コピペ力のパラダイムシフトと筆者のコピペツール【Linux&Win】
はじめに
コピペ盗作、コピペ・プログラマーのように、ダメ人間の代名詞のように利用される「コピペ力」ですが、生成AIの登場によって、その意味が大きく変わるかもしれません。
AI活用インフルエンサーの実演
YouTube等でAI活用術を実演と共に発信されている方を見ていると、その大半がコピペ作業です。もちろん、今のAIツールがWeb上のプロンプトベースのサービスであるため、入出力のコピペが主となってしまうからですが、ChatGPT等のAI活用を「極めた」人の作業をみてると、それはそれで神業コピペで参考になります。
リアルな人間の成果物(著作物)を無許可でコピー・ペーストするのは悪徳であり、使い方によっては違法となるわけですが、AI利用の場合は、基本的にコピペが前提の作業になります。AIが出力した結果をさらに他のAIで利用する場合もコピペになります。
以前の記事で書いたように、高速タイピングによってAIとシンクロできた人がニュータイプになる(かも?)と同じ意味で、近い将来「AIの成果」=「AIを利用する人間の成果」となる事は確実なので、いかにAI成果物を効率よく素早くコピぺ活用できるかが、均一化されたAI性能の中でリアル人間の実力差になるのでしょう。
AI主流の時代になれば、情報や自分の意図を効率よくAIに伝え、その成果物を利用して自らの目的に合致させる能力が求められているのだと思います。
カッコ悪い言い方をすると、AIアシスタントという部下や外注業者の成果物をコピペしているだけとも言えますが。
コピー&ペースト術
コピペと言っても奥が深いです。技術と工夫がそれなりに必要です。
基本
コピーの基本は、マウスでテキストを選択して、右クリック→コピーまたは、Ctl+cが基本です。
ペーストの基本は右クリック+ペースト、Ctrl + v、Ctl + Shift + v(書式なし・Officeなど対応ソフトのみです。
コピー&ペースト管理ツール
最近はコピペ管理ツールが充実しています。Windowsだと「Win + v」で履歴を管理できます。画像コピーも履歴として保存され、OneDriveと紐つける事で、Windowsマシン間で履歴を共有できます。※ しかし共有機能はリアルタイムでなく失敗する事も多く、Microsoft品質なのであまり信頼できません。
筆者はLinuxデスクトップが主なので、CopyQ(Flatpak版)というソフトウェアを利用しています。その他よく使うプロンプトや定形フレーズなども登録しておく事ができます。
Linuxには(Primary Selection)と(Clipboard Selection)という2つのコピーバッファがあるのですが、ソフトウェアによっては厳密に区別して利用されておらず、使いにくいデメリットがあります。そのため、確実に利用したい時は、より高速に利用できる標準の日本語入力フレームワークであるfcitxの機能を利用しています。
※ Windowsの場合、書式なしのペーストは「ctl + shit + v」で出来ますが、Linuxのfcitxのペーストも書式なしペーストとして利用できます。
コピーできないテキストをコピーする
たとえば画像化されてしまっているテキストは通常の方法ではコピーできませんが、OCR手法を利用すればコピーできます。
また、メニュー部やスクリプトで動作するような選択できないテキストであっても、AI OCRを利用すれば問答無用でコピーできます。
Windowsでは「win + shift + s」+通知領域のsnipping toolを起動します。
Linuxなら下記事のような簡単な自作ツール(コマンド組み合わせ)で実現できます。
画像をコピーする
最近のOSであれば、基本機能として部分スクリーンショットが組み込まれているので、画面に映るものは何でもコピーできます。Windowsの場合は「Win + Shift + s」で部分スクリーンショットをコピーできます。
Linuxの場合は、OS標準のものよりも、Flameshotというソフトウェアの方が汎用性が高く便利です。
また、ライブ配信に利用されるOBSも、高機能なスクリーンショットとして利用できます。作業ビデオログ用途にも最適で、OCRと併用して文字情報への変換もできます。
画像ペースト(上級者向け)
応用として途中にデータ処理のスクリプトを挟む事で、様々な事が可能になります。
背景を削除するAIソフトウェアrembgやbg-removerを途中の処理に挟むと、背景を削除して画像処理ソフトウェアにペーストできます。(Linux)
音声データからコピーする(上級者向け)
