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プロダクトマネジメント視点でガンプラ制作を考える

ガンプラは、プロダクトマネジメントの視点を取り入れることで、より効果的な制作が可能になります。

本記事では、プロダクトマネジメントの考え方をガンプラ制作に適用する方法を解説します。具体的には、構想や設計、開発プロセス、品質管理など、プロダクトマネジメントの各ステップでの活用方法を紹介します。

さらに、ガンプラ制作における課題や解決策も取り上げ、より良い成果を得るためのアドバイスを提供します。プロダクトマネジメントに興味のあるガンプラ愛好家や、効率的な制作を目指す方にとって、必読の内容です。



1. プロダクトマネジメントとは

プロダクトマネジメントとは、製品やサービスのライフサイクル全体を管理し、その価値を最大化するためのプロセスです。主な役割は、市場のニーズを理解し、ユーザーの問題を解決する製品やサービスを提供することにあります。

概要

プロダクトマネジメントは、製品のアイデア創出から市場投入、成長、成熟、そして廃棄までの全プロセスを管理します。このプロセスには以下のようなステップが含まれます。

  • 市場調査:市場のニーズや競合状況を調査し、ユーザーが求める価値を明確にします。

  • 製品戦略:製品のビジョンや目標を設定し、戦略を立案します。

  • 製品開発:開発チームと連携して製品を設計・開発します。

  • マーケティングと販売:製品を市場に投入し、適切なマーケティング活動を行います。

  • フィードバックと改善:ユーザーのフィードバックを収集し、製品の改善を続けます。

プロジェクトマネジメントとの違い

PdMとPjMの比較表

趣味なので市場ニーズなどは直接関係ないですが、ある程度考慮した方がモチベーションを保てるため、その方法も含めて考えていきたいと思います。

なぜ、ガンプラはプロダクトマネジメントなのか?

1つのキットを作るのみであれば、それはプロジェクトマネジメントの一環と言えます。しかし、継続的に自分の技術を向上させながら、次々とモデルを仕上げていく流れに終わりはなく、現在モデル制作と次モデルの構想・調達を並走させていく必要があります。
また、コンテスト投稿を視野に入れる場合は目標日からの逆算で計画を立てるため、QCD(Quality Cost Delivery)視点も求められます。

必要なプロダクトマネジメント視点

その構図は、まさにプロダクトマネジメントであり、本記事はガンプラ制作の各工程と対比しながら、それらの共通点を確認していきます。


2. ガンプラ制作への応用

ガンプラ制作の基本

最も基本的な流れは、ご存じ「パーツを切り離して組み立てる」のみです。
初代ガンダムの最初期のキットはモナカ構造で接着剤が必要な世界でしたが、Zガンダム時代のキットから接着剤不要なスナップフィット(ダボと穴を合わせる)が出てきました。

ランナー(組立て前のパーツを保持する線)によって色が別れており、同一ランナーで複数の色を同時に射出成型する高度な技術も発達し、3D CADの普及も相まって現在は素組み(切り離して組み立てるだけ)でも驚くほどカッコいいモデルが出来上がります。

ガンプラ制作の基本

更に自己満足度合いを高めたいときは、部分的でも塗装や墨入れ(境界や窪みに線を入れる)を行うことが求められます。

ウェザリング(汚し処理)一つでも様々な手法(塗装剥げ、泥汚れ、被弾、焼け、摩耗…)があり、好みに合わせた方法を選択することになります。
以下の例は、地上戦を想定した砂埃による汚れを目指した例です。個人的には、そこまで汚しまくるのは好きではなく、立体感を持たせる程度のウェザリングが好みです。

その後、塗装やウェザリングを保護するため、トップコートを行います。私の場合、ウェザリングや墨入れの乗りをよくするためツヤ消しトップコートしてから処理を行い、最後に保管時の汚れを防止するため半光沢トップコートする流れに落ち着きました。
なお、ビームエフェクトなどクリアパーツに対しては個別に光沢トップコートをかけるようにしています。

ガンプラ制作の流れ

制作ツールには様々なタイプがあり、選ぶこと自体が非常に難しい問題もあります。ざっくり観点は以下の通りです:

  • ニッパーでストレスが大きく変わる(推奨:2000円クラス~ 片刃タイプ)※高価すぎると扱いがデリケートになるのでバランスが必要

  • 安すぎる筆は塗料の制御が難しい(推奨:1本 1000円前後)

  • 流し込み型の墨入れは意外と難しい(推奨:ペン、筆、シャーペン型)

