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119. 雨季と畑とパッションフルーツ
この年、2023年は春先の不調が続いたせいでその後も恐る恐る動いていたので、結局は畑仕事はたいしてできなかった。
作ったものは雨季にナスだけ。
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どこからか飛んできたナスの種が順調に発芽し、地植えをしてからぐんぐんと成長し、6本から20kg程度は収穫できた。
パプリカとズッキーニと共に焼き浸しにしたものを何度も作り、こればかり食べていた時期もある。出汁がじゅんわり染み込んでとても美味しい。一番暑い時期(4、5月)に作れるように次回は植えるタイミングを調整しよう。
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消費が追いつかないので、業務スーパー方式の「粗くぶつ切りにしてから軽く油塗してエアフライヤーで加熱」したものを冷凍に。冬の間も楽しめている。
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畑に2年植えたままで時々葉を取っていたアセルガ(スイスチャード)もまだ頑張ってくれていた。最後に20枚ほど葉っぱを取ると、雨季の雨に耐えられずに終わってしまった。ここは後処理をして綺麗にし、少し休ませる。
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そういうわけで、2023年の畑は大したこともできずにいた。
休耕地と割り切っていたのも事実。
日頃溜め込んでいた卵の殻を粉にしたものや、乾かしたコーヒーの出涸らしを土に混ぜたり、畝を少し整えたり。多分畑にはそういう時期も必要なのかもしれない。
岩陰に植えた月下美人の開花をちゃんと見ることができた。
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雨の中ではあったが、あたりがほんわりと甘い匂いに包まれ、密やかにさく大輪の白い花。咲き終わったら翌朝には萎んでしまうのでそれを摘んで、雌蕊雄蕊を外してからサッとゆがく。そこに三杯酢を少しかけると甘酸っぱい風流な一皿になる。月下美人の花びら自体に何か味があるわけではないのだが、サラッとした軽い滑りがある。
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パッションフルーツの花がいくつか咲き始めた。
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念願の、と言いたいのだが、でも植えてから2年目なのであっという間。2022年の5月に植えてからぐんぐんと伸びて、棚を登り、左右に枝を広げた。初年度も花は少しだけついたが実がなることはなかった。パッションフルーツを育てたことのある人からは「2年目から沢山なるよ」と伺っていたので楽しみにしていたのだ。
大輪の時計草様の花はたった一日だけ咲く。
一度にいくつもの花が咲いていると、棚の下にいてもその香が漂ってくる。果実同様、甘酸っぱい香りで、それだけでも美味しいと感じてしまうほど。それだけでも美味しいと感じてしまうほど。8月初旬に咲き始めているのを確認してからは毎日のように新しい花が咲く。梯子に登りピンセットを使って雄蕊を外し、少し離れた(株の違うであろう)花の雌蕊に軽く擦り付ける。何度もその作業をしていて気づいたのが、雌蕊の数が違うこと。多くは3本の雌蕊だが、4本のもあるし、たまに5本になっているのもある。その数だけ果実の中身のゼリー部分が分かれているのだが、中身の味などには影響ない様子。
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また、この雄蕊と雌蕊のつき方が面白い。
雄蕊の花粉がついている面は下を向き、雌蕊の花粉をくっつけたい面がその上にかぶさるようにしてまた下を向いている。
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これではどうやったって虫さんの背中やお尻を借りなければ受粉させることはできない。共に与え合って助け合って生きていることがよくわかる。もし最初から、雄蕊の花粉が上を向いていたら、世界はちょっと違っていたのかもしれない。
毎日、棚(というか屋根?)にはたくさんの花が咲き、受粉のお手伝いができなかった花もある。そういった花は結実しなかったのでそのまま朽ちて落ちていく。一つ二つ小さな実も確認できるようになった。
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雨季の3ヶ月の間に次々と実をつけて、最終的に80個ほど実った。ゴルフボールからソフトボールより一回り小さいサイズまで。大きいものは手にした時のずっしり感が違う。まるでりんごでも持っているかのよう。
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緑色から薄い黄色になり、全体が黄色くなると自然に落ちる。
黄色くなったのをもいでもいいし、落ちるまで待ってもいい。
落ちた後は1週間から10日ほど追熟させる。そうしないと酸っぱくてとても食べられたもんじゃない。追熟させると適度に余分な水分が抜け、甘みも増す。
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最初に収穫できたものは中身をくり抜き鍋で砂糖と共に煮る。甘すぎるのは嫌なので少し控えめに。冷めたら小分けにして冷凍。こうしておけば暑い時期に溶かして氷水と混ぜるだけでパッションフルーツのジュースができる。これが美味い。
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次以降に追熟できたものはくり抜いて、黒糖とウォッカと一緒に漬ける。メキシコでは氷砂糖と果実酒用のホワイトリカーが手に入らない。代替品として一番手っ取り早いのが、黒糖(ピロンシージョ)とウォッカになる。
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漬けて2週間ほどで中身をミキサーにかけ、お酒の入っていた瓶などに分けて入れる。試しに飲んでみる。
驚くほど美味い。
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例えていうのならば、実も潰して濾したとろりとした梅酒。
もちろん梅の風味ではなく、パッションフルーツの味なのだが、濃厚な甘酸っぱさが最高に美味い。種がつぶつぶパリパリと小気味いいのもいいが、邪魔だなと思う人もいるかもしれない。だが味は最高にいい。
12月半ばまで追熟した身をくり抜いては漬け込む作業をした。1L程度の酒瓶に6本出来上がった。これで一年楽しめる。
パッションフルーツは年に2回花が咲くらしく、最後の実が落ちた数日後に、すでに次の花が咲き始めている。
水を絶やさずあげて、お米の研ぎ水も肥料の代わりにあげる。これだけ。
育てない手はない。ありがたい。
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