まるで猫になりたい in ベルリン

2週間前まで30度とあんなに外が暑かったのに、先週からみんなニット帽を目深に被り、日本の冬のコートを着込んで道を行き来したり外でタバコを吸っている。通りでは木の実が道路にパチッパチッと音を立てながら落ちてくる。秋が来た。

2週間前の金曜日。あまりに暑くてエアコンをつけようか迷ったくらいだったのに、突然家中から「チュルチュルチュル〜」という音が流れ出した。耳をすます。音がする方向へ行ってみる。それはハイツング(セントラルヒーティング)の中のオイルが動きだす音だった。とうとう暖房が入ったということだ。急いで家中のハイツングをオフにする。翌日から気温13度まで冷え込み、夜に至っては気温が一桁台になった。

ドイツの冬は寒い。寒くて暗い。夏は夏で北国なので太陽が出ていれば日本の日差しよりずっと暑く感じる。あんなに太陽が疎ましかったのに、常に曇った空のせいでたまに太陽が顔を出すと太陽の日差しを追って家で日向ぼっこしてしまう。

夏の間、冷たいハイツングのパネルの部分に足をそっと入れて、その冷たさを楽しんだのに、秋が来て、ハイツングがオンになれば毛布を羽織って背中をハイツングにぴったりとくっつけ、その温かさを楽しみたくなる。そのまま窓の外を見上げると、モクモクと石炭暖房を炊く灰色の煙がベルリンの街を舞う。ベルリンの秋の風物詩。微かに石炭に火が灯る匂いがしてくる。

夏の間は鬱陶しいと思っていた恋人の発する体温もなんだかすごく心地よくなる。ハイツングと恋人の間に挟まれて、まるで猫になったような気持になる。本当に猫も居ればいいのに!

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