作り話 ~季節巡り~参
雨の降る社殿までの道を歩く。
鳥居の向こう側に大きな狼がいる。
雨に濡れた身体を一振るいし、
こちらを見ている。
目が合った瞬間に目の前の景色が変わる。
「ここは…」
と呟く。
そこは一面、銀色の空に海も銀色に反射している。
「あなたは誰?何故ここへ?」
目に映る景色にそんな疑問はかき消されていく。
眩しく銀色に温かな光を照らし出している。
ひとつの記憶が浮かぶ。
…顔を布で隠した人が様々な地点に立つ。
その人々は色布を纏い、黙って立っている。
何かの儀式の様だ‥
様々な感情が去来する。
一人の女性が風と共に泣いている…
ここまでで、現実に引き戻される。
その大きな狼は何か言っているが
聴こえず姿を消してしまう。
すると鳥居の上にいる者の声が聴こえてくる。
「見てきたのか。お前は何だ?おもしろいな」
その者の言葉に弾かれるように答える。
「見ての通り、只のヒトでございます」
お辞儀をしながら答えるわたしにその者は
笑いながら言う。
「そうだったな」
鳥居の上を見上げると…
𑁍܀続く𑁍܀
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