  • 安いトップコートはムラや塗装剥げの原因(推奨:プレミアムタイプ)

  • クリアタイプの撮影台座は割れやすい(推奨:黒か白)

各工程の基本ツール

改造を含めた制作プロセス

ガンプラ制作は、そのプロセスが非常にクリエイティブであり、プロダクトマネジメントの観点から見ると非常に興味深いものとなります。ここでは、ガンプラ制作を改造を含めた流れで説明し、プロダクトマネジメントの視点からどのように価値を最大化できるかを解説します。

改造を含む工程の概要

1.改造の構想
ビジョンの設定:最終的なガンプラのデザインや改造の目標を明確にします。ユーザーニーズやトレンドをリサーチし、具体的な改造プランを立案します。

趣味なので深刻に考える必要はないですが、キャラクターやモビルスーツへの愛は明確なコンセプトへ繋がります。
例えば、以下のモデルは私のガンプラ復帰第1号ですが「もう弾切れを気にしないヘビーアームズ」を「陸戦型GNアームズ」で解決する、を目指したモデルです。(何故そのコンセプトになるのかは、新機動戦記ガンダムWの本編にて…)

作例:ガンダムヘビーアームズ・ヘルファイア

世間のニーズとしては、「武装マシマシ」「ガトリング」「分離合体変形」は全ガンダムシリーズを通して人気の高い要素なので、評価も得られやすく、モチベーションを高める効果を期待しました。※X(twitter)を見て、いいねが伸びやすい傾向を確認して着手
実際のところ、上記は鉄板ニーズであり、ヘビーアームズの人気も相まって、後の改造作品よりも一番ウケが良い(いいねが多い)結果となります。

2.パーツ調達
リソース管理:必要なパーツや素材をリストアップし、最適な供給元から調達します。品質とコストを考慮して、効率的にパーツを入手します。

昨今のガンプラ品薄問題で、想像以上に苦慮するのが調達面です。「あれとそれのキット同士を組み合わせたい!」と思っても、その場で手に入ることはまずありません。
以下の記事にあるように、自分の制作時(2022年頃)はその真っ只中で、現在もインバウンドの影響もあって厳しさが続いています。特定のパーツを狙っていても発売後1~2か月で大概のものは捌けてしまうため、思いついたときにストック(通称:積み)することになります。

ガンプラを思うように仕入れられなくなったのは4~5年前。新型コロナウイルスの感染拡大で自宅にいる時間が長くなり、「巣ごもり消費」が拡大し、プラモデル作りを楽しむ人が増えたようだ。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2406/19/news123.html

一方、ベースキットさえ確保してしまえば、構想に合わせたパーツは別の手段でも手に入ります。
サイズ感を合わせるのに多少苦慮しますが、コトブキヤのモデリングサポートグッズは心強い味方です。また、30 minutes missionはガンプラに比べて在庫回転率が長めなので助かります。

それでも手に入らないものは、ヤフオクで入手することもあります。パーツ単位で販売しているケースも多いので、非常に助かります。

3.仮組み・構想の詳細化
プロトタイプ作成:パーツを仮組みして全体の構成を確認します。初期段階での問題点を洗い出し、リスクを最小限に抑えます。

以下のケースは「変形するメリクリウス」を目指した例で、ベースであるメリクリウス(旧キット)に対して、30 minutes mission(30MM)で変形機構のあるエスポジットβ、30MMの支援メカ エグザビークル・エアファイターを組み合わせたらどうか?を検討するために仮組みしたものです。

変形するメリクリウスの素材検討

4.構想の詳細化
計画の具体化:素組み後に詳細な改造プランを再確認し、必要な修正を加えます。計画通りに進行するためのスケジュールやタスクを明確にします

仮組み状態で程よく分解し、正面視やシルエットの確認をしていきます。この時点で、プラネイトディフェンサー(丸い太鼓みたいな武装)が羽のように見えそう、クラッシュシールド(先端からビームサーベルが出るシールド)を前に構えることで戦闘機風にできそう、と分かり、30MM エグザビークル・エアファイター(戦闘機メカ)は使わずに別パーツで構成していこう、という方向性になりました。

必要な別パーツについては、追加で調達を開始することとなります。ガンダムベース、ヤフオク、量販店などを通じて、イメージに合うパーツを買い足します。

素組み状態での構想

5.加工・調整
技術的対応:改造箇所の加工やパーツの調整を行います。技術的な課題に対して柔軟に対応し、計画を微調整します。
リスク管理:制作過程で発生する可能性のあるリスクを予測し、事前に対策を講じます。問題が発生した場合には迅速に対応します。
品質管理:各工程で品質をチェックし、問題があれば修正を行います。最終的な品質が高い作品を目指します。

