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YUKIの最新アルバム「SLITS」感想


YUKIさんの最新アルバムである「SLITS」を全曲聞いての感想をただただ書いていきます。

SLITSというタイトル

 ”SLIT”という言葉には様々意味があると思うが今回は専ら”傷”のような意味で使われている印象。なので今回収録曲の歌詞の主人公はそれぞれ傷を負っていること連想させる。ただその傷は必ずしも悪いものではなくてそれらも含めて自分なのだというYUKIの想いが込められているのだと思う。この辺はとても最近のYUKIっぽい。

全体聞いてみての感想

 一言で言うなら少し停滞、という印象。直近のアルバムは傑作の"forme"、そこに続く"Terminal"、20周年を機にキャリアを振り返ってYUKIの想いが強く現れている”パレードが続くなら”と名作揃いだったため、それらと比較しての新しさやインパクトと言うのは若干欠ける印象。
 今回のアルバム作成にあたりインプットにかなり時間をかけたと言うことではあるがこれまでアルバムから大きな変化と言うよりはこれまでの曲と似た曲調が多いかなと言うのが率直な感想。
 そしてこれまでの楽曲と比較しても相当歌詞がストレートというかわかりやすいものとなっている。YUKIが日々感じたことや昔あったことをそのまま書いたエッセイにも近いようなそんな感覚。良くも悪くもちゃんと考えて書かれた歌詞である。
 ここまでいうとこのアルバムに否定的なように見えるかもしれないがそういうわけではなく、特に最近の曲は本当にレベルが高いところで安定していてこのアルバムも例外ではない。過去に出した曲を踏襲しつつも、さらにそれを今のYUKIの思いや技術や音作りでチューンアップしているとも言える。また歌詞がわかりやすい点も今のYUKIの考えていることに想いを馳せやすいという面においては聞き手側も助かる。あと今回SLITSというタイトルと収録曲にかなり一貫性がある。これまでもテーマはあっただろうが今回はかなりテーマと中身がリンクしている印象。

各楽曲の解説と感想

  1. Now Here
     瞑想とフィットネスって感じの曲。ノープランでどこいく?何する?って感じの始まりはスタートをイメージさせるようで1曲目にもぴったり。『消えない soft scar』という歌詞がSLITS=傷要素として入っている。
     社会的に成功を収めるとマインドフルネスとかフィットネスに傾倒するようになるよなー・・などと思ったりする。

  2. 雨宿り
     雨を避けたアーケード街で待ち合わせる少年少女って感じの曲。YUKIお得意の架空のカップルの恋の歌。アーケードを踊りながら進み、周りのお店の人達が観客みたいなミュージカルな映像が浮かび上がってくる。『少年の膝小僧』と『つらい過去』が傷要素として入っている。1曲目のNow Hereと作曲者が同じでありそういう意味でも2曲目として繋がりが良い。
     チョイスした商店街の店がお肉屋さん、文房具屋さん、八百屋さん、金物屋さんの4種類。よく考えたらどの店も少年少女のデートには縁がなさそうである。

  3. 流星slits
      アルバム名のスリッツを冠した曲。クラブで踊る女の子って感じのダンスミュージック的要素と『追い込まれ 燃えるカロリー この程度はwarming up』という歌詞から分かるようなフィットネス要素(本当に好きだな・・・)の曲。若さゆえの過ち、みたいなのが傷要素だろうか。
     本格的なラップパートがあるが個人的にここはかなり好み。さすが鎮座DOPENESSとやってただけある。もう少し長くラップパート聴きたかったな、作詞大変だろうけど。

  4. Hello,it's me
     両A面シングルとして発表されていただけあって完成度は高い。ジャジーな感じやHey Hey Heyという掛け合いはライブ映えするように作られている。
     ただジャジーな曲枠に”恋愛模様”という屈指の名曲があり、個人的にはそちらに軍配が上がる。

  5. ユニヴァース
     この広い宇宙でちっぽけな自分の人生。出会うことのできる人もほんの一握り、でもそういったもののつながりや積み重ねで自分は構成されているって感じの曲。特筆すべきところはなし。

  6. 追いかけたいの
     追いかける系の恋の歌。軽やかで少し切ない、懐かしいイメージも感じるギターが非常に良い。

  7. 金色の船
     金色の船で時間旅行みたいなイメージが浮かんでくる曲。意味というよりはいい感じの言葉を並べて作られているような感じで、そういう意味では少し昔の曲っぽい雰囲気もある。
     時間旅行、と言った瞬間に「それは不可能」ということを暗に意味しているような気もしてそこに切なさのようなものを感じた。

  8. One ,One,One
     最近では珍しいYUKI作曲になっている。トラックを流しながら、YUKIがメロディを歌っていくという手法で制作されていることから言葉がパラパラと流れていくような曲調になっている。
     この曲でも”雨”というワードが使われている。最近のYUKIの中でのトレンドなのだろう。

  9. 友達
     実話ベースの曲。実話ベースの曲には屈指の名曲”口実にして”があり、友達の歌には”it's盟友”があることから目新しさはないが、YUKIの学生時代を垣間見ることができる曲である。

  10. パ・ラ・サイト
     若い女の子がワンナイトしまくって「やらかした」と思いながらも「ドラマの続き早く観たい」と反省していない、矛盾しているような不安定さみたいな曲。そんな彼女も本当に好きな人とは手も繋げなかったのだ。『かくなる上は脱走だ〜』、『時をかける魔法が〜』の部分はその後のサビへの入り方含めて最高。
     この好き放題やっている若気のいたりをSLITSと呼んでいいのかは微妙だよな・・・

  11. こぼれてしまうよ
     YUKIの言いたいことを全部言っている曲。なので歌詞の文字数も非常に多い。

  12. 風になれ
     普通。

総評

SLITS=傷は過去にできたものであるため、過去について言及した曲が多い印象。
個人的に好きな曲は”追いかけたいの”と”パ・ラ・サイト”。



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