ライフバランスなど第一線で活躍してきた彼女たちの言葉からは、法曹界のみならず社会全体のジレンマ、文化的偏見が浮き彫りにされています。
1940年代から現在まで法曹界の第一線で働く女性弁護士たちへのインタビューを通して、私たちに見えてくるものは何でしょうか?
映画鑑賞直後の感想としては、「米国の女性法曹は、日本よりもかなり過酷な競争にさらされているなぁ!」ということです。胸が苦しくなってしまいました。
法律事務所内における弁護士の評価は、結局、売上額によるため、家庭において家事・育児等を負担することの多い女性は、男性に比べて仕事に費やせる時間が少なくなるため、評価されない結果が招来されるのです。過重労働となりやすい傾向にある業界ということです。
トラックのスタート位置で、スタート姿勢をとる複数の男女の姿と、コースの先に何も障害物のない男性と、コースの先に、洗濯機や調理器等が描かれている女性のコースが描かれたイラストが印象的でした。
例えば、米国男性弁護士の平均収入は、1130ドル、女性は784ドル(男性の70%程度)。
法律事務所でエクイティパートナーとなっている女性弁護士は19%のみで、白人ではない女性弁護士は3%に過ぎないなど。
そのような背景の下、一人一人の女性が、妊娠・出産をするかどうか、今のキャリアを変えるかどうかについて、悩み、どう考え、どのような選択をするのかについて描かれています。
映画では、白人女性法曹(法曹とは、裁判官・検察官・弁護士を総称する言葉です)だけでなく、黒人女性、アジア人女性も出てきており、彼女たちは、マイノリティ(女性)の中でもさらにマイノリティ(人種)であることによる体験とそこから生まれた矜持を語っていました。
ベトナム系女性弁護士の「この州で、ベトナム系の弁護士は私だけであり、私の存在が彼らには必要だと考えて仕事をしている」という発言は、印象に残りました。
2.ローエン監督が映画を作成した理由
ローエン監督は、なぜ、映画を作成したのか?という質問に対して、
(動機)1980年代米国において男女平等は達成されたと思われていたが、2009年、女性の低賃金問題等、そうではないことが判明した(1982年女性不平等条項撤廃の法案は、50州において過半数の同意が得られませんでした)。
皆、男女平等は良いことだとわかっていても、実現できていない。
男性も女性も自分の選びたい選択肢を選べる世界にしたい。
個人レベルでできることには限りがあり、社会全体においてリーダーシップの在り方を変えていかなければならないと考えた。
(方法)「映画は、一人一人の物語を語ることで、多くの人の感情に訴求でき、多様性や男女平等について考えてもらえると考えたから。」と答えていました。
映画は、かなり長期間、撮りためていたインタビューを中心に構成されており、生前のRBGの映像も多く使われていました。
ローエン監督は、とても理知的でありながら、温かみのあるチャーミングな方でした。質問に質問者の背後にある悩みをくみ取りながらも、的確に発展的な回答をしていく姿がとってもかっこよかったです!
監督:シャロン・ローエン
ローエン&クロノスキー法律事務所 弁護士
1979年からジョージア州アトランタで弁護士として活動、人権を守るためにはすべての時間を使ってあらゆる努力をするという信念を持つ。夫のジョン・クロノスキーとともにローエン&クロノスキー法律事務所と映画製作会社R & K プロダクションを設立。弁護士格付け機関マーティンデール ハベル最高ランクのAV評価を獲得、National Association of Distinguished Counsel (全米優秀弁護士協会)など米国内の様々な弁護士団体から表彰される。法曹界での男女平等、多様性、インクルージョンについて、国内外で多数講演を行う。
3.トークセッションの内容
2回のトークセッションの中で、印象に残った知識を整理しておきたいと思います。
・3分の1、30%は、社会を変革させる数字
あらゆる分野で、少数派が特例・特別にならない数字である
・エンターテイメント、テクノロジー、システムの3つの産業
特に、この3の産業は、現在、96%男性のアイディアに投資されており、女性の参画が重要。
・労働市場、デジタル、金融のアクセス、教育においての男女平等が重要
・男性がメンター(平等に評価する人の存在)になることが女性の登用にとって重要
男女平等の問題は、男性の問題であると認識している男性のことを「Good Gay」というんだそう。男性のサポートを推進する制度は重要とのこと。
セクハラ行為やジェンダーバイアス言動も、男性が「それってどういう意味ですか?」と注意する方が、防止に効くそうです。
・アファーマティブアクションについて
これまでに機会が与えられなかった人達に機会を与える。
一時的に地位より能力が劣る人が就くかもしれないが、これまで機会が与えられなかった人がその地位に就くことで組織にどのような影響を当たるのかということを考えなければならない。長期的視点から見るとよりフェアな社会にできるだろう。
・教育は重要だが、教育だけでは人の行動は変わらない。
教育を受けると思考は変わるかもしれないが、行動は変わらない。
・行動を変えるために、政府ができること、企業ができることを考える。
政府は、バイアスによって排除される人をが出ることを防ぐための法律を作る。法律は人の行動を変えることができる。
企業は、「女性も昇格させる制度」と「昇格の判断をするマネージャーを育てる」ことが必要。経営TOPだけでなく、中間管理職の認識の重要性を繰り返し強調されていました。
また、行動を変えるためには、インセンティブ(罰則も含め)が必要である。
・配偶者がキャリアの中で一番大事
自分のキャリアを信じ、尊重してくれる人を配偶者に選ぶことが重要!
とても共感。
・女性同士の連携すること。連携のコツとしては、共通の目標をもつこと。
いろいろなサービスを活用する。
4 一人一人の女性に対するメッセージ
CHANGE YOUR WORLD.
壁の花であってはならない。
自分で発言・交渉して気づいてもらう。ただし、人を退けるほどではなだめ。
穏やかに、きちんと変化を作る行動をしていく。
自分で価値・影響を創出していくこと。
感謝と謙遜を。
組織に自分達が与える影響を知る。
公私、社内外にサポーターを作る。
無理は禁物
では、また!
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