音声データもOCRと同様にローカルAIを利用して、(登録しておけば)ショートカット一つで文字情報に変換できます。
デバイス間の同期・共有術
Windows標準
アカウントが同じWindows間で共有できます。ただしOneDriveと紐つける必要があり、結構失敗します。
Chrome + Join by joaoapps(有料Androidアプリ)
Google drive経由でほぼすべてのデバイスでコピー&ペスト共有が可能になります。筆者の経験では最も信頼できる(失敗しない)セキュアな方法でした。しかし、最近のChromeの仕様変更によって限定的な動作になってしまいました。自分で管理できない外部サービス・クラウドに頼るデメリットですね。
Google Keep(手動でコピーペースト)
恐らく最もメジャーで確実な手法だと思います。ほぼすべてのデバイスでKeepが使えるので、異なるデバイスでデータを転送する場合に利用できます。
QRコード(手動でコピーペースト)
ほとんどの場合Google Keepで事足りますが、オフラインデバイスや別アカウントデバイスへデータを転送する場合に重宝します。※ スキャナやカメラが無いと無理ですが
コピーしたデータをQRコードへ変換できるようにショートカットに登録しておくと便利です。
Linuxだと次のスクリプトで可能(LLM生成)です。あらかじめ、apt-get install xclip qrencode imagemagickが必要です。※ WindowsでもWSLにWSLg(WindowsでLinuxのGUIアプリを表示する技術)が導入されていれば利用可能です。
#!/bin/bash
# xclipでクリップボードの内容を取得
TEXT=$(xclip -selection clipboard -o 2>/dev/null)
# クリップボードが空か確認
if [ -z "$TEXT" ]; then
echo "クリップボードが空です。"
exit 1
fi
# QRコードを生成し、表示する
qrencode -o - "$TEXT" | display
その他Tips
右手だけでコピー&ペースト・ショートカットを利用した場合は「Ctl + Insert(コピー)」「Shift + Insert(ペースト)」です。
また、右手マウスで選択、左手で削除を行いたい場合は、cutショートカットの「Ctl + x」をdeleteの代用として利用するのも良く利用される方法です。
非人工知能コピーペースト(力技)
つまり人間力によるアナログな力技コピーペーストです。記号&数字を含めたタッチタイピングを極めると、エンコードされたランダムな記号羅列のURLであっても、目で読み取りながらキーボード入力でほぼ正確に入力できます。セキュリティなどの何らかの理由で、デジタルコピー手法が利用できない場合の最終手段です。
この力技の技術を極めると、今の時代でも意外に役に立っています。
まとめ
コピー&ペーストの話とは少し異なりますが、日本ではDX化が遅れているとよく批判されています。
しかし、予想外のAIの急速な性能向上により、データを(文字起こしが典型的ですが)デジタル化する必要が無くなってきているのではないでしょうか。
文字起こししなくても、画像そのままでも、紙であっても、書式やフォーマットが異なっても、リアルタイムでAIがデータとして処理してくる時代になろうとしています。むしろ、日本のように人間が直感的に信頼できる旧式アナログデータを多用する方が、膨大なデータと人間が共存する上で大きな利点になるのではと思います。人が扱うのはアナログデータで、デジタル化処理を挟まず、処理する時はそれをコピペ、AIに丸投げすればいいのです。
確かにデジタル化されたデータは機械にとって扱いやすいですが、人間にとっては何をしているのか分からなくなります。その結果犯罪に利用されたり、騙されたり、悪意のあるウイルスによって簡単に破壊されたり、直感的な状況判断などが難しくなったりします。
たとえば、家の玄関の鍵をかけると物理的に安全である事は直感的に理解できますが、公開・秘密鍵の仕組みがなぜ安全であるかと”直感的”に理解できる人は(情報業界にいない人にとっては)少ないと思います。
アナログデータを、デジタル世界でリアルタイム&直感的に利用できる目処が立ったのは、予想外のAIの急速な発達によって、この1,2年で起こった事です。
「大切なものは人間的でアナログ処理が大切」の日本的な考え方で、世界に先駆けて戦略を変更し、AIの力で時代に逆行(脱DX)する事こそ、実は時代遅れと言われる日本にしかできないやり方なのかもしれません。