【謎の人物ファイル】 無口なまさこさんが、ボソッと一言(心霊体験?)
私が、小学生の時の話です。
私は、とある田舎で生まれ育ちました。
見渡す限りの田んぼ。
小学校からの帰り道、田んぼ道をひたすら歩きます。
その途中、ポツンと、ある女性が、いつもたたずんでいます。
まさこさん
誰から聞いたか記憶にありませんが、私たちはその女性を、そう読んでいました。
まさこさんは、年齢が40代のようにも見えるし、それ以上にも見えました。
髪の毛はボサボサで、服装は地味なロングスカート。
あまり綺麗な格好とは言えず、近寄りがたい雰囲気でした。
なんでいつも立っているんだろう・・・
僕たちは、毎日、まさこさんの横を素通りするだけ。
会話したことはありません。
まさこさんが、喋っているのを見たことも、一度もありません。
すれ違う時、少し怖いなと、いつも思っていました。
しかし、ある日を境に、まさこさんに挨拶をするようになりました。
まさこさんに、救われた出来事があったのです。
*
その日、いつも通り、まさこさんの横を少しビビりながら通り過ぎました。
すると、まさこさんが、ボソッと一言・・・
「早く帰って・・・」
ビクッ!
私たちは、「ワーッ」と叫びながら、ダッシュで自宅へと帰りました。
翌日のことです。
友達のSくんが、言いました。
「昨日家に帰ると、庭でタロウ(犬)の首にチェーンが絡まって、窒息しそうになってた。まさこさんがそのことを、教えてくれたのかも」
帰り道、僕たちは、まさこさんに思い切って、「ありがとうございました」と言いました。
すると、まさこさんは・・・
ペコリ
軽く会釈をしてくれました。
それ以来、すれ違う時、挨拶をするようになりました。
まさこさんは一言もしゃべりません。会釈をしてくれるだけです。
中学生になり、その道を通らなくなり、まさこさんと出会うことはなくなり・・・いつしか、まさこさんの存在は忘れていきました。
*
大人になり、都内で生活していた僕は、実家に帰省。
自宅へと向かう途中、あの田んぼ道を通ると、
僕は、ふと、まさこさんを思い出しました。
両親に、まさこさんのことを話しました。
しかし・・・
「そんな人、知らない」
というのです。
まさこさんは、絶対にいました。
もしかしたら幽霊?
幽霊だとしても、まさこさんには、とても感謝しています。
その節は、ありがとうございました。
ペコリ
〜完〜