この工程が一番長く、厳しい戦いになりますが、構想が次第に形になって行く最も楽しい工程でもあります。あらゆる加工器具を駆使して、目標となるシルエットに近づけていきます。
機材も基本フローとは異なり、加工形態に対して様々なタイプの用意が必要となってきます。以下は、塗装工程も含めた追加機材の一例です。

加工を伴う制作に必要な追加機材

以下の例では、工程の最中にAGE2 ダークハウンドのドッズランサーをヤフオクで入手(確か200円くらい)できたことをきっかけに、AGE2のストライダー形態を目指すことが途中からクリアになりました。
追加調達したパーツは、ガンプラ公式の追加パーツ「ノンスケール MS強化ウイング01」や、モデリングサポートグッズの小さなダクトパーツなどです。その他、小改造のため、「ボールデンアームアームズ」や30MMの余剰パーツを加工して埋め込むなど、幾つかの工夫を加えています。
また、余ったランナーを加工して活用するのも定番の方法です。

加工と調整の繰り返し

6.下地(サーフェイサー)
塗装準備:全体にサーフェイサーを塗布し、塗装の準備を整えます。表面の状態を確認し、修正が必要な箇所を修正します。

パーツの色がバラバラのまま塗装をすると、隠ぺい力の低い塗装では透けて見えてしまう問題があります。そのため、下地の色を統一するためにサーフェイサーをエアブラシで吹きます。

サーフェイサーには加工傷を確認する目的もありますが、自分の場合はよほど問題が無い限りそのまま進めてウェザリングで辻褄を合わせていく方針です。(純粋に時間都合)

グレーサフ1000を適用した姿

7.塗装(筆塗り、エアブラシ含む)
塗装進行管理:筆塗りやエアブラシを使って色を塗ります。都度進捗を管理し、塗装が計画通りに進行しているかをチェックします。
リスク管理:制作過程で発生する可能性のあるリスクを予測し、事前に対策を講じます。問題が発生した場合には迅速に対応します。

塗装ではリスク管理が非常に重要です。色や塗料の状態を確認しつつ、最適な順番で塗装することが必要となります。例えば、以下のような注意点があります。

  • マスキングテープ浮きによる塗料の回り込み →多重で塞ぐ

  • 濃い色の塗りミスによるリカバリが大変 →濃い色から塗る

  • マスキングテープ剝離時の塗装剥がれ →耐性が高い塗料から塗る

  • うすめ液配合ミスによる塗装不良 →大面積の塗る前の入念なチェック

  • …等

上記のようなリスク回避のため、裏面を黒鉄色、フレームによく使う赤鉄色のメタリック塗装を先に筆塗りし、色つき塗料を塗り、はみ出た分を修正した後にガンダムホワイト(僅かにグレーがかった白色)をエアブラシで吹く、といった流れを基本としています。
ガンダムマーカーエアブラシも併用していますが、定着が弱めなので多少高めのマステを使うことで、リスクマネジメントをします。

塗装の過程と簡易ブース(ただの箱)の様子

昨今は充電式エアブラシの登場で圧倒的に身近な存在となっています。四半世紀前の大きく高価なコンプレッサーしかイメージなかった私は、その手軽さと安さを知って心躍りました。一方、多種多様で何を選ぶか非常に難しくもあります。
私の場合、出力の口コミ、広めの口径0.4mmの観点で選びました。また、真鍮線を調整してガンダムマーカーエアブラシにも対応させていますが、モデルによっては専用の対応部品を売っているので、それを選ぶのも楽です。


8.墨入れ
ディテール強調:ディテールを強調するための墨入れを行います。微調整を行い、完成度を高めます。

旧キットの場合は墨入れの効果が露骨に現れます。窪んだ箇所は黒で埋めたり、ディティールが彫ってある箇所には積極的に埋めていくのが良いです。
最新キットでも、本工程の有無で全く印象が変わるため、素組みでも必ず実施したい処理となります。

また、塗装がはみ出した箇所は墨入れで隠すことができるため、塗装の境界をスジボリ(ニードルを使って彫り込む)を追加することによって、リスクマネジメントができます。

旧キットに墨入れした状態

9.ウェザリング
使用感の表現:モデルに使用感を出すためのウェザリングを施します。作品にリアリティと深みを加えます。

墨入れだけでも満足度は高いですが、キットのイメージに合った汚し処理を行うことで、リアルさがアップします。地上用であれば砂埃やサビ、宇宙用であれば金属のススなど。運用場面と異なるウェザリングをするとツッコミがくるかもしれません。

