見出し画像

ムの中のユウ

夜になるといつも思っていた。
「たすけて」
空へ手を伸ばしてもいつも、
空っぽだった。
感情は奥に沈めて、
流れ来る周囲の感情を巡らすだけ。
空は優しくて遠く見えた。
すり減っていく自分に気付いた時には、
苦しい言葉の檻の中にいた。
雲を掴むように伝えた気持ちは
待てど暮らせどすり減る自分と
笑うことを忘れた自分しか見えなかった。
変わらないと思っていたすり減る毎日は
変化をみせる。
焦ることもないような速さで今までは
許されなかったことを許されて当たり前と
笑う温かい陽を見た。
力強く温かい陽は優しくて。
力強く温かい陽は遠くて。
また有りもしない空に手を伸ばしている。
味わい尽くし、その先にあるのは…
穏やかな安らぎ。
虚しさと悲しみを内包した安らぎ。
其処には喜びがあり、温かく限りないものが
感じられた。

まだ不完全がゆえの軽やかな戸惑い。
ただの心の機微に過ぎない。
至るまで、味わったその先を歩む。

歩む中で、張り裂けてしまったものを見て
ふと気付く。
どう解釈し、向き合い、受け止めるかは
この心次第。
ならば、しっかりとこの瞬間を
かみしめてみる。
辛くともかまわない。
つらくなくなるから。
たったひとつだけ…そう思っていたことを
離すだけで安らかさが訪れること。
離して放すことの安らぎが溢れる。
力を入れる必要などなく
ただある様に受け止めることは
難しいようでそうではないと。

いいなと思ったら応援しよう!