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沢登り道具の選び方 2024

今年も沢登りシーズンがやってきました!(2024/7 update!)

人によっては春先から沢に行く人もいるようですが、私は気温が上がってから、また、この時期は天候が安定しないことが多いですが、沢登りなら多少雨が降っても気にならないので、6月末くらいがシーズンインに最適だと考えています^^

この記事では、私がクライミングを伴わない日帰り遡行で持って行っている道具の紹介をしていきたいと思います。

※注意点
この記事では、あくまで私が使っているものをベースにした紹介です。沢登りには様々なスタイルがあり、スタイルが合わない方は道具の選び方も異なるかもしれません。本記事では以下のような沢登りを想定しているので参考にしてみてください。


沢靴

フェルトソールかラバーソールか

沢用の靴を選ぶ際、最も重要な要素はソール(靴底)の種類です。主にフェルトソールとラバーソールの2種類があり、それぞれに特徴があります。

フェルトソールは、苔の生えた滑りやすい岩(ナメ)に強いという長所があります。しかし、くさ付きや急登が苦手で、消耗も早いという短所があります。このため、フェルトソール使用時は詰め用にチェーンスパイクを併用することがあります。また、下山時に別の靴に履き替えることもあります。

一方、ラバーソールは岩場に強いという特徴があります。従来は苔に弱いという欠点がありましたが、近年の技術進歩により、この弱点も改善しています。沢登りから下山まで一足でこなせる汎用性の高さが魅力です。

靴タイプ、タビタイプなど

靴のタイプについては、主にサワタビとシューズタイプがあります。

私自身、サワタビは使ったことがないのですが、サワタビは、足にフィットし、岩の感触を直に感じられるのが利点と言われています。しかし、一般的には長い遡行には向かないと考えられています。これは、長時間の使用で足への負担が大きくなりやすく、また足首のサポートが少ないためです。

ラバーソールの沢靴

このため、1足だけ選ぶ場合はシューズタイプのラバーソールがおすすめです。

私が使っているのはラ・スポルティバの「TX Canyon」ですが、こちらは3万円ほどと価格が高いこともあり、万人にはおすすめし辛いです。

TX Canyonのレビュー動画を公開しているので、興味のある方は御覧ください。

一般的におすすめできるのは、キャラバンの渓流か、モンベルのサワークライマーです。

渓流KR_3XRは、スタンダードなシューズタイプなので、無難に履けそうです。
ソールがTX Canyonと同じヴィムラムのイドログリップで、パターンもクライミングゾーンがついているので、登攀要素の多い沢でも使いやすそうです。

こちらも定番のサワークライマーです。足首部分がネオプレンになっていて、アッパーまでつながっており、シューズ全体をカバーするような作りになっています。
こちらはたしか2022年にモデルチェンジしたもので、それ以前のモデルからは様々な改良がなされましたが、ややクセのある靴になったかな、という印象です。

以前、これの前のモデルを使っていましたが、登攀要素が強いとソールのつま先部分の減りが早いのが気になり、個人的にはソールパターンは変えてほしいなぁと思いました。

基本ウェア(上半身)

沢登りを楽しむ際、適切な上半身ウェアの選択は安全性と快適性を左右する重要な要素です。以下のポイントを押さえて選びましょう。

  1. 長袖を選ぶ: 怪我や虫刺されの防止と日焼け対策のため、長袖のウェアが推奨されます。岩や木の枝との接触から腕を守り、安全性が高まります。

  2. 速乾性素材を重視: 常に濡れる可能性がある環境のため、ポリエステルやナイロンなどの速乾性素材が適しています。これにより、体温低下や皮膚トラブルのリスクを軽減できます。

  3. ラッシュガードの活用: 速乾性、伸縮性、UV防止効果を備えたラッシュガードは、沢登りに適した選択肢です。軽量で動きやすいのも利点です。

  4. 防寒対策としてのタッパー: 気温や水温が低い場合は、あるタッパー(ウェットスーツの上着)の着用を検討しましょう。優れた保温性で体温低下を防ぎます。

また、ウェアに関してはもう一つ重要なポイントとして、沢登りウェアは敗れたりしやすいので、私は有名メーカーのものは使わず、安価なものを選んでいます。

ということで、ワークマン製品を多用しています。

今シーズンから上半身はこちら。

肌面にポリプロピレンがグリッド上に配置されているため、肌に張り付かず、ドライに保つことが出来ます。

これは、ミレーやファイントラックのドライレイヤーとベースレイヤーを一体化したイメージです。

昨シーズンまでは以下のドライレイヤーの上に、ワークマンの「DIAGUARD水陸両用長袖ライトフーディ」を着てました。

タッパーは遡行に持っていきますが、泳ぎ沢以外では使わないことが多いです。

基本ウェア(下半身)