ウェザリングの前後比較

私の場合、タミヤのウェザリングマスターと、リアルタッチマーカーを愛用しています。つや消しのトップコートを吹いた後はつきやすくなるので、墨入れシャープペンと一緒に対応するのもおすすめです。

ウェザリングは多様な手法があるため、突き詰めようとすると(塗装と同じく)非常に深い沼が待っています。

10.トップコート
最終仕上げ:最後にトップコートを施し、塗装を保護します。工程の最終仕上げを完了します。

トップコートによって保管時の傷やホコリから守ることができます。代表的な3種類の用途は以下の通り:

つや消し:マットでプラスチック感がなくなるためリアル表現派に人気。ザラザラ触感。
半光沢:ツヤはないがマットでもないサラサラ触感。バランスが良く保管に最適。
光沢:キャンディ塗装などツヤを売りにする場合に使用。ツルツル触感で指紋注意。

ディスプレイブースがあるならつや消しや光沢が良いものの、しまったり出したりポージングを楽しむなら半光沢がおすすめです。作数が多くなければ、粒子の細かいプレミアムタイプで失敗を防止しましょう。


11.撮影
魅力的なプレゼンテーション:完成したガンプラを撮影し、作品の魅力を最大限に引き出します。

アクションベースと撮影ブースを用意し、できれば良いカメラとレンズで作品を撮影します。たかが撮影、されど撮影。満足いくカットを撮るには丸1日分の工程を消費することもあります。アクションベースは様々なタイプがありますが、撮影背景に溶け込むか、本体フレーム色に合ったものだと後の処理もしやすいです。

単体でブース撮影するなら、レンズの焦点距離はポートレートと同程度、標準から中望遠50-85mm程度がよい塩梅と思います。私はまだα6000と18-200mmを使っていますが、本当はもっと最短撮影距離が短く明るいレンズにしたい気持ちではあります。

それとなくアクションベースの軸を目立ちにくいように消したケースがこちら。Photoshop Express(無料)のノイズ除去で適当に対応しましたが、自己満足には十分なのでそこまで突き詰めてはいません。
また、Adobe Express(無料)等で綺麗なフォントの文字を入れて投稿時の見出し画像を作成すれば、より満足感が高くなります。

アクションベースの軸を消す対応例

12.発信
マーケティングとコミュニケーション:ガンスタやX(twitter)などのSNSで作品を発信し、ターゲットオーディエンスに対して効果的にアピールします。フィードバックを収集し、次回のプロダクトに活かします。

ガンスタ(GUNSTA)は、ガンプラ作りにとってのデファクトスタンダードなSNSです。構成は人それぞれですが、私は以下の要素で作成しています。

  • 扉絵

  • 各形態の説明

  • パーツ分解図

  • 制作過程

  • 構成パーツ

常時何らかのコンテストを開催しているので、気になるテーマが出てきたらそれを目指して制作するのも良いでしょう。何ヶ月か事前に告知されるため、調達や制作のスケジュールが立てやすいのも嬉しい配慮です。

また、X(Twitter)では、制作過程を都度アップしていきました。制作過程でも数十から百程度のいいねがつき、フォロー/フォローバックのきっかけになります。満を持しての完成作品投稿では、スレッドに各形態を投げ込んで盛り上げていきます。
私の場合は地道な投稿を続けて1年強、当時最大4800フォロワーまでのびていきました。
※その後、転職を境に制作は休止状態で、4600まで減少した状況。

機会があれば、当時のTwitter運用方法について記事にしたいと思います。なお、Xになっても本質はあまり変わらない様子です。
API課金となったことで、無料の分析ツールが無くなってしまったのは口惜しい限りですが…


3. まとめ

以上のように、ガンプラ制作のプロセスをプロダクトマネジメントの視点で見ると、各工程が一貫した戦略と計画に基づいて進行することが重要と分かります。
また、リスク管理や品質管理を含め、SNSでの発信を通じてフィードバックを得ることで、制作プロセスを次回に活かし、価値を最大化することができます。

ガンプラ制作は、もはや単なる趣味の領域を超え、しっかりとしたマネジメントを通じて大きな成果(自己満足)を獲得できる生産的活動です。
そして、プロダクトマネジメントを実践的に学べる、素晴らしい題材と言えるでしょう。

ガンプラ制作をする理由

※本記事は、真面目風に書いたジョークです。お付き合いありがとうございました🙇


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