【謎の人物ファイル】 愛しのカフェ兄
これは、僕が高校生の時に体験した話です。
怖い話ではありません。
*
僕は、コンビニでアルバイトをしていました。
そこに決まって、
毎週日曜日の15時、その男性は現れるのです。
年齢は、30歳前後。
体型は、痩せ型。
髪の毛は、茶髪のロング
「シャ乱Q」にいそうな雰囲気。
車は、真っ赤なスポーツカー。
高そうなスーツに、身を包んでいます。
そして、決まってあるものだけを買います。
100円のカフェオレ。
パックの500mlのやつです。
それだけ買って、颯爽とスポーツカーで走り去っていくのです。
私は、その男性を、
カフェ兄
と、勝手にあだ名を付けていました。
カフェ兄が、何をしている人なのかわかりません。
話したこともありません。
単に、客と店員の関係です。
またキター w
今週もキター!
カフェ兄、キター!!
しかし、およそ1年後、
突如、異変が起きたのです。
いつものように、日曜日15時、カフェ兄が颯爽と姿を現しました。
「ドンッ」
会計に差し出されたのは・・・
マウントレーニア!?
僕は戸惑いながらも、平然を装い会計しました。
(なぜ?今週は贅沢?)
翌週は、何を買うのか?
楽しみで仕方ありません。
そして、次の日曜日。
予定時刻の15時・・・
カフェ兄が来ない・・・
16時になっても17時になっても、結局、来ませんでした。
一体何があったのか? わかる術もなく・・・
その翌週も来ず、以来、カフェ兄は、姿を現すことはありませんでした。
愛しのカフェ兄は、どこへ・・・
いつの間にか、カフェ兄のファンになっていたようです。
以来、バイトは、愛しのカフェ兄を待つ日々・・・
そして、およそ半年後、ついにその時が!
その日、100円のカフェオレを買った人がいました。
もしや・・・
ふと顔を見ると・・・カフェ兄でした!
でも、「カフェ兄」が、カフェオレを買うまで、僕は気が付きませんでした。
それには理由があります。
服装は、地味。
髪の毛の色は、黒。
車を見ると、スポーツカーから庶民的なものに変わっていました。
驚きましたが、元気そうで、うれしくなりました。
そして、それを最後に、カフェ兄が姿を見せることは一度もありませんでした。
*
ここからは、僕の妄想です。
かつてカフェ兄は、何かしらの問題に巻き込まれた。
最後の贅沢?で、マウントレーニアを買った。
この半年で、その問題を解決した。
スポーツカーを手放し、服装も一変するぐらい大変なことだったのでしょう。
そして、再び、コンビニに来てくれた。
僕に、元気な姿を見せるために・・・
*
カフェ兄、ありがとう!
勝手にファンでした!
バイト生活に楽しみを与えてくれたことを感謝しています。
何はともあれ、カフェ兄は、僕の青春時代の記憶に強烈に刻まれた、伝説の人物です。
〜完〜