いたずら好きなアルチンボルド
アルチンボルドはイタリア・ルネッサンス後期のマニエリスム期に活躍した画家です。
マニエリスムとは何ぞやと言いますと、ルネッサンス期の巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエルロたちが完成させた古典的様式を貴ぶ弟子たちによって、「ん、もう、こんなに完成された絵画の表現方法は後にも先にもないもんね!」とばかりに、巨匠たちが生み出した手法や様式を「マニエラ」と呼んで貴んだそうです。
その技法の表層に注目したのが「マニエリスム」ですが、残念なことに技巧に走りすぎて、後世で「型にはまった生気の欠けた作品」という評価を受けることになります。
英語の「マンネリズム」の語源となった言葉のようですね。
「マニエリスム」は、ルネッサンス期と後のバロック期に挟まれて、評価されにくい時代だったようです。
ところがどっこい、アルチンボルドはその素晴らしい技巧でもってマンネリどころか人々をあっと驚かせるような作品を描きました。
アルチンボルドと言えばこの作品、「四季」ですね。
豊かに芽吹く花や緑でかたどられた「春」
一斉に実る野菜や果物を詰め込んだ「夏」
木の実やキノコが訪れを感じさせる「秋」
数々の恵みを与え切って、じっと休眠期に入る「冬」
季節に合わせて、少年、青年、中年、老人と、人物の描き分けもされています。人の一生を見るような作品ですね。
ところで静物画というジャンルがありますが、ちょうどアルチンボルドが活躍した時代から本格的に描かれるようになったらしいのです。
でもアルチンボルドにかかると静物画でさえも↓
キッチンにありそうなバスケット。
上下をひっくり返すと豊かな頬を持つ男性の肖像画に。
この絵のモデルになった方は、コックさんだったのかな?なんて想像してしまいます。
ふっくらした頬とタラコ唇が、いかにも美食家を思わせます。
「司書」いかにも、そのままです。
アルチンボルドは教会のフレスコ画やタペストリーなども手掛けていたそうで、これらのだまし絵風の作品は、ご本人自身が楽しんで描いていたものなのかもしれません。