映画「ファナティック」、ファンを呪わば穴二つ。ジョントラボルタの怪演を刮目せよ(ネタバレあり)
◆はじめに
ファナティックを公開日に見てきた。ジョン・トラボルタ御大の気持ち悪い演技目当てだったけど、全体的にシンプルな構成で、オチが個人的に好きだったので感想を書く。
◆一言でいうと
ファンを呪わば穴ふたつ。
「ファンがいなければ、俺は無に等しい」という、作中に出てくる主人公が憧れる俳優ハンター・ダンバーの名言があるのだが、この言葉に始まりこの言葉に終わる映画だ。
◆あらすじ
冴えない映画マニアのムース(ジョン・トラボルタ)は、ある日行きつけの雑貨屋に憧れの俳優ハンター・バンダー(デヴォン・サワ)がサイン会に来ることを知る。しかし当日、ハンターに邪険に扱われたことをきっかけにムースの”憧れ”は歪んだ”執着”に変わっていく。
◆感想
・オタク然とした気持ち悪いジョントラボルタ御大が見られる前半
映画オタクのムースはある日行きつけの雑貨屋に憧れの俳優ハンターがサイン会に訪れることを知り、テンションがぶちあがる。少しでもサイン会で印象に残る言葉を伝えようと鏡の前で練習したり、彼が過去作品で着用していたジャケットを借金して買ってサイン会に持ち込もうとしたり、とにかくロマンティック浮かれモード。
その浮かれザマも気持ち悪くて良いのだが、そもそも出で立ちやその他の振る舞いからしてジョン・トラボルタ御大がやり過ぎていて思わず笑ってしまう。
前髪の揃った坊ちゃん刈りにダサい靴下を履きマニアックなリュックサックというギークスタイルはもちろんだが、耳クソほじってニオイを嗅ぐクセを随所で見せつけくるのはマジでクソ気持ち悪りぃw
自分を馬鹿にしてくる人物に対して感情が高ぶりすぎて暴言や暴力を振るう狂気っぷりや、自分のことを認めてくれな人たちに対して赤ちゃん返りしたかのように落ち込んで泣き喚く様相がとにかく気持ち悪くてとても手放しに支持できるものではないのだが、すべての行動が「あなたのファンです」という熱烈な想いを起点にしているので、気持ち悪いんだけど、むっちゃくちゃ気持ち悪いんだけど、ピュアでちょっと可愛く見えてきたりもする。
・ハンターに邪険に扱われてから少しずつ愛が歪んでいく中盤
そんな心躍らせて待っていたサイン会だが、やっとムースの番が回ってきたと思ったらハンターはプライベートな用事で中座してしまう。居ても立っても居られなくなったムースはハンターの元へ詰め寄ってしまったことも災いし、彼にクソミソ邪険に扱われてしまう。しまいにサインももらうことができなかった。
悲しみにくれるムースの愛情は執着へ変貌していき唯一の親友リア(アナ・ゴーリャ)のツテを使いハンターの家を突き止め、赴いてしまうのだった。ちょうどランニング中のハンターと鉢合わせするも、完膚なきまでな塩対応をされまたもとんぼ返りを余儀なくされる。
しかしそんなことでムースは引き下がるわけがないのだ。なぜならムースはハンターの”ファナティック”だから。
ムース自体、見た目もしゃべり方もオタク然としていて一般的に気持ち悪いクラスタだから他人に距離を置かれたり敬遠されたりするのもわかるよなーと思う一方で、ハンターもハンターで、俳優として富を得て天狗になった典型的な嫌な奴なのでムースの言葉を一言も聞き入れないのはマジでクソ野郎だwこいつまじでファンのこと金ヅルくらいにしか思ってへんやろw
こんな感じで中盤まで見進めてもキモい奴と嫌な奴しか出てこない展開に、ちょっとスンスンする・・・・・・。リアちゃんが可愛くていい奴なのが唯一の救いだな・・・・・・。
・「ファンがいなければ、俺は無に等しい」を体現するオチ
あまりにハンターに邪険に扱われまくったムースは、愛着と執着と憎悪の感情がぐるぐるになって、いよいよ彼の家に侵入し、彼が寝ている間にロープで彼の身体をぐるぐる巻きにしてしまう。
恐怖と怒りの絶頂のハンターと、感情を処理しきれていないムースの会話の応酬(結構尺長い)。
そのやり取りの末、とうとうロープが解けたハンターはすかさず脇に置いていた猟銃で彼に向けて銃を放つ。その上ナイフもぶっ放つ。
片手がぶっ飛びなくなるムース。逃げ惑うムース。目がなくなるムース。血まみれムース。
と、そこで我に返ったハンターは彼の手当てをし、家から帰させる。程なくして警察がハンターの家に来てハンターはあっさりお縄になるのだった。
一方ムースは血まみれで道を歩いているところを、親友のリアに見つけられ、彼女と一緒にほっこりとしたおしゃべりをしながら病院に向かうというラストで終わる。
「ファンがいなければ、俺は無に等しい」。つまり、ファンをぞんざいに扱い、ファンに手をかけたが故に華々しいハリウッド俳優であるハンターという存在は無に帰したのだ。自分の言葉で自分を貶めるオチである。
ちなみにムースは1回目の家宅侵入の時に誤ってメイドをうっかり殺しちゃうんだけど、それもめでたくハンターのせいになることを示唆したラストだ。ハンターは一見ストーカー被害者のはずなのにメイドとファンに手をかけた犯罪者になってしまうという。
「熱狂が勝つ」という倒錯を描いた話でした。
・全体的に、単純化された映画なのかも
このファナティック、見ていてとてもシンプルな印象を受けた。
ムース=オタクででキモいピュアな奴
ハンター=他人を見下す嫌な奴
みたいな感じでキャラクターの性格が単純化されている点や、
冒頭の言葉で始まり、その言葉通りにストーリーを終わらす展開とか
あと、メイドの死に方は、とても古典的w
ダサいと感じる人もいるだろうが、見やすい一作と思う。
人の振り見て我が振り直せだね、誰に対しても分け隔てなく慈しみ深くいようと思いました・・・・・・。