作り話 〜季節巡り〜弐拾壱
「わたしは…こうしておかしな者と
揶揄され、ここに隠れるようにまた
こうして生きなければならぬのです。
しかし、それはわたしが自ら望んだこと…
そう…すべては自分次第ということ…
わかっております。哀しくそして…。
いいえ、ここから先のことは言わずにおきましょう。おかしな者となっても、まだ、まだ
わたしは生きているのですから…」
悲しみと笑いの混ざった涙がひとすじ頬を
流れる。
「何故…泣く?」
鳥居の上の者は、苛立つように言う。
「貴方様には、わからぬことにございます。
ヒトの苦しみなど、日々生きることの…、
哀しみを、喜びを…。ヒトは、そうして
生きているに過ぎぬことを…。貴方様に
とっては、ヒトの…など些細な…いいえ、
この先は言わずにおきましょう。
失礼を致しました。」
そういうと、あの者は、
「ヒト如きがっ…!!」
と怒りに満ちた表情で言い放つ。
「お前は…」
と、言いかけて止めたその者は、冷静さを
取り戻した様だった。
「貴方様も、ずっとお知りになりたい
ことがあるのでしょう。それ故に、
私のような者に出会っては、苦しまれている。しかし、それは……に……苦しみ…。
貴方様も、苦しまれている、と私には
思えて仕方ないのです…
わたしは、やがておかしな者として生を
終えるでしょう。しかし、それは貴方様からすれば、短きヒトの生が終わっただけのことに
ございますから…」
と、あの者をまっすぐに見て言う。
気付けば、あれほど晴れ渡っていた空は
曇天となり、稲妻が走る。
あの者は、怒りに満ちた表情をする。
「お前はっ…!お前など…!!」
とあの者が言う。
黙って見ていた狼がポツリという…
✿*続く✿*
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