白ソーセージ(Weißwurst)の魅力にはさからえないのだ
ベルリナーはバイエルンが大嫌いである。南ドイツの鼻がかかった感じ、尊大な雰囲気、皮のパンツとあの帽子を見ると「ウゲーッ、最ッアク」と顔をしかめる。
特に今、ベルリンの数少ない住宅がお金持ちのバーバリアンに買い占められて、かつて東西ドイツ統一後のベルリンの自由なパーティーライフの代名詞だったプランツラウラーベルグ(旧東側)はシュバビロンと呼ばれ、南ドイツ出身のヤングペアレンツがパパやママに買ってもらったアパートに軍団で引っ越して、ひとつの村化している。ベビーカーと子供服とプレママとカフェの街。これらがベルリンの家賃を引き上げ、あの昔あった可愛らしいカフェや雑貨屋さんなんかはミュンヘン化して綺麗さっぱり無くなってしまっている。ちなみに日本人にプレンツラウアーベルグは超人気地域。小綺麗なんです。しかしベルリナーにとってはなんといってもこの小綺麗さこそがババリア的でとにかくさっさとババリアに荷物をまとめて帰ってもらいたい目の上のタンコブなのだ。
しかし、そんなベルリナーも「眉毛がヒクッと上がり目がキラキラする」時がある。それはババリアのビールとヴァイスブルスト(白ソーセージ)の名が出て来た時である。
「どうせソーセージはソーセージでしょ?」と思うことなかれ。この白ソーセージはほかのソーセージと違い、フワッとしていて、食べ心地が軽く、しかも白ソーセージ専用の甘いマスタードとモチモチのクヌーデルというじゃがいもの団子を添えて食べるのだ。色合いといい、見た目といい、食欲が止まらない。
ちなみに朝、大きな鍋に水を沸かし出したら「ゆで卵かヴァイスブルストか」ということになる。ホカホカのソーセージにちょこっと切れ目を入れて皮を剥くか、バーバリアン風にそのまま端から中身を食べるかは自由。コーヒーの代わりにもうビールを朝から飲んじゃうのもいい。
そういえば、ドイツ料理ってどうせソーセージでしょ?豚肉でしょ?みたいな印象が多いけど、いや、そうなんだけど、ソーセージやお肉料理と言ってもドイツ料理は広域過ぎてその一言でまとめてしまうのは勿体無いし、その先入観は多分損してしまう。
人は憎めど食べ物は憎めず、あの白肌のモチモチちゃんはファムファタールで、辛口ベルリナーも敵視出来ないのだ。
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