いつも笑顔の「ばあちゃん」が泣いた日。結婚できたのは、ばあちゃんのおかげです。
3年前の冬、
36歳の僕は、都内から故郷へと向かっていた。
入院中の祖母に会うためだ。
祖母の死期が、近づいていた。
僕の隣には、彼女がいた。
彼女とは、付き合って、まだ1か月。
それでも彼女を、どうしても祖母に会わせたかった。
*
僕は、おばあちゃん子だった。
小学校が終わると帰るのは、ばあちゃんの家。
共働きの両親の仕事が終わるまで、いつも、ばあちゃんと遊んでいた。
相撲を一緒に見て、ばあちゃんのつけた梅干しを食べ、どこで売っているのかわからない、めちゃくちゃ硬い謎のお菓子を食べた。
謎の魚の煮付けも出てきたが、それは食べなかった。
「死なねぇから食べな!アハハハハ!」
僕は、いつも笑顔の「明るいばあちゃん」が、大好きだった。
そんなばあちゃんが、僕の目の前で、泣いたことがある。
「お前はいつ結婚するんだ。それが私の最後の楽しみなんだよ。」
ボロボロと泣いていた。
その日、家族から、ばあちゃんが、病に蝕まれていると知らされた。
僕と彼女が、病院に向かう半年前のことだった。
それまで結婚は、できたらいいか・・・。ぐらいの考えだった。
そんな考えだったから、特に取り柄もない僕は、36歳になっても、結婚できていなかったのだろう。
「ばあちゃんを喜ばせたい・・・安心させたい・・・」
*
4か月後、転機が訪れた。
大学時代に、割と仲の良かった同い年の女性と、偶然、街で再開した。
チャンスの神様がやってきた。
「今度、ご飯行こう!」
これまでの僕だったら、絶対に誘ってはいない。
ばあちゃんが、後押ししてくれた。
僕は、チャンスの神様の前髪を掴み、その女性は、彼女になった。
*
付き合ってから、1か月後。
ばあちゃんの容態が悪化した。
病院には、親族が集合している。
それでも彼女は、ばあちゃんの元へ一緒に行ってほしいという僕の願いを、受け入れてくれた。
「ばあちゃん、婚約者だよ。結婚するよ。」
その瞬間、ばあちゃんは、大粒の涙を流した。
ボロボロボロボロ、泣いていた。
「よかったねぇ。本当によかったねぇ。」
「優しそうな、いいお嫁さんだねぇ。」
*****
ばあちゃん、ありがとう。
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今、僕の幸せがあるのは、ばあちゃんのおかげです。
妻にも、本当に感謝しています。
付き合ってすぐに、親族が集合している場所にいくのは大変だったでしょう。いきなり婚約者だと紹介されて、びっくりしたでしょう。
僕は、妻を幸せにしたいと思う。
〜完〜