東京ラブストーリーのリカの強さが美しく、悲しい
物語も終盤にさしかかりただただ悲しいだけの話になってきて、見るのが辛い。
もう何度も観ているので冷静な視点で見ているが、物語を追っているだけでは見えないものが今回は見えてきた。若い頃は「なんでおでん持ってくるんだよーー」と皆で騒いでいたが、感情的に観ていたら気付けないことがある。
柴門ふみ先生の原作は全く別ものだということを前提にして、このドラマ版東京ラブストーリーは決して実らない恋を追いかける健気な赤名リカをこれでもかと美しく悲しく描く話だと感じた。
めんどうくさい女ではあるが、明るく、知性もあり、素直そして一途。あれだけ自分のことを好きになってくれている女性を選ばない理由はないが、それ以上に大きな存在だった同級生のサトミ。そして言い過ぎかもしれないけど、高校時代の思い出の中に生きている哀れな男たち。
自分に素直に強く明るく前向きに生きている赤名リカ。唯一「東京」にふさわしい主人公だけが幸せになれないという悲しさ。ここら辺を整理して見ていくとかろうじて救いはあるように感じる。
オープニングテーマ中に一番最初に出てくる名前が赤名リカ / 鈴木保奈美
なのは彼女の芯の強い生き様を描きたいからだと僕は解釈した。
■おでんはあまり重要ではなかった
サトミがおでんを持ってくる回でも、もう明らかにカンチの心はリカにはない。好きではなく傷つけたくないという感情だけが伝わって来る。優柔不断だと断罪してもいいが、あの状況独特の葛藤が伝わって来る。どちらを選んでも悲しいという選択が人生に一度は、やってくるものだ。それは幸せを生み出すかわりに、悲しみも生み出すそれでも人は選ばなければいけない。
おでんを抜きにしても、もう勝てない恋だとはわかっていた。それでも待つしかないし、だからこそ余計にリカの気持ちが切なく、悲しく響きわたる。
■ハッピーエンドはあまり心に残らない
全ての創作物、物語にハッピーエンドを望む声が多数だと思うが、現実はそうじゃないことの方が圧倒的に多い。当時まだ23歳だったというのを最近知って驚いたがこの脚本家の坂元裕二さんはこの悲しい話から何を伝えたかったのか。
それは最終回のリカの手紙に全て凝縮されている。
「同じ季節に同じ道を歩けたことを愛してやみません」
恋愛で人と人が結びつくハッピーエンドを描きたいんじゃなくて、決して実らなくてもその過程でどれだけ人を大切にできるかを描きたかったんだと思う。
人間みんなわがままだから仕方ないにしても、あの苛酷な状況の中で本当に人を大切にしてるのってリカだけなような気がする。
もう僕も和賀部長と同じ年くらいのおっさんになり、恋愛がどーだ、人を好きだ嫌いだいう年齢ではないが、人を大切にするということを忘れてはいけないね。こういう時代だからこそ余計に。
そして鈴木保奈美さんと同じ時代を生きられたこと。
少しでも同じ東京で同じ空気を吸えたこと。
愛してやみません。