たとえば…大切な
たとえば、風と遊ぶ芒の穂先
たとえば、古の足跡の水の傍
たとえば、夜空を輝かせる月と星
たとえば、陽光に照らし返す海原
そういったことを、美しいと思う感情
捨てようとした自分。
これは大切なものなんだと、
そして、自分だけのもののようで
そうではないものだった。
外からきたそんな感情にそっと手を握り返し、
笑顔で手を離していこうと思う。
涙が溢れる時に握る手の温もりが
此処に居ることを許してくれているようで。
ただ、此の我が奥底に眠る……は
未だあるまま。
それすらも自分といこうか。