鉄道オタクの浪漫、JRカード
世の中には数多のクレジットカードが存在しますが、このインターネット全盛期において、公式HPもインターネット申込も存在しない、挙句の果てにはGoogle検索で正しい情報が全然出てこないカードが中にはあります。今回取り上げるJRカードです。
この記事は3,590文字、約6分で読めます。
JRカードとは
JRグループ6社が共同で発行するクレジットカードです。年会費が1,375円かかります。リボ払いに設定すれば年会費は避けられますが。
公式HPも存在せずGoogle検索にかけると4つ目にWikipediaがヒットする程度で、VIEWカードやJ-WESTカードなどの関係ない情報ばかり出てくる、というとんでもないカードとなっています。
現在、公式に案内がなされているのは交通新聞社が発行するJR時刻表のみという状況。既に販売が終了したオレンジカードと並んで書かれています…
申し込み
こんなカード、なかなかありません。前々から気になっていたのですが、ようやくクレジットカードを発行できる年齢になったので作ってみることにしました。JR時刻表によると新規会員を行っているのは三井住友カードのみとのこと。さて、じゃあ申し込むか!とサイトへ行くと…
そうなんです、JRカードはインターネット申込を受け付けていません。申し込むためには三井住友カードの入会案内デスク (0120-816-437) に電話をかけてパンフレットを取り寄せる必要があります。JR時刻表にも電話番号が書かれていますが、ここに電話をかけても新規入会はできません。三井住友カード会員向けの番号につながるだけです。
このご時世、電話で申し込むなんて希少人種なので、コールセンターのお姉さんはJRカードと言ったらすぐに理解していただけました。ただどうも他のカードと勘違いしてしまうコールセンターの方も中にはいらっしゃるみたいです。
2024.10.3 追記
なんと、JRカードがインターネット申し込みに対応しました!🎉
三井住友カードは一体何がしたいんだろう…?
以上追記終わり
パンフレット
と、言うわけでパンフレットが送られてきました。その表紙はなんと400系。とっくに博物館入りしているし、なんなら2世代後のE8系が登場したというのにまだまだ現役です。しかも、このパンフレットは法改正対応のために2020年に印刷されたものなのです。
いざ、同封されていた申込書を記入していきます。書いている途中に気がついたのですが、そこには学生不可の文字が。しかし、なぜか学生の欄が存在していたのでもうチェックマークを打ってしまいました。どうしよう…
仕方がないので、パート・バイトの欄にもチェックを入れてバイト先を記入してごまかすことにしました。その他諸々の情報を記入してポストに投函。審査が通ると良いのですが。
カード
申込書をポストに投函してから8日ぐらいたった後に、SMCCの方から学生さんですか?と確認の電話がかかってきました。やらかしたかなぁ、と思いつつも嘘を言うわけにもいかないので正直に大学名を答えておきました。
そうしていたらなんと、Vpassの案内ハガキが届きました。これは通ったのでは?!と思いつつも、しばらく待っていると先日ついにカードが届きました!ちなみにJRカードにはMastercardもありますが、今回はVISAを選びました。特に理由はありません。
券面のデザインはは未だパルテノン神殿。しかしながら、エンボスレスでタッチ決済対応です。さんざん時代遅れだと書いてきましたが、一部ではちゃんと進化しているようです。
裏面にはJRグループ各社の社名がズラリ。流石は共同発行のカードだけあります。ちゃんと鉄道の鉄の字が「鉃」になっているのも高ポイント。
※JR各社はJR四国を除いて、正式名称に金を失うと書く鉄の字ではなく、金偏に矢と書く鉃の字を用いています。借金によって事実上の倒産に陥った国鉄の二の舞いにならないよう、ゲン担ぎです。
スマホにも登録してみました。カードのデザインが存在しないのか、Google Pay上では極めてシンプルなデザインと三井住友カードの文字のみ。JRカードっぽさはありません。残念。
JRカードのメリット・デメリット
ではJRカードのメリットってなんでしょうか。
1. JRホテルが10%OFF
事前に予約した上で、チェックインの際にカードを提示すればJRホテルグループに10%引きで宿泊できます。
ちなみに、JRホテルは駅直結ではあるものの全体的に宿泊料金が高めで、旅行会社サイト経由で予約したほうが安いことが多いです。しかも、あまり知られていませんが当日有効な青春18きっぷを持っていれば事前予約の上でJRホテルに大体10%引きで宿泊できます。
2. 全国の駅レンタカーで基本料金10%引き
全国の駅レンタカーを基本料金の10%引きで利用可能です。ちなみに、駅レンプランの方が安いことが多いです。
え、これだけ…という感じです。かつてはこのカードで購入した場合のみ、全国のJR駅で払い戻しが可能だったのですが、2020年4月より他のカードでも可能となったようです。
また以前は「クレジット」とこのカード独自の印字がきっぷを購入した際になされていたのですが、こちらも同様に2020年3月に廃止となりました(以下のプレスリリースを参照)。
このクレジットの印字はクレカに興味を持ち始めた高校生の頃に知ったのですが、クレカを手に入れられる年齢になる前に消えてしまいました。JRカードに憧れをもつ原因になったものなので、消えてしまってとても残念です。
ちなみに、他にポイントが貯まりやすいなどのメリットがあるわけでもなく (三井住友カードの場合Vポイントが200円につき1ポイント付与されます。還元率0.5%です) 、なんなら年会費もかかります。わざわざ持つ理由が見当たりません。
一体なぜこんなカードが?
一体なぜこんなカードが存在しているのでしょう。
JRカードはJRグループの前身である国鉄が発行していたJNRカードを起源とし、元々は窓口で唯一使用可能なカードでした。しかしながら2000年前後にJR各社が国際ブランドの一般カードに対応したことによって、このメリットが失われることになりました。
さらにJRグループ共同発行というのも足かせになります。1987年の分割民営化後、JR東日本は1993年から自社ハウスカードである「ビューカード」の発行を開始します。共同発行よりも自社発行の方がJR東日本にとってはメリットが大きいため、ポイント優遇やモバイルSuica、えきねっとなどと合わせて大々的なキャンペーンを打ちカードを広げていきました。JR西日本の「J-WESTカード」、JR東海の「JR東海エクスプレス・カード」、JR九州の「JQカード」など他のJR各社も同様の姿勢でした。
結果として、JR各社にとってあまりメリットがないJRカードは利便性の向上がなされることもなく、いわば国鉄時代の状態のまま放置され続けることになりました。この時代と前後してインターネットが爆発的に普及したものの、JRカードがこのインターネットに対応することはありませんでした。
JRカードの今後
今後JRカードはどのような道を歩むのでしょうか。先にも述べた事情からサービスが縮小することはあれど、サービス拡大に踏み切ることはほぼ無いでしょう。
しかしながら、一鉄道オタクとしてはシンプルな名称であり、歴史あるカードとしてJRカードに憧れてしまい、それを捨てきることができず今回の発行となりました。少しでもサービスが継続されることを願うばかりです。
記事内の写真は特記のない限り筆者が撮影。