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ロードバイクと仲間と①

仲間がいるから、長続きする

先日雑誌の仕事で取材したフィジカルトレーナーの中野ジェームス修一さんによれば、運動やダイエットが長続きするためには、仲間がいることが大切なのだという。
たとえば、会員制のスポーツクラブなどに入会しても、1人でトレーニングしている人は退会率が高く、仲間を作ったり、トレーナーについてトレーニングしている人は長続きする傾向があるという。

私が趣味のロードバイクにのめり込んでいったのも、やはり仲間がいるということが大きい。
夫婦で始めたから、最初から1人ではなかったのだが、身内だとどうしても甘えがあって、たとえば朝早くから遠くまで走りに行こうと計画しても、朝になればもう少し寝たい…。
今日は近場でいいかとか、今日は疲れたからやめようか、などとなりがちだ。仲間と待ち合わせをしていれば、ちょっとぐらい眠くても、疲れていても、約束したのだからエイッがんばろう!となる。
そして、走り出せばやはり来てよかった、早起きして自転車に乗るのは気持ちいい!と、モチベーションはさらに上がるのだ。

きっかけは「Rapha」女子ライド

きっかけは、サイクリングウェアブランド「Rapha」の女子ライドだった。
自転車を始めて10か月ほど経った頃だ。
当時、「Rapha」東京店では、「Braver than the elements」(「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」と訳されていた)と銘打って、冬の間、毎月お店発着の女子限定ライドを開催していた。ホームページから申し込みでき、ウエアはRaphaのものでなくてもOKという懐の深さ。ロードバイクに乗る女性の仲間ができたらいいな、と、申し込んでみた。

すてきだった。
北参道にあるショップに集まった女性たちは、シンプルなサイクルウェアに身を包み、なんだかシュッとしておしゃれだった。
正確には覚えていないが、10人ぐらいいただろうか。それぞれにお気に入りのロードバイクに跨り、街中を走る。無理のない走りやすいペース(夫と走るときはいつも私が必死で追いかけるような感じだ)、路駐の車を避けるときや、止まるときにはハンドサインを出し、決して無理な追い越しをしたり、危ない乗り方はしない。途中でだれかのチェーンが外れてしまった時には、別の誰かが手伝って直し、再出発。
公園で写真を撮ったり、途中でおいしいおまんじゅう屋さんに寄ったり。ロードバイクに乗り始めたきっかけのことや、ロードバイクで走った場所のことや、ウェアことや…。おしゃべりが弾む。

帰宅すると興奮気味に、その日のライドのことを夫に話した。
「グループライド、楽しかったよ」「ハンドサインは私たちがやってたのとちょっと違ったよ」「スピードも無理がなくて、安心して走れた」とか、いろいろと。

チームイベントに初参加

「Braver than the elements」には、そのシーズンもう一度参加し、それがきっかけで次の6月にはRaphaが主催する「Rapha Women’s Prestigeしまなみ」に女性4人でチームを組んで参加。
走行距離約150km、獲得標高約2500mアップ、少々の未舗装路ありというコースは、当時の私にとっては未知の強度だ。チームメンバーが全員一緒に、制限時間内に走るというのがルールで、無事走り切れるよう、チームのお荷物にならないようにと、普段のライドにも力が入った。

自転車の大先輩に八ヶ岳まで連れて行っていただき、チーム練習もした。
厳しい練習というよりは、仲間と一緒にワイワイと。そして、出会ったこともないような美しい自然の風景に包み込まれて、感動の連続だった。
長い上りは苦しく、ヘタクソなバイクコントロールで、未舗装路では何度も転んだけれど。

初参加のチームイベント「Rapha Women’s Prestigeしまなみ」は、結局完走できなかった。

完走はならずとも…

広島県の尾道と愛媛県の今治の間にあるしまなみ街道の島々を走るこのイベントでは、途中何度かフェリーに乗って島を渡る必要があるのだが、これを逃すと次は1時間先というフェリーに、乗り損ねたのだ。
私たちのチームは、走力以前に、計画性のなさで失敗してしまった。時間のないなか、さらに道に迷い、もうどうあがいても制限時間内に走りきれないとわかったときには、もちろん悔しさもあったけれど…。
「それなら、アイスクリームを食べてから戻ろう」と、ちょうど目の前にあったジェラート屋さんで元気を養ってから、イベントのコースを外れてブルーラインをたどり、まっすぐゴールの尾道のホテルまで戻ることにした。
瀬戸内の海に映るオレンジ色の夕日が、ゆらゆらとまぶしかった。


行動の幅がグンと広がる

ちょうどその少し前に、Raphaが世界で展開するサイクルクラブ「RCC(Rapha Cycling Club)」に夫婦で入会し、グループライドの機会はどんどん増えて行った。
最初は恐る恐る、緊張しながら参加したグループライドも、何度か参加するうちに勝手もわかり、さまざまなライドに参加したり、情報交換することができ、自転車での行動の幅がグンと広がったのだ。

ロードバイクに乗ることで、初めて出合うことのできた素晴らしい景色の数々。
夏には都内より標高の高い涼しい場所を選んで走り、秋には美しい紅葉を見に行き…。仲間がいるからこそ知ることができた、新しい道や景色、そしてその感動を共有する喜び。途中でパンクしたり、機材トラブルに遭ったり、天気が急変したり、予定通りに行かないトラブルも、仲間と一緒なら心強く、あとになって振り返れば、思い出深い出来事だ。

その瞬間にしか出合えない風景に包まれたくて

私にとって自転車に乗るいちばんの喜びは、自然の中に入っていき、自分の脚でべダルを回しながら、その日、その瞬間にしか出会えない風景の中に包み込まれることだ。
上りが続く山道は苦しいし、日が暮れる前に山道を抜けるため、必死でペダルを回すことも…。

行ってみたい場所、景色。魅力的な仲間たちと、魅力的なライドに誘われれば、迷わず参加したいし、ちゃんと最後まで走り切れるだけの、体力を維持していたい。

そのことが、チームライドに参加することを決意した当時から今に至るまで、自転車に乗るいちばんのモチベーションになっている。

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