出張ワインセミナー「栽培・醸造・熟成による味わいの変化」開催後記
先日は飯田橋のワインバー蓮さんにご依頼頂いての出張ワインセミナー。事前にどんなテーマでのセミナーかのご要望をお聞きしてのオーダーメイドのセミナーでした。
今回は樽やタンクなどで味わいに違いがどう出るかなどについて知りたいというオーダーだったので、栽培から熟成までのどのような条件下で、どのように味わいが変わるかを、変化の大きいものについて4パートに分けて解説。
要は栽培については生産地の気温、醸造については発酵温度、熟成については大樽と小樽、古樽と新樽によって、酸味、果実味、渋味、旨味などがどう変化するかをまるっと解説。
ちなみにこの内容、カジュアルワインゼミでいうとチャレンジコース(中級講座)のレベルの話しで、なかなかワインスクールでもここまで突っ込んだ話はしないレベル。(苦笑)
座学の後はテイスティングでの実証。
今回のリストはこんな感じ、もちろんすべてブラインド。
Sample-1 White Wine
Smoking Loon Unoaked Chardonnay2022
スモーキング・ルーン アンオークド シャルドネ
生産地:アメリカ/カリフォルニア州
品種:シャルドネ(樽熟無し)
Sample-2 White Wine
Smoking Loon Chardonnay California 2021
スモーキング・ルーン シャルドネ カリフォルニア
生産地:アメリカ/カリフォルニア州
品種:シャルドネ(樽熟5か月/新樽20%)
Sample-3 White Wine
Hahn Chardonnay SLH Santa Lucia Highlands2019
ハーン シャルドネ SLH サンタ・ルシア・ハイランド
生産地:アメリカ/カリフォルニア州
品種:シャルドネ(樽熟11か月/新樽30%)
Sample-4 Red Wine
Josh Cellars Pinot Noir 2022
ジョッシュ・セラーズ ピノ・ノワール
生産地:アメリカ/カリフォルニア州
品種:ピノ・ノワール(樽熟12か月/タンク併用)
Sample-5 Red Wine
Folium Vineyard Pinot Noir Marlborough 2022
フォリウム・ヴィンヤード ピノ・ノワール マールボロ
生産地:ニュージーランド/マールボロ地区
品種:ピノ・ノワール(樽熟11か月/新樽10%)
Sample-6 Red Wine
Les Terres de Philéandre Marsannay Rouge 2020
レ・テール・ド・フィレアンドレ マルサネ・ルージュ
生産地:フランス/ブルゴーニュ地方
品種:ピノ・ノワール(樽熟13か月/新樽30%)
今回のテイスティングは栽培から熟成までのタイプ違いの比較試飲なので、白はシャルドネ、赤はピノ・ノワールに統一、こういう比較試飲の場合、比較すべきポイント以外はイコールコンディションにするのが重要。
セット1はカリフォルニアのスモーキング・ルーンの樽熟有りと樽熟無しの比較。
いずれも温暖地のシャルドネのステンレスタンクによる低温発酵なので、アタックから華やかな果実味、とはいえ樽熟成による酸のへたりが無い分、アンオークの方が果実味が強く酸味もシャープに出る。
この比較のポイントは樽熟成による酸味の減少と、樽からの抽出による複雑味が加わった際の余韻の長さ。
セット2は前記の樽熟成ありのスモーキング・ルートとハーンのプレステージのシャルドネSLHの比較。
この比較試飲のポイントは新樽率が近い条件下で樽熟成期間の長さの違いの影響を見る比較。元々ハーンはカリフォルニアでも派手な果実味を演出するワインなので、アタックからかなりのインパクトのある味わいで、明らかに旨味のスケールが違う。
これは樽熟成の長さというより格(価格)の違いによるもの、スモーキング・ルーンが小売2,000円程度に対しハーンは小売6,000円程度なので旨味の違いはハッキリと出る、さらにその旨味とバランスさせる為に樽熟成に時間をかけただけあって余韻が非常に長く、樽熟成強めのワインによくあるカルピスを飲んだ後と同じの口中に残る違和感(固まり)が感じられる。
セット3はカリフォルニアのジョシュ・セラーズとニュージーランドのフォリウムの比較。
こちらは新樽率低めの同程度の樽熟成期間の物で、むしろ栽培における気温や日照によるスタイルの違いを見ていくテイスティング。
ジョシュ・セラーズは色も濃く、日照量の多いカリフォルニアの特徴をよく表していて酸味も弱め、フォリウムは冷涼な気候を示す淡い色あいとシャープな酸味、ただ樽の強さが前面に出ていて若干樽負けの印象を感じた。
いずれにしろ生産地の特徴が感じられるセットになった。
セット4は前記2本とブルゴーニュの実力派生産者ダヴィド・デュヴァンのネゴシアン、レ・テール・ド・フィレアンドレのマルサネ・ルージュとの比較。
こちらも樽熟成の期間はほぼ同じながら新樽率がやや高めのピノ・ノワール、近年のブルゴーニュの若手生産者が好む、モダンスタイルを連想させる濃い目の色合いで、グリーンタンニンのニュアンスが非常に少ない、除梗率の高さを感じさせるピノ・ノワール。
気候的にはニュージーより冷涼で日照量は少ないにも関わらず、ヴィンテージや生産者のスタイルでフォリウムとは大きな違いがあり、むしろジョシュ・セラーズに近い印象。
これは大量生産のネゴシアンブランドで、グローバルなマーケットに売っていこうとすれば当然の戦略だし、そこにブルゴーニュらしさはある意味必要ないと感じられてしまう。(涙)
オーダー頂いてのセミナーとは言え、なかなか凝ったテイスティングになったのではと思います。テーマに沿ったワインのセレクトこそが、実はこの仕事をしていく上での最大のノウハウ、喋りの美味さは努力でなんとでもなります。(笑)
セミナー後は参加者の皆さんと懇親会、蓮さんのいつもながらの素敵な料理を頂きながら、全方向からの質問にお答えさせて頂きました。
次回開催のリクエストも頂いていてうれしい限りでございます。
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