あの五美大展のDMは最高

五美大展のポスターが物議を醸したそうです。

遅まきながらこれを知り、ちょっと自分なりの考えを表しておきゃなきゃと思いました。
まず言いたいのは、

おれはこれ好き。

です。
デザインの機能/クオリティとしてどうかとか、展示の参加者が満足していないのはいかがなものかとか、そういったことはまず一旦置いておいて、直感的な感想として。Windowsのペイントの線、右のピンクの縦線と題字の距離感、色分けの方針の謎、わかるようでわからない大学と学科の図解。正直作者が実際に何を考えているのかはさっぱりわかりませんが、少なくとも表現として見たことがないし、おもしろい。だって、大事な卒業制作展のDMですよ?普通、デザイナーだったらおしゃれなMacでIllustratorとPhotoshop使います。それに、この図はなんなんでしょう?小学校の掃除当番の回るやつなんでしょうか。あるいは学校が違っても根は同じというメッセージ?文字もこれ、パソコンで作ってるんだから普通に打ったらまっすぐ立ちますよ。傾けるためわざわざ操作してるんです。ピンクの使い所もどういう基準なんでしょう。これだけ話題になってるのも、やっぱり見たことがないしわからないからだと思うんですよ。このわからなさ、新しさが、楽しい。

じゃあデザインとしてどうなのかって?

可読性が低いか
たしかに読みやすくはない。でも、読めるよね?駅のサインとか小説の本文とかなら読みやすいに越したことはないけど、DMとしては十分じゃない?

クライアントである学生が喜ばないのか
たしかに一般的なかっこよさではないし、自分の卒展がこのDMであることに憤ってるひとも多いみたい。デザインって尖りすぎず普通すぎずの僅かな領域に落とし込まなきゃいけないから、そこはあまりよくないかもしれない。でも美大のファインアートの展示なんだし結構やっちゃっていいんじゃないの?とも思う。美大として大衆性と芸術性のシーソーの問題なのかな、結構難しいところ。

合同展示全体のDMとしてトンマナが適切か
これも難しい。デザインって作者のエゴが入らなければつまらないものになるし、エゴが過ぎると嫌悪感が強くて機能しなくなってしまう。デザインとコンテンツのギャップが魅力になることもあるし。ただ多くの方も言っているように今回は話題になってるので結果的にはokなのでは。

嫌悪感=BAD DESIGNではない。

これを勘違いしている人が非常に多い。人間の性質として新しいものにはまず嫌悪感を抱く。懐かしいものや見慣れたものに対して安心感を抱く。ただ、何も考えずにこれに従っているとどんどん腐っていく。デザインにもこれが言えて、どんどん新しい表現の可能性を広げていかなければどんどんつまらなくなっていく。理想は、デザインに興味がないひとでも新しいものに対して好意的な感情を表明するようになること。そうなったら、その国は美術大国になれる。

問題提起として最高

このDMは前段で書いたことを浮き彫りにしたと思う。もちろん表現がそこまで必要ない仕事もたくさんある。でもデザインが経済的、社会的に今の地位を獲得するために機能の面を誇張しすぎたことで、表現を犠牲にしてしまっているように見える。ただ、作者はまったくそんなことは考えたこともないということも大いにあるというかどうでもいいとおもってるかもしれないけどね。

デザイナーとしての勘(余談)

全くの勘ですが、作者はおそらくデザイナーではないけれど、グラフィックデザインを全く知らない人間ではないです。これを作れるデザイナーは狭い知識ですが僕の知る限りいないし、学生が初めて作ったポスターっていう感じがしないです(特に文字まわり)。もっと言えば、グラフィックができるファインアート系の学科の学生かなという印象です。今の日本のグラフィックデザインの様式にとらわれていないかつ芯のある表現だからです。グラフィックデザインの学科の学生という線もありますがそうだとしたらに素晴らしい才能をお持ちだと思います。すでに有名な方だったりしたらスライディング土下座します。

【1/23追記】作者はある著名なデザイナーらしいです。ミミミ_| ̄|○

おわり。

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