映画「マザー mother」で長澤まさみは日本アカデミー賞にノミネートされるだろう(感想)
◆はじめに
大森立嗣監督最新作「マザー mother」を見てきた。ぶっちゃけ、「しみったれたこの感じ、面白いかわっかんねーなー、まあ長澤まさみが毒親役やってるから見てみるか」くらいのモチベーションで鑑賞したが、長 澤 ま さ み が す ご い。
見終わって知ったのだが、実際に起きた「川口祖父母殺害事件」にまつわる取材を書籍にした「誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか」を原案に作られたのだとか。
◆あらすじ
母・秋子(長澤まさみ)と息子・周平(奥平大兼)は親子で極貧生活を送っていた。自堕落な秋子は美貌を使って男に擦り寄り欲望を満たしながら、生活保護で得る金をすぐパチンコにつぎ込み、金に困ると親族に金を無心するような女。それもできなくなると犯罪で金を工面するようになるが、住居を転々とすることを余儀なくされ次第に困窮を極め、息子はとある事件を起こしてしまう。彼は、なぜ事件を起こし、罪を被ったのだろうか。
◆一言いっておきたい
長澤まさみは本作で日本アカデミー賞主演女優賞にノミネートされるだろう。
◆感想
・長澤まさみ、えげつない体張ってんなー
毒親どころか鬼親役、めちゃくちゃ頑張って演じきってました。マジで腹から声出してたしマジで体張ってたし心から胸糞が悪かった!(賞賛!)
息子に汚い言葉でカップラーメン買ってくるよう命令したり、息子に各親族にお金の無心させに行かせたり、息子の前で間男とセックスしたりやりたい放題だよ。「一番可愛いのは私」であり、「私が生んだ子供なんだから私がどう育てようと自由だ」、という偏った考えを持った母親役をやりきってました。
着る服もみすぼらしくて汚いし、見た目もどんどん憔悴していくし、何なら道端に転がる浮浪者にもなるので。よくやってるわー。すごい。
まぁあえて言うなら白髪生えたクソババアでも長澤まさみやっぱり綺麗すぎるんだけどな・・・・・・。
・主語がどこまでも「私」の母・秋子。
母・秋子には「子供は私が産んだ私の分身だから、何をしてもいいのだ」という認識が根底にある。だから命令して子供を操るし、気に食わないことがあれば叱責して子供を傷つける。また、自分の庇護下・支配下から逸れようものなら、彼女の鋭い言葉の刃で自立を阻むこともするのだ。
劇中、息子が一度だけ「俺、フリースクール行きたいから、また家転々とするなら2人で行ってよ」と秋子と間男に反抗するのだが、「お前はフリースクールの奴らに嫌われている」という嘘を飄々とつき本人の自己信頼をへし折り、自分の保護下から自立を阻む。さらに児童養護施設の職員が息子らの成長を促進させようと本を貸そうとするものなら、罵声を浴びて本を捨て、自分の介在以外の他者による自立促進を阻む。
一方で、間男が自分の前から消えると頼れるのは周平だけ、と擦り寄り、泣きつく。「私」が辛いから息子にすがる絵にさすがに閉口した。
・息子・周平は何を思うのか
そんな毒親に育てられるためグレてもいいものだが、あまりに彼は純粋で素直だ。
前述の通り自分で思考する機会や他者との関係を阻害されているので、自分の人生に秋子が関与しすぎて、次第に彼も母なしでは生きていけない状態になっていたのではないか。
どんな仕打ちをされても、「僕がお母さんに愛されてないわけがない。」そんな気持ちで接し、彼女の振る舞いを受け入れていたのだろう。
・共依存関係の胸糞親子で一蹴して良いのだろうか
どう考えても共依存関係の胸糞親子と一蹴したくなるのだが、自分の原体験を振り返ると一歩世界線が異なっていたらそうなってたと思わざるを得ない。どうしたらそうならないのか、どうしたらそうなるのかの分界点をぐるぐる考えてしまう。
ともあれ最後のシーンで児童養護施設の職員が秋子に「周平くん、お母さんのことが好きって言ってましたよ」、と伝えた後の秋子のなんとも言えない顔で終わり、一定のカタルシスで終わった感。
◆事実は小説より胸糞なり
ただね、実際のこの事件だと、母が息子が獄中から出てくることに対して苛立ちの念を覚えているらしく、事実は小説より胸糞なんだなと、思いました。家族って呪いだよ・・・・・・。