私はあなたがハゲても好き。 【パッピーエンド】
当時25歳の僕は、薄毛が気になっていた。
僕は、顔はいたって普通。
しかし、オシャレに気を配り、モテようと必死だった僕には、彼女がいた。
「私は、あなたがハゲても好き。」
この言葉に、どれだけ救われ、
そして悲しんだことだろうか・・・
*
「母方の祖父がハゲていたら、75%ハゲる」
これは遺伝の法則に基づいた、避けられない宿命。
僕の5歳年上の兄は、30歳で、“つるっパゲ”だ。小さい頃から、「そっくりな兄弟ね」と言われてきた。
僕がハゲるのは、ほぼ確定だろう。
*
壊れることなど想像もしたくない、大好きな彼女との日常。
「俺が、ハゲたらどうする?」
「そんなの関係ないよ!」「ハゲても好きだから、大丈夫だよ!」
時は過ぎ、3年後の28歳。
僕は、ハゲ散らかし始めていた。
しかし、僕は、彼女からもらった、勇気づけられる言葉で救われていた。
彼女との恋愛は、順調だった・・・はずだった。
突然、彼女から別れを告げられた。
「優しくない」
それが、理由だと言う。
*
「悲しさを乗り越えるには、新しい恋愛だ!」
そう言い聞かせ、まずはハゲを治すことを決意。
パソコンで、ハゲを治す方法を、検索。
すると、衝撃の事実が・・・
映し出された、検索履歴。
彼氏 ハゲ
別れた理由は、優しくないところ
+
ハゲが嫌だったのだろう・・・
*
「俺の半分は、優しさだぜ」
“デブだがモテる” 友人のTはこう言った。
「モテるには、バファリンを目指せ!」
僕は、優しさを磨いた。
*
彼女と別れてから、7年間、新たな彼女はできなかった。
しかし、発毛活動と優しさ強化運動は、続けてきた。
そして、35歳の時、転機が訪れた。
毛が生えてきた。
ハゲから復活したのだ。
その一年後、新たな彼女ができた。
「僕のどこが好き?」
「優しいところ」
優しさ強化運動の成果だろうか。
*
彼女との交際は、順調だった。
しかし、その一方で、油断。
徐々に、発毛活動に手を抜くようになってきた僕は、再びハゲ出した。
「ハゲてきたね」
「・・・ハゲたらどう?」
「性格が好きだから付き合ってるの」
「ハゲてもあなたが好き。」
そういうと、彼女は僕のハゲを見て、キャッキャと笑っていた。
結婚する人って、きっとこういう人となんだろうな。
半年後、私は結婚した。
ハゲたからこそ、優しくなれた。
最愛の妻と出会えた。
「ハゲてもあなたが好き。」
妻のこの言葉は、心から信じることができる。
〜完〜