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Insight: Will the pandemic converge?

世界を変えたCovi19によるパンデミック。ワクチンの接種が進み効果を示す一方、その変異型の発生により、国や地域によっては再度のロックダウンを余儀なくされる状況になっています。

ウィルスの対策としてワクチンとともに着実に進んでいるのが、医薬品の開発です。既に新型コロナ治療薬としていくつか使用されているものはあり、例えば日本国内では5種類の医薬品が承認を受けています。ただし、その全てが点滴で投与する必要性のあるもので、医療機関の負担は大きく、投薬頻度も上がりません。今必要とされているのは、自宅療養でも使用できる経口薬です。

現在、数社の経口薬の開発が最終段階を迎えています。10月にはメルクが米国FDAに申請を行ったことがニュースになっていました。果たして経口薬は、パンデミック収束の鍵となるのでしょうか?11月のInsight、前半は、対Covid 19の経口薬の開発状況を整理します。

1. 開発は最終段階へ
メルク、ファイザー、ロシュ、塩野義製薬の開発状況概要

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現時点で開発の先頭を走るのがメルクで、10月には第3相臨床試験の結果を公表しました。それを追随するのがファイザー、ロシュで、それぞれ第2/3、第3相臨床試験を進めています。そして、日本企業で存在感を見せているのが塩野義製薬で、9月末より国内P2/3試験を行っています。

開発中の経口薬は、大別すると、ポリメラーゼ阻害薬とプロテアーゼ阻害薬に分かれます。前者はRNAを合成する酵素、ポリメラーゼを阻害し、ウイルスの増殖を抑制する薬剤であり、後者はウイルスの複製に必要なタンパク分解酵素の働きを阻害する薬剤です。

 メルク  : モルヌピラビル(ポリメラーゼ阻害薬)  第3相臨床試験  
 ファイザー: PF-07321332(プロテアーゼ阻害薬)  第2/3相臨床試験  
 ロシュ  : AT-527(ポリメラーゼ阻害薬)          第3相臨床試験  
 塩野義製薬: S-217622 (プロテアーゼ阻害薬)     第2/3相臨床試験 

2. 臨床試験の結果と薬事申請状況

10月に公表されたメルクの第3相臨床試験の中間解析の結果は、外来患者の軽症から中等症の新型コロナ患者を対象にした場合、プラセボにと比較して、入院あるいは死亡のリスクを約50%低下させたというものでした。
この結果を踏まえ、メルクは、米FDAに対し、緊急使用許可(EUA)の提出を行いました。なお、同試験はグローバルで実施されており、対象国には日本も含まれています。

ファイザーの第2/3相臨床試験の中間解析結果は近いうちに明らかになる予定が伝わっており、同社のよると年内のEUA取得も考慮されています。

ロシュは4月から第3相臨床試験を開始しており、グローバル試験には開発・販売権を取得した中外製薬も参加しています。ロシュ、中外製薬によると、2022年には日本国内での申請を行う予定です。

そして、塩野義製薬は、無症候または軽症の患者2100人を対象とした国内での試験を行っており、年内に申請に向けた準備に入るとの考えを示しています。海外の規制当局とも協議を進め、グローバル試験を行うことも計画しています。

加えて、各社生産の準備も進めており、メルクについては、年内に1000万人分の生産を見込んでいるとされています。

3. 状況は変わるか?

さて、11月のInsight 1回目は、経口薬の開発状況の概要を示しました。
メルクの臨床試験の結果はPositiveなものであり、同社の医薬品が流通することで、状況改善に寄与する可能性は高いと言えるでしょう。より多様な対策の選択肢を得るためにも、他の企業の臨床試験結果が待たれます。

依然予断の許さない状況ですが、経口薬の開発は、医療関係者及びCovid19に苦しむ多くの人にとって明るい話題になりそうです。ただし、ワクチンでも問題になったように、経口薬についても、経済格差に基づく流通量の差が問題になる可能性があります。
そのような状況下、New York Timesのレポートによると、メルクが経口薬の製法を105カ国と共有することを宣言しました。次回は、このニュースを掘り下げてみます。

出典:
メルク  Link
ファイザー    Link
ロシュ  Link
塩野義製薬  Link
Answers News  Link
New York Times  Link

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