下半身のウェア選びは、上半身と同様に重要です。安全性と機能性のバランスを取りつつ、下半身特有の要件にも注目する必要があります。以下に、下半身ウェアを選ぶ際の主要なポイントをご紹介します。

最も重要なのは保温性です。沢登りでは冷たい水に頻繁に浸かるため、体温維持が課題となります。特に下半身は水に浸かる時間が長くなりがちなので、保温性の高い素材選びが重要です。この点で、ネオプレン素材のウェアが非常におすすめです。ネオプレンは水中でも優れた保温性を発揮し、長時間の活動中も体温を維持するのに役立ちます。

次に考慮すべきは保護性です。沢登りでは岩や木に膝やすねをぶつけるリスクが高くなります。ネオプレン素材のウェアは、その弾力性によってこうした衝撃を和らげる効果があります。

より高度な保護を求める場合は、プロテクターの使用も検討できます。膝やすね専用のプロテクターを装着することで、岩との接触による怪我のリスクを大幅に軽減できます。プロテクターはネオプレンウェアの上からでも、薄手のウェアの下でも着用可能です。

ただし、プロテクターを着けると動きづらくなったり、ズレが気になったりすることがあります。また、ネオプレンによる保護で十分と考えているため、私はプロテクターを使用していません。そのため、私はどんな沢に行く場合でもウェットパンツを履いています。

また、私はウェットパンツの上からショートパンツを履いていますが、これは完全にスタイル上の好みなので、機能・性能の意味ではなくてもいいでしょう。

[補足]ウェットスーツの選び方

沢登りを楽しむ上で、適切なウェットスーツ(ネオプレン素材のウェア)の選択は非常に重要です。沢環境は常に水に濡れる可能性があり、体温維持と動きやすさの両立が求められます。

セパレート型のウェットスーツは、上下が分かれているタイプで、主にウェットパンツとタッパー(上着)の組み合わせです。この形状の最大の利点は、脱ぎ着が容易なことです。これにより、入渓前や脱渓後はもちろん、沢の中でも状況に応じて上半身だけを脱いだり着たりすることができ、体温調節が非常にしやすくなりおすすめです。

「沢登り用」として販売されているウェットスーツは、沢登りにおける使いやすさを考慮して作られているので、これを選べば快適です。ただし、選択肢が少なく、価格も他のものと比較するとかなり高価です。

https://a.r10.to/hUhhzs

また、渓流のシャツ・タイツは厚さ0.5mmです。素材の質は良いかもしれませんが、保護性能を考えるとやはりもう少し厚みが欲しいところです。前述のプロテクターと組み合わせて使用することを想定しているのかもしれません。

素材の厚さは厚手のものほど保温性と保護性が高くなりますが、同時に動きにくくなる傾向があり、2mm前後がおすすめです。

フルスーツタイプのウェットスーツは、泳ぎの多い沢や特に寒い時期には有効です。全身を覆うため保温性に優れていますが、その分動きづらく、脱ぎ着も大変です。特にダイビング用のフルスーツは厚手で保温性は高いものの、沢登りに必要な細かい動きがしづらくなる場合があるので注意が必要です。

その他ウェア類

レインウェア

沢では基本的に体が濡れているため、雨が降った場合に体が濡れることへの対策は必要ありません。しかし、寒さ対策には防水性のあるウェアが必要です。

特に、滝の水を大量に浴びるような場合は、防水性のあるウェアを着ているかどうかで快適さに大きな違いが出ます。ウェットスーツは体に密着し、体付近の水を温めて保温する効果があります。しかし、水が常に流れている場所では、ウェットスーツでも保温効果が十分に発揮されません。そのため、滝の水を大量に浴びるような場面では、防水性のあるウェアを着て、冷たい水が体に触れないようにしましょう。

登山用のレインジャケットを使う場合、破損のリスクを考慮して、高価なものは避け、お古のレインジャケットを沢専用にするのが良いでしょう。高価なレインジャケットに備わっている透湿性は、沢登りでは必要ありません。防水性を重視し、ポケットやファスナー、ベンチレーションなどなど水の通り道となり得るものがない物を選ぶと良いでしょう。

上記を踏まえ、透湿性ゼロ・ベンチレーションもなしのポリエステルヤッケがコスパも含めてオススメです。私は以下と同様のものをワークマンで上下購入して使っています。

ソックス

ソックスはネオプレンの3mmで先割れタイプを使っています。

先丸タイプだとソックスの中で足がずれる感覚がありますが、先割れになっているとそれがなく、しっかり踏めるような気がします。
砂利などの侵入を防ぐのと、足首周りやスネの保護にもなるので、少なくともくるぶしまで隠れて、ある程度高さのあるもののほうが良いでしょう。

