ファッションビジネスには収まらなかったマルジェラ
私がとても尊敬していて大好きなファッションデザイナー、マルタン・マルジェラ。
顔を出すことやインタビューを嫌い、名前と作品だけを人々の記憶に残したいと願ったデザイナーです。
その作品はとてもユニークで、既存のファッション概念を破壊していて実験的、攻撃的に見えて、服を創造することに対しての愛に溢れています。
「綺麗は汚い、汚いは綺麗」とも言える彼の独特の美意識で作られた服は、なかなか着るのが難しいのですが、実用的な着るための服を欲しくなる気持ちとは違った意味で所有欲というか、コレクション魂を揺さぶられます。
頑張って手に入れたマルジェラの作品。
シルクのロングシャツの襟もとを後ろ襟にまとめ付け、不思議なせむしのようなシルエットになる服。
婦人物を表す①のコレクションです。
ユーズド感にあふれるかなりなオーバーサイズシルエットのデニムのトップスのデティール。
セカンドラインのMM6のコレクションです。
同じくMM6のネックレス。
ボールチェーンにフロッキーで毛足のある加工を施しています。
同じくMM6のビッグなボールチェーンのブレスレット。
ボールの直径は1㎝近くあります。
同じくMM6のセパレートできるビッグなボールチェーンのロングネックレス。こちらもボールの直径が1㎝ぐらいあります。かなりの重量です。
ちょっと私のコレクション自慢をしてしまいましたが、ご覧いただいてお分かりの通り、「これ身に着けるの勇気がいるなぁ」っていう作品ばかりです。
私は「商売・仕事」としてファッション関係にいて長いのですが、マルジェラの作品(敢えて服と言わない)は、ビジネスを全く考えていなかった。生み出される作品は、アート作品だったのですね。
先日、映画「マルジェラが語る”マルタン・マルジェラ”」を観て、彼が語る言葉で彼の想いを聞きましたが、会社に大手の資本が入り、マルジェラはそれまでのアーティスト的な立場を奪われてしまった。
彼はとても自分がやりたいことに素直だった。きっとビジネスは彼のやりたいことでは無かったのです。
そしてデザイナーとしての”マルタン・マルジェラ”を終わらせて、本当の意味でのアーティストとしての活動を始めるのです。
未だにビジネスとしてのブランドは存続していて、私のコレクションは主にビジネスになってからの時代の物しか追い切れていないのですが、デザイナー(アーティスト)へのリスペクトは失われておらず、相変わらず難解なコンセプチュアルで作品ばかりなのはホッとします。