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事件備忘録🔰の方向け(無料編)

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#ノンフィクション

忘れないで~生きた証⑩この世の地獄編其の弐~

忘れないで~生きた証⑩この世の地獄編其の弐~

校庭で焼死した父子「助けてください!助けて」

小学校に隣接するアパートの住人は、突如聞こえた爆発音に驚き外へ出た。そこで見たのは、助けを求めて走り回る、子供の姿だった。
その子供の体は、炎に包まれていた。

クリスマス直前の惨劇

事件が起きたのは、文京区千駄木の区立汐見小学校の校庭。
天皇誕生日のその日、校庭では少年野球の親子親善試合が行われており、多くの父兄の姿があった。

ふと、一人の男が

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ある家族の崩壊への軌跡~世田谷・長男殺害事件~

ある家族の崩壊への軌跡~世田谷・長男殺害事件~

母は茫然としていた。
今何が起きたのか。床にはティッシュの箱が転がっている。今しがた、自身の顔面に投げつけられたティッシュの箱だった。

次の瞬間、体に衝撃が走る。ハッとしてみれば、中学生の息子が渾身の力で殴りつけていた。
「やめて!どうしてこんなことをするの?」
身を庇いながら訴えた母に、息子はこう言い放った。

「このくらい友達からやられているんだ、母さんにやらなければ誰にやるんだ!僕より弱い

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ただ、逃れたかっただけなのに~浜松・ピアノ講師殺人事件~

ただ、逃れたかっただけなのに~浜松・ピアノ講師殺人事件~

当初、その事件は「自殺」との見方で処理されかけていた。
浜松市内の瀟洒なマンションで、若い女性が自室のベッドで死亡していたのを、連絡が取れないことを不審に思った同市内にある実家の母親らが発見、通報したのだ。

遺体はあおむけ、着衣に乱れはなかったが、特に抵抗した様子がなかった。遺体の傷も、致命傷とみられる首の傷のほか、体のいたるところに細かい切り傷が無数にあった。まるでそれは、ためらい傷のようだっ

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懺悔滅罪~一関市・曹洞宗遠應寺強盗殺人事件~

懺悔滅罪~一関市・曹洞宗遠應寺強盗殺人事件~

寺の朝

薄曇りの、どことなくスッキリしない6月のその日の朝、山間の禅寺に二人の僧侶がやってきた。
この日、奥州市の寺で営まれる落慶法要(寺院などの修繕が終わった後に営まれる法要)に出るために、この寺の住職を迎えにきていたのだ。

寺の庫裡につながる玄関の灯りがついている。朝なのに、消し忘れたか。
僧侶らは声をかけたが、中から家人の返事はなかった。
「ごめんください」
玄関の戸は鍵がかかっていなか

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いくつかの温情判決とその後

いくつかの温情判決とその後

日本は法治国家である。すべては法律で決められており、それに反する行為があれば罰せられる。
もちろん、軽微な罪は裁判にならずに済むことも多いが、それでも裁判になれば、本当に法に反していたのか、そしてどうしてそんなことになったのかなどが審理され、その罪に見合った刑が言い渡される。

その中で時に、本来の同種の罪と比べると軽い判決が言い渡されることがある。温情判決、というやつだ。

被告人の生い立ちや犯

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母の涙が問うもの~宇和島・6歳双子金網監禁事件~

母の涙が問うもの~宇和島・6歳双子金網監禁事件~

法廷にて

「私、前に自分一人で解決しないといけないと思い込んでしまって、失敗したことがあるんです。だから今度は、ちゃんと相談しようと思っていました。」

松山地方裁判所宇和島支部第一号法廷。
証言台に座る女の無造作に束ねた髪には、その年齢にそぐわない白髪がのぞいていた。
被告人席には、夫の姿。両脇を屈強な刑務官が固める。その傍らに、女性職員の姿。
この事件の被告は、夫婦だった。

女は時折涙をぬ

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