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生きているお酢

不公平な食材、バルサミコ

私たちが日本に紹介しているワインビネガーは、バルサミコの本場モデナ地方でバイオダイナミック農法でぶどうを育てている唯一の醸造元”グエルゾーニ”。シュタイナーの哲学に感銘をうけた当代ロレンツォの両親が、今から40年ほど前に究極の有機とも呼ばれるこの農法に切り替えた。地元では有機農法さえも理解されず、長く変人扱いされ苦労されたそうだ。

バルサミコほど不公平な食材はないと思っている。グエルゾーニのように自社の畑で丹精込めて本場モデナ品種のぶどうを育て、樽で2年熟成して仕上げるのもバルサミコ。一方で仕入れたぶどう液を工場で数時間煮詰め、キャラメル色素などを加え数時間で仕上げられるのも、やはりバルサミコと呼ばれる。

土づくりから考えたら、何百倍?いや何千倍?の手間が違う。もっといえばぶどうが畑で雹にやられてしまったり、リスクの大きさも工業製品とは全然違う。でも同じバルサミコと呼ばれる。クオリティを保証するはずのモデナのバルサミコ生産者組合でさえ、キャラメル色素2%のまでの使用だったらIGP(保護指定地域表示)を取得できると決めている。これでは何のための認証なのだろう?

バルサミコの原料としてのワインビネガー

グエルゾーニのバルサミコの原材料は2種のみ。ぶどう果汁を低温でじっくり48時間かけ半分まで煮詰めた濃縮果汁=モスト。そして自家醸造のワインビネガー。つまり2種の原材料ともに自家栽培有機ぶどう100%である。この2種を合わせてバルサミコになる。

原材料であるワインビネガーの販売をスタートしたのは、ここ10年ほど。まろやかな酸が特徴でとても風味がいい。白ワインビネガーはフルーティで、赤ワインビネガーはほのかな心地よい苦味がとても良い。一般的にワインビネガーは原料のワインに亜硫酸塩が含まれている。グエルゾーニの場合はお酢のためにワインを作るので亜硫酸塩の使用なし。極めて稀少なワインビネガーだ。

母だと思っていたら、息子だった

先日お客様から問い合わせがあった。ワインビネガーの瓶にもやもやっとした浮遊物が認められるとのこと。Aceto Madre = 酢母のことだ。繊維が重なったようなゼラチン状の酢母は、お酢をつくり出すものとつい最近まで信じられてきた。実際グエルゾーニの先代も、この酢母がお酢を生み出す母だとずっと信じてきたという。

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ところが10年ほど前に、母だと思っていたものは息子だとわかった。お酢を生み出すのは目に見えない酢酸菌であり、酢酸菌が酢酸化を終えた残渣が繊維の膜や澱を生み出すとわかったのだ。

生き続けるお酢

グエルゾーニは瓶詰めをする前に0.5ミクロンのごく細かいフィルターをかける。それでも酢酸菌を取り去るのは不可能だ。酢酸菌の活動に一番好ましい温度は 37°C、光も好む。ボトルの中に残された酢酸菌は冷暗所に保存している間は眠っているが、一旦温度の上昇や光を受けると目覚めて活動を再開し始める。

その酢酸化活動の結果、 酢酸菌の残渣である繊維の膜の酢母や澱が生じる。こうした成分は視覚的には好ましくないものの、味にも人体にも影響はない。そして酢酸活動が続いても酸度が上がることはない。 酢酸菌は少しの酸素があれば活動でき、共食いもする。 お酢は原材料に含まれるエチルアルコールが酢酸菌によって変化して作られるが、昨今の研究で一旦酢酸化が終了しお酢になった後にもさらに分解が進むことがわかってきた。

このように長い時間をかけて菌が活動し続けた結果、上の写真にあるような残渣ができる。同時にお酢の分解が進めば進むほど、お酢はまろやかに、奥深い味になっていく。視覚的には好ましくないが、生きているお酢の証拠、奥深い味のお酢の証拠なのだ。なおホワイトバルサミコ、バルサミコについては糖分が多く含まれるため、酢酸菌が活動しにくく、酢母はできにくい。

菌が好む養分たっぷり

グエルゾーニのお酢は一般的な酢よりもミネラル分が豊富で(以下に資料)、酢酸菌には栄養豊富、活動に適した環境だ。実際に熱処理をし ていないお酢でもミネラル分が少ない場合、こうした現象は起きにくいとのこと。科学者でもまだこのメカニズムについては判明していないことも多く、研究を続けていると聞いた。

工業生産品のワインビネガーは熱処理をするため、酢母ができてしまう心配はない。グエルゾーニは自然の養分、ミネラル、酢酸菌を大切にしているので熱処理しない。つまり酢酸菌の残渣である酢母のリスクが常にある。それでも私たちはこのミネラル豊富な生きたお酢をご紹介できることを誇りに思っている。この自然な美味しいお酢の価値を知っていただき、価値を共有するお客様にお届けできたら嬉しい。

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PS 本日4月16日のイタリアのコロナウイルス被害状況。今日は集中治療室の患者数、入院治療患者の数に大きく改善が見られました。集中治療室の患者数が3,000人を切ったのは3月21日以来。犠牲者の方の数はいまだ多いものの、ダウントレンドがゆっくりですが顕著になりつつあります。頑張ろう、イタリア!

2020年4月16日 イタリアの状況
本日の検査数60,999件 
うち感染者数 3,786(6.2%)

感染者数などの状況 カッコ内は4月16日増加分
現在感染者数 106,607 (+1.189)
-うち症状なしあるいはごく軽症で自宅隔離 76,778 (+2,082)
-うち入院治療中 26.893 ( -750)
-うち集中治療室 2.936 ( -143)
犠牲者 22.170 ( +525)
治癒した人40.164 ( +2.072)



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