グローブ

沢登りにおける手袋は、保温と保護、そして岩登りの際に岩を掴みやすいことが重要です。専用のグローブがあるので、それを選ぶのが無難ですが、価格が高くなりがちです。

特に手袋は消耗が激しいため、私はフィッシング用のグローブを使っています。

別製品なので単純な比較はできませんが、1シーズンほどでこうなります。

ただし、フィッシング用のグローブは保温性が重視されていないものが多く、ネオプレン素材のものはノーブランドで在庫も安定しません。現在使っているこちらも、購入時は5本すべての指が出ていましたが、今では3本指出しモデルしかないようです。


ヘルメット

沢登りの必須装備として、私はどんな沢であっても必ずヘルメットを被ります。また、アプローチでも登山道を外れたらヘルメットを被るようにしています。大きな墜落はあまり想定していませんが、小さな落石や転倒などの頻度は高いと思います。

ヘルメットはクライミング用のものを使用していますが、フリークライミング用とは分けたいので、安価なものを選んでいます。

被り方としては、頭に当たる部分のスポンジなど吸水する部分は取り外し、防水キャップを被った上からヘルメットを被るようにしています。キャップを被ることで保温効果が得られ、滝で目に直接水が当たらないため、視界が確保されやすくなるので、シャワークライミングを好む方には特におすすめです。

バックパック

バックパックに関しては、防水バックパックを使うか、非防水バックパックの中に防水スタッフサックを使って防水するかのどちらかが一般的です。

私は防水の必要がないものへのアクセスを考え、非防水バックパックとスタッフサックの組み合わせを使用しています。

日帰り用で、容量は22Lです。
こちらのシモンのバックパック、以前はカラバリがあって、この色はかなり気に入っているのですが、今は黒だけになってしまいました。

ちなみに、バックパックは登山用も青を選ぶことが多いです。これは青い色というのが自然界には少なく目立つためです。黒は虫に狙われやすいという話もあるのでできれば避けたいところです。

非防水バックパックを使う際には、排水性が良いことが重要です。バックパックの底面に排水用の穴が開いていない場合は、ハトメを使って自分で穴を開けると良いでしょう。これにより、バックパックに溜まった水が自然に排出されるようになります。


非防水バックパックの中には水が入りやすいので、濡らしたくない物は必ず防水する必要があります。私は大きなスタッフサックを使って荷物全体を防水し、特に守りたいものはさらに小さい防水スタッフサックに入れるようにしています。どんなに防水性の高いスタッフサックでも、しっかり閉じていないと水が入ることがあるので、注意が必要です。



登攀用具

ここでは、基本的にはスタカットでプロテクションを取りながら登る、いわゆるリードクライミングを想定しない沢登りに持っていく器具を紹介します。

リードクライミングを伴う場合、どのような登攀を想定するかによって持っていくべき装備が大きく変わるため、ここでは詳しく取り上げません。

クライミングを想定しない場合でも、懸垂下降や危険箇所での後続の確保、セルフビレイなどに必要なデバイスは最低限持っていくべきだと思います。

ロープ

ロープには様々な種類がありますが、大きく分けると、クライミングでの墜落を想定し伸縮性のある「ダイナミックロープ」と、伸縮性のない「スタティックロープ」があります。

クライミングをする場合は、必ずダイナミックロープを使いましょう。スタティックロープで墜落した場合に怖いのは、ロープが切れることではなく、支点に負荷がかかって抜けてしまうこと、そして何よりも人の身体への衝撃が大きく、致命的な怪我をしてしまうことです。

あくまでクライミングには使わないという前提で、私はスタティックロープを持っていきます。懸垂下降や場合によっては下降からの登り返しをする際、スタティックロープの方がやりやすいです。また、ブランド品ではなくても太めのものを選ぶことで、強度も沢で使う分には十分で、コストパフォーマンスも優れています。ロープの長さは20mか、30mあれば十分だと思います。

今使っているものは20mで10mmのものですが、もう少し細く長くしても良いかなとは思います。非メジャーブランドのロープを選ぶ場合は認証、とくにUIAAの認証があると安心かなと思います(たまにほんとかよ?っていうのもありますが、、、

こちらは10mm径でCE認証、破断強度は12kN

こちらはUIAA/CE認証で破断強度は17kN

と、コスパ重視の紹介をしましたが、一般的にはペツルやファイントラックから出ているロープのほうが信頼度が高いです。これらのロープに関しては別記事で考察をしたのでこちらをご参照ください。

また、個人的には、クライミングをする場合はクライミング用のダイナミックロープを持っていきますが、沢登りのためだけに考えるならば、クライミング用でないダイナミックロープも選択肢に入ると思います。
衝撃荷重は4.2kNと低いですが、沢で取れるプロテクションの強度や、滝登攀におけるリスクの取り方などを考えれば十分かなと。
ここはスタイルによるので自身のスタイルに合わせて判断するといいと思います。

ハーネス

ハーネスは大きく分けると2種類に分けられます。

1つ目は、フリークライミングに使われるハーネスです。このタイプはフォールしたり、長時間テンションが掛かった状態が続いた場合でも、体に食い込んで痛くならないようにクッションが入っていたり、ロープを結ぶタイインポイントが補強されていたりします。

もう1つは、岩稜歩きや沢登りなどによく使われるタイプで、「簡易ハーネス」とも呼ばれます。このタイプはクッションが入っておらず、その分水を吸収しないため、沢登りに適しています。

私が使っているのはこの簡易ハーネスのタイプで、以下のものです。

出費を抑えたい場合は高所作業用のハーネスが安く販売しており、以前はこれを使っていました。フォールしない前提で、理解の上使うのはありだと思います。

確保器具類

ここは説明しだすとキリが無いので、最低限必要なものを上げます。あくまでクライミングを考えない場合の装備です。登攀系の場合は登る滝に合わせて準備しましょう。

セルフビレイコード(パーソナルアンカーシステム)

セルフを取るためのシステムで、専用のものも販売されていますが、沢用にはスリングと環付きカラビナを使っています。

また、プロテクションは木や岩で取ることになるので、そこに巻きつけるためのスリングが必要です。

・セルフビレイ(80~120cm程度のスリング+環付きカラビナ)
・スリング(120cm)

ビレイデバイス
クライミングを想定しない場合でも、沢登りではアプローチや高巻きの後、沢に降りるときなどに懸垂下降を行うことが少なくありません。

懸垂下降のためだけであればエイト環でも構いませんが、ビレイをすることもあるでしょうし、これから購入するならビレイデバイスを選んだ方が良いでしょう。

ウェアの紹介ではブランド品よりノーブランドで安価なものを推してきましたが、ビレイデバイスは命に大きく関わるものであり、可動部もないため、沢に持っていっても錆びるなどの劣化の心配があまりありません。そのため、ATC(ガイド)やルベルソなどのメジャーブランドのものをおすすめします。

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フリクションコード

ここではあまり細かく説明しませんが、沢登りではフリクションヒッチでメインロープにつなぐ場面が多いです。

例えば、人数が多い場合に一本のフィックスロープで複数人が登るとき、フリクションヒッチをずらしながら確保して登っていきます。また、懸垂下降のバックアップにも使用します。

フリクションコードはスリングでも代用できますが、上記のように使用頻度が高いため、フリクション用のコードを用意しておくと良いでしょう。

私は細引きをダブルフィッシャーマンズベンドでループにしたものを使っていますが、フリクションヒッチ用としてループして縫ってあるものや摩擦に強い素材を使った既製品もありますので、そちらを選んでも良いかもしれません。

こちらはループ状に縫われています。

こちらは外皮にケブラーを含んだ素材が使われています。

テクノーラになるとだいぶ高くなりますね。

その他

ライフジャケット(フローティングベスト)

安全性を考慮した場合、水量の多い沢に行く場合は着用したほうがベターだとは思いますが、個人的には3mmウェットである程度浮力が確保していることもあり出番は少ないです。

ゴルジュ突破して帰りにウォータースライダーで降りてくる場合など、流されたり、落ちたり飛び込んだりする場合に利用します。
また、釜のある滝を登る際は、落ちたときに深く沈み込まず、その後の泳ぎも頑張らなくていいので体力の消耗が抑えられます。

「救命胴衣」として使う場合は法的な規格があり、大人の場合は浮力7.5kgが必要となりますが、沢の場合は動きやすさが優先となるので、私は子供用で浮力4.3kgのものを使っています。

肩周りがストラップになっているので、動きを妨げることがありません。補助的な浮力としては十分で、どうしてももっと浮力がほしい場合は、防水バッグに空気をパンパンに詰めたり、空のペットボトルを使ったりと工夫をして乗り切ります。

携帯浄水器

登山において、荷物の重量の中で水が占める割合はかなり大きくなります。特に夏山では多くの水を運び、次の水場を考えながら行動しなければならないのが常です。しかし、沢登りではその心配がありません。沢には豊富な水があり、重い水を持ち運ぶ必要がないというのも沢登りの魅力の一つです。

沢水は綺麗なことが多く、支流や湧き水などを選べばそのまま飲んでも問題ないことが多いです。ただし、人が多く立ち入るような沢や、登山道や山小屋が上にある沢では、水質が心配です。

携帯浄水器があれば、沢水をどこでも安心して飲むことができます。私は水をほとんど持たず、以下のフィルターを持っていきます。

以上、私が沢登りで使っている道具をメインに紹介していきました。

これらを参考にして、自分の好みにあった沢道具を見つけてみてください。


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