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沙羅双樹の花の聲〜心象風景〜

空を見た。
見ることを許されなかった空を。
洞のように空いた目では見えなかった空を。
心に残っていた空を思い描いては
見ていたあの時。
何も赦されず気付けばただ独りだった。
何もない石室の外は、ただ大地が広がり
空があった。
洞だった筈のこの目からは赤い涙が流れ
声にならない嗚咽を漏らす。
誰もいない大地で。
誰が出してくれたのかわからないまま、
彷徨い歩いて、知らなかった時の流れに
また、この目は何も映さなくなる。
ただ、見えるのは変わらぬ石室から
見ていた心象風景。
知ることは、覚悟を伴い、
知らなかった時とは違う思いが
波のように寄せては返す。
…そんな沙羅双樹の花の声が聴こえる。

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