その人の香りが好き。
ベルリンのほとんどの人が生活に充実感を感じているそうだ…ただし恋愛以外は。確かにベルリンは恋は出来るけど恋人を作るには一筋縄ではいかない。「もっとシングルを楽しみたい」「ひょっとしたらもっと素敵な出会いが出来るかもしれない」って思っているからなかなか恋人というゴールに辿り着くのは困難。
ベルリンも他の国でも「付き合いましょう」というセレモニーがないので、「私たち、一体どういう関係なわけ?」って思うことがある。自由恋愛がゆえ、おつきあいしているのかカジュアルな関係なのかの線引きが難しい。ドイツ語では愛しているというのを「Ich liebe dich」、ベルリンでは「Ick liebe dir」という。ドイツでこの「愛している」、と言う言葉を伝えるのはかなり重く、責任が大きすぎる感じで男女の仲の禁句のようなもので、なかなか言いづらい。だから「この人、どう思ってるわけ?」っていつも疑問を抱いてしまう。ドイツ人って言って欲しくないことでも結構ズバズバ言うし、性に関してはだいぶ解放的で自由なので、逆にオープンな関係の時はハッキリと言われるから、ここの部分はすごくオブラードに包まれていると思う。
ところで「君の匂いが好き。」と言われることがある。
その昔、好きな人に「匂いが好き」と初めて言われた。そして「匂いが好き、っていうことはドイツ語でその人が好きって意味だよ」と言われた。へ、そうなんだ、って答えたけど、え、だからそれってどういう意味なの?って平気な素振りをしながら心の中で考えた。
これは後からサンドラ・ヘフェリンさんのコラムを読んで「ああ、それってやっぱり好きって意味なのかしら」と考えた。
以前、その大好きだった人は私たちの離れ離れの期間、空になった私の香水の瓶を彼の家のシェルフの棚にこっそりと仕舞っていると言っていた。そして、「駅前で振り返ったらマダムがいた。君と同じ香水の匂いがしたから少し後ろをしばらく付いて行ってしまった」。一歩間違えたらだいぶ変態。
今の彼が彼になる前、匂いが好き、と言われた。まだ意気投合してしばらく会ってた時期だったので、あんまり気にしてなかったけど、段々、過ごす時間が増えていって、彼の良いところをたくさん見つけた。ある日、私は彼の匂いが好きかもしれない、ということに気づいた…彼って私のことどう感じているんだろう?と思った。しばらく彼が海外に行ってしまうことがあった。彼は出かける前に抱きしめて、私の首筋の匂いを思いっきり吸って行った。彼が戻ってきた時、彼は私の髪を撫でて私の首筋の匂いを思いっきり吸った。
ヒトのHLA遺伝子はヒトの匂いに個性を与えることによって、異性の好き嫌いの選別に影響を与えているという。だから感情じゃなくて本能に従っているのかもしれない。
好きな人に「匂いが好き」と言われた。それって感情の好きって言葉じゃないから曖昧で結構甘酸っぱくほろ苦い。
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