鬼ノ城 ~闇の登山~
岡山といえば桃太郎ゆかりの地
さすがはゆかりの地。しかし実は桃太郎伝説は全国にあり、発祥は不明。ゆかりの地も全国にある。
しかしその中でも岡山が群を抜いて有力地とされ、『「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま』として日本遺産に認定されてる。
国公認のゆかりの地だ。
その大きな根拠、それは鬼ノ城。
桃太郎の鬼、そのモデルとされてる温羅の住処。一説には「ここが鬼ヶ島じゃん?」と噂されてる。
さてその鬼ノ城、古代に造られた山城であり、造られたのは多分7世紀。
多分。
そう、多分。
実はこの城、何の前触れもなく急に史跡として現れたのだ。
663年に起こった白村江の戦い、その後に防衛目的の山城をいくつか造ってるから、「ここもそうじゃん?」的な解釈。
実はこの頃の古代山城のいくつかは鬼ノ城みたいに歴史書に痕跡が無いパターンがあり、神籠石式山城と呼ばれてる。
そして神籠石との呼び方、何故そう呼ぶようになったのか、神籠石の本来の意味、よく分かってない。
つまりざっくり言うと、古代のロマンが溢れてる城。
さて前置きが長くなったが、前回の備中松山城と一緒に鬼ノ城も。
18切符の旅なので普通電車しか使えない。
それは帰りの時間。
岡山から東京なので、午前の電車に乗らないと詰む。
しかし鬼ノ城の史跡も見たいし、資料館も見たい…。
じゃあどうしよう?
そうだ、始発で行こう。
『始発で最寄り駅、資料館の開館まで史跡見学、開館直後に資料館へ行けば…』
と頭の中では完璧な計画を組み立て、岡山駅から最寄り駅となる総社駅へ。
日の出は始発の少し前、仮に時間が前後しても最寄り駅に着く頃には夜は明けている!
真っ暗じゃないか!
夜が明けるどころか薄明ですらない。闇そのものだ。
しかし今回は予めタクシーを手配してあるし、深夜帯でもない。
駅から登山道まで数キロ、タクシーで向かう間に夜は明けている!
真っ暗じゃないか!
タクシーの窓からの景色がいつまでも闇だから予感はしてたんだよ!
前方は登山道なので山、そして厄介なことに後方は木々が不気味に生い茂る森。
前方も後方も恐怖。前門の虎後門の狼とはこのことだ、多分。
しかし立ち止まってる訳にはいかない。
風のざわめきと木々の揺らぎ、立ち止まってこれを聞いてるだけでも充分に恐怖。少しでも歩いてた方が気が紛れる、と暗闇の登山道へ。
最初は恐る恐るだったが目が闇に慣れたのか徐々に明るんできたのか、いつの間にか歩くスピードは普段通りに。
そして生息してる動物も起き出したのだろう。
この獣道の奥から「グルルル…」と獣のうめき声が聞こえる。
「多分アレだ、空耳だ」そう思いつつ、歩くスピードは普段よりも速くなった。
夜が完全に明けたが人の気配は無い、山の中だから当たり前である。
代わりに獣の気配はそこそこある。
道に落ちてたちょうどいい硬さの木の棒、多分ひのきのぼうを装備。
ちょくちょく殺気を感じたので歩みを止めて臨戦態勢へ、それが薄れると歩みを再開…城巡りに来ただけで、戦いに来たわけではないんだけど…。
ひのきのぼうでは心許無い、銅のつるぎでも装備したい…。
そう警戒しながら歩むこと数分、
到着!
ここまで来れば獣の気配は無くなったのだが、
メイン部分までの距離はまだある。
ちょいキツイな。
肉体的には疲れてなくても精神的に疲れる。
意外とすんなり着いた。
獣への警戒をしなくなって良くなった分、足取りが軽くなったのだろうか。
どこを見ても古代の趣きがある。
朝霧もあってか、まるでファンタジーの世界に迷い込んだみたいだ。
いや岡山だから桃太郎の世界と言った方がいいな。
まるで桃太郎の世界に迷い込んだみたいだ。
これでイヌサルキジがいれば完全に桃太郎。
…いや、イヌとサルは多分いたな。
道中で殺気を振り撒いてたのは多分それだ。
この奥もまだ続くが、奥の生い茂る緑からまたしても獣の気配。
向こうも気づいたのか、殺気を放ってくる。
更に事態は悪く、なんとひのきのぼうを捨ててしまったのだ。
山頂で獣の気配が無くなったし帰りはタクシーを呼ぼうと決めてたから、もう用は無いと確信してたのだ。
さて…
▷戦う
きびだんごを調達する
逃げる
これは迷うまでも無い、午前中の電車に間に合わなければ詰むのだ。
資料館を見るのも残ってるのだ。
戦う
きびだんごを調達する
▷逃げる
『逃げる』の一択しかない。