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事件備忘録@中の人
2021年10月11日 19:03
法廷にて「私、前に自分一人で解決しないといけないと思い込んでしまって、失敗したことがあるんです。だから今度は、ちゃんと相談しようと思っていました。」松山地方裁判所宇和島支部第一号法廷。証言台に座る女の無造作に束ねた髪には、その年齢にそぐわない白髪がのぞいていた。被告人席には、夫の姿。両脇を屈強な刑務官が固める。その傍らに、女性職員の姿。この事件の被告は、夫婦だった。女は時折涙をぬ
2021年10月10日 21:11
まえがき妊娠は、本来誰からも祝福されるものだ。新しい命が宿り、十月十日を一緒に過ごし、ともに親子へと成長するその過程は、母親となる女性にとっても素晴らしいことである「はず」。しかしその妊娠が、自分の人生をより困難に、時にはぶち壊す存在にしか思えなかったとしたら。その存在が、自分や今いる家族のなかでまったくの「不要」なのだとしたら。虐待とは少し違う、最初から要らなかった、生まれてもらっ
2021年10月10日 08:56
平成25年4月24日とうとうこの日がやってきてしまった。先延ばしにする間に、なんとか方法を考えるはずだった。しかし、あっという間に十月十日(とつきとおか)は過ぎ去っていった。鈍痛は次第に強烈な痛みへと変わったが、もう後戻りはできない。疲労困憊ではあったが、女にはまだやるべきことが残されていた。足元には血まみれのバスタオル。それをそっと、手に取った。草むらの赤ちゃん「なんか、赤