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ペツル「ラドライン」とファイントラック「フローティングロープ」の比較
バックカントリーや沢登りでの使用が想定されている軽量なスタティックロープとして、ペルツ(Petzl)のラドライン(Rad line)とファイントラック(Finetrack)のフローティングロープがあります。
この記事ではこれら2つのロープの違いを仕様から読み取り、個人的な見解とともに紹介していきます。
※フローティングロープは6.5mmと7mmがありますが、ここでは6.5mmを比較対象としています。
破断強度
ロープの強さ、と聞いて最も代表的なのが破断強度でしょう。それぞれ破断強度は以下のようになっています。
ラドライン:12kN
フローティングロープ:1100kg
単位や数値が違うのは、主に試験をやっているかいないかだと思います。
ラドラインはCEマークも取得しており信頼感は抜群です。ただ、いずれにしてもスタティックロープであり衝撃荷重がかかるような用途に使うことは想定されないことや、ファイントラックが十分信用に足るメーカーであることを考えると、実用上の大きな違いはないと思います。
素材
ラドライン:高弾性ポリエチレン (HMPE)、ポリエステル、ナイロン
フローティングロープ:中芯 ダイニーマ ※、外皮 ポリプロピレン
ラドラインに関しては、中芯、外皮で分けて書かれていないので詳細はわかりませんが、「高弾性ポリエチレン (HMPE) で強化された特殊な外皮」との記載があるので外皮にHMPEが使われているのは確実です。中芯は伸縮しないことや強度を考えると、こちらにもHMPEかポリエステルが含まれているのかもしれません。
※ファイントラックの仕様では「超高強力ポリエチレン」と書かれていますが、一般的には「超高分子量ポリエチレン」で、「ダイニーマ」として知られる素材です。商標上の理由で「イザナス」と言われることもあります。
これらの素材の違いにより、用途が異なります。特に影響がありそうなのは以下です。
対応デバイス
ペツルはラドラインと同社の「タイブロック」や「マイクロトラクション」などをセットにした「ラドシステム」を販売しているように、これらのデバイスと組み合わせて使えることを保証しています。
タイブロック、マイクロトラクションともに単体では対応ロープ径8mm~となっているのに6mmのロープとセット販売するのすごいですねw
タイブロックやマイクロトラクションはトゲでロープを止めるので、外皮を痛め、破れてしまうことに繋がります。
トゲがなくカム構造で止めるロープクランプもあるのですが、そういったものも含め、タイブロック、マイクロトラクション以外のロープクランプは仕様上は使用不可となっています。
懸垂下降への対応
懸垂下降に使った場合、下降器とロープとの間に摩擦が生じるので、摩擦熱による劣化が心配されるポイントです。
ラドラインに関しては中芯がナイロンであれば、ナイロンはクライミングロープに使われるように耐熱温度が高いので、外皮が痛むことはあっても中芯が痛むことはない、ということになります。
中芯がナイロンと明記されているわけではないですが、いずれにしても、仕様で懸垂下降で利用できることを謳っているので安心して使うことができます。
説明書では懸垂下降にカラビナを使った方法が示されています。これはギアを増やさないことに加え、ロープ径の観点から推奨できるビレイデバイスが自社製品にはないからかもしれません。
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一方で、ダイニーマはスリングなどでよく使われますが、融点が低いため擦れる使い方は推奨されていません。フローティングロープは一般論としては懸垂下降には向いていないと言えそうです。
ただ、沢や雪山で使った際に、摩擦熱をそこまで考える必要があるのか?というのは謎です。余談ですが、釣り糸を結ぶ際に水で濡らすと強度低下が抑えられると言われています。
重量
ラドライン: 22g/m
フローティングロープ:19g/m
1mあたり3gの違いです。10mで30g、30mで90g。
ファイントラックのゴージュバックは25mまで、ペツルのラドシステムは30mと、あまり長さを必要とする用途は想定されていないこともあり、重量の違いは大きくないと考えて良さそうです。
重量はさほど変わりませんが、フローティングロープはその名の通り水に浮きます。ラドラインはナイロンが主体と考えると、おそらく浮かないでしょう。
価格、バリエーション
スペックを比較すると、ラドラインが有利ですが、ここが大きく変わってくるところです。
ラドライン30m:33600円 (1120円/m)
フローティングロープ 200m:61600円(308円/m)
単純にメートル単価で比べても3倍以上の開きがあります。
さらに、ラドラインはラドシステム含め、30mと60mの設定しかないのに対し、フローティングロープは「ゴージュバッグ」なら15m, 20m, 25mから選べ、メートル単位での切り売りで買うこともできます。
まとめ
安全は大事ですが、やはりコスパも重要です。
性能はラドラインが勝りますが、単価が安く、切り売りで好きな長さで買えることを考えるとフローティングロープのコスパが光ります。
個人的には、ロープクランプを使わない分には問題なく、緊急時にロープクランプを使って外皮が破れても、中芯がダイニーマなのでいきなり切れるということは考えづらいので、ロープの寿命なども考えて、まずはフローティングロープを使って外皮が破れたら交換、その時はラドラインを検討する、という選び方が良いかなと思っています。
道具の選び方はアクティビティのスタイルや使う人の技量によって異なります。自己責任のもとで選択する参考にしていただければ